たぐい稀なタイム感覚とスローにおける躍動感が凄い!
「スローであっても、ジャズはこうありたい」
を具現化してくれた演奏
"THE BLESSING"
GONZALO RUBALCABA(p), CHARLIE HADEN(b), JACK DeJOHNETTE(ds)
1991年スタジオ録音 (SOMETHIN'ELSE TOCJ-5535)

"LIVE AT MONTREUX"(JAZZ批評 96.)から1年後の1991年の録音。ドラムスが PAUL MOTIANからJACK DeJOHNETTEに替わっている。
GONZALO RUBALCABAというと超絶テクニックを連想したくなるが、ここでのポイントはスロー・バラード。たぐい稀なタイム感覚とスローにおける躍動感を堪能して欲しい!

先ずはA"SANDINO"。HADENの手による美しいバラード。瑞々しいタッチとスローにおける躍動感が命。スロー・バラードはこうありたいというお手本のような演奏。美しさ、あるいは、甘さだけに流されない3者の躍動感が凄い。メリハリの利いた音使いと相俟って最高のスロー・バラードだと言いたい。

続いてSKYLAR-VELAZQUEZのラテンの名曲B"BESAME MUCHO"。超スローのシングルトーンで奏でるテーマがインテンポになるのに伴い、テンションが徐々に上がっていく。DeJOHNETTEのサポートが素晴らしい。続いてHADENのベースが切々とソロをとる。ここには、ムード音楽には決してなり得ないと同時に、ジャズになくてはならない躍動感がある。

この2曲だけでもこのCDの価値は充分。近頃のピアノ・トリオはスタンダードや歌モノを聴きやすく演奏して売上増大を図る向きが多い中にあって、「スローであっても、ジャズはこうありたい」を具現化してくれた演奏。

D"SIN REMEDIO, EL MAR."はRUBALCABAの超スローのオリジナル。
EはDeJOHNETTEの手による"SILVER HOLLOW"。同じく超スローの曲だが、リズムを刻むシンバリングが効果的。絶妙なコンビネーションと3者が一体となったコラボレーションが素晴らしい。フェード・アウトしてしまうのが残念だ。
G"BLUE IN GREEN"。言わずと知れたBILL EVANSの名曲。MILES DAVIS"KIND OF BLUE"(JAZZ批評 70.)の中の名演としても名高い。この名曲を瑞々しいシングル・トーンで歌い上げていく。こうした超スローの曲において間延びさせないDeJOHNETTEのドラミングも特筆に価するだろう。
IRUBALCABAが母に捧げた"MIMA"。ピアノ・ソロ。

以上、全10曲のうち6曲がスロー・バラード。その他にはJ.COLTRANEの"GIANT STEPS"やO.COLEMANのタイトル曲"THE BLESSING"等が含まれるが、ここは超スローにおける躍動感を堪能したい。

「manaの厳選PIANO & α」に加えたい1枚。  (2002.09.26)



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GONZALO RUBALCABA

独断的JAZZ批評 99.