TERJE GEWELT
薫風を感じながら、そして、片手にビア・マグでも持ちながらこのCDを聴けば、暫し、至福の時間が訪れるだろう
"INTERPLAY"
CHRISTIAN JACOB(p), TERJE GEWELT(Acoustic Bass, Fender Jazz Bass),
2002年10月 スタジオ録音 (RESONANT MUSIC : RM13-2)
CHRITIAN JACOBとTERJE GEWELTのデュオというと、2005年発売の"HOPE"(JAZZ批評 275.)を思い出すが、このアルバムとは連作ともいうべきもので、録音日時もほぼ同じ頃と思われる。このアルバムのH"SOLAR"は先の"HOPE"の中の何曲かと録音日が同じで、2002年10月13日のオスロ、MUNCH
MUSEUMでの録音である。
このデュオの特徴的なことは、美しさと清々しさに溢れており、品の良い軽妙なスウィング感も堪能できることだ。勿論、絶妙な緊密感に溢れていることは言うまでもない。
@"BLUE IN GREEN" M. DAVISとB. EVANSの競作とされている名曲。数多くのミュージシャンが取り上げてきた曲で、謂わば、バラードの典型みたいな曲だ。ピアノ・トリオでは演奏される機会も多く、今まで紹介したアルバムの中から5つ星を献上したアルバムだけでもJAZZ批評 70.、99.、148.、322.、330.等々があり、枚挙に暇がない。ここではミディアム・テンポで演奏されている。
A"VOILA VOILA" 4ビートが実に軽やかで心地よい。
B"A REMARK YOU MADE" JOE ZAWINULの書いた曲で、WEATHER REPORTの名盤、"HEAVY WEATHER"(JAZZ批評 408.)での演奏が懐かしい。思わず、戸棚から引っ張り出して聴いてみた。30年経っても古さを感じさせない演奏に暫し、うっとりと聞き惚れてしまった。遅ればせながら、次回、"HEAVY
WEATHER"を紹介しようと思う。ここでの演奏はデュオということもあって、すっきり感と清々しさのこもった演奏になっている。
C"MIDNIGHT MOOD" 「B. EVANSの」と思ったら、何と、前曲に続いて「JOE ZAWINULの」書いた曲だったとは!これは意外だった。で、この曲はEVANSの珠玉の名品"ALONE"(JAZZ批評 298.)で演奏されており、その中でもピカイチの演奏だったので、てっきり、EVANSの作品と思い込んでいた。しかし、ZAWINULも素晴らしい曲を書くものだ。
D"LITTLE EYES" JACOBのオリジナル。緊密感溢れる演奏。
E"THE FENS" GEWELTのオリジナル。エレキ・ベースで演奏。
F"MAY - BE" 同じくGEWELTのオリジナル。やっぱりね、アコースティックなベースには味わいが深い。
G"WHEN SHE CONSOLES ME" ピアニスト、JACOBのオリジナル。しっとり系の佳曲。このJACOBはピアノも上手いがコンポーザーとしての能力も並ではない。この人の実力のほどはこのアルバムで十分証明済みだが、リーダー・アルバムでMICHEL
PETRUCCIANIのトリビュート・アルバムである"CONTRADICTIONS"(JAZZ批評 360.)を聴けば更に良く分かるだろう。
H"SOLAR" M. DAVISの曲。切れがあって躍動感満載のピアノのイントロで始まる。実に心地よい4ビートだ。デュオの真髄でしょう。ドラムレスであることを忘れさせてしまう・・・。というよりも、ドラムスが必要ない・・・という感じなのだ。この曲のみ拍手が入るライヴ録音。
I"NOVEMBER" GEWELTの曲だが、この曲のイメージは如何にも「北欧の白夜」を想像させるような神秘的で静寂感のある曲だ。CARSTEN
DAHLの"MOON WATER"(JAZZ批評 246.)を思い出す。
ジャズの名曲とオリジナルを揃えて、"HOPE"に負けず劣らぬアルバムに仕上がっている。デュオという最小限のグループでありながら、濃密で心通い合う演奏はカルテットやクインテットの演奏に負けはしない。ここで演奏されている各曲に沢山のリンクを張った。リンク先のアルバムも素晴らしいアルバムばかりなので機会があれば、是非、お聴きいただきたい。
JACOBのピアノは実に達者であり淀みがない。それとベースとの緊密なコラボレーションが良い。センスが良いというか、品が良いというか・・・。嫌味のない洗練されたデュオ・アルバムである。
薫風を感じながら、そして、片手にビア・マグでも持ちながらこのCDを聴けば、暫し、至福の時間が訪れるだろう。 「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2007.04.12)