今更ながらに思うMILESの凄さ!

JAZZの奥深さや感動をじっくりと堪能できる世紀の一大傑作だ。
"KIND OF BLUE" MILES DAVIS(tp), JULIAN "CANNONBALL" ADDERLEY(as), JOHN COLTRANE(ts), WYNTON KELLEY(p・#2のみ), BILL EVANS(p), PAUL CHAMBERS(b), JIMMY COBB(ds) 1959年録音(COLUMBIA/LEGASY CK 64935)

前回の「JAZZ批評 69.」の後、どうしても「耳直し」がしたくなってHMVに出かけた。そこでキャンペーン中の1枚として陳列されていたのがこのCD。
実に、懐かしくて、これこそ「耳直し」には持って来いだと思った。

レコードとしては何回も聴いてきたが、今またCDを聴いてみると「これは凄い」と改めて思う。1950年代後半というハード・バップ全盛の時代に、実にクールな演奏だ。いかにも、時代の最先端を歩き通したMILESらしい。チャレンジ精神と確たる自信に満ち溢れた演奏だ。当時もてはやされたジャズの中にあっては、異質とも言えるジャズである。抑制された中に秘めた熱い想い。演奏はあくまでも "COOL!" だ。

3曲目、DAVIS-EVANSのオリジナル"BLUE IN GREEN" が凄い。痺れる!MILESのミュート演奏は切ないほどに美しい!背筋がゾクゾクしてしまう。それに続く、COLTRANEのテナーもあまりにも哀しい!暫し、絶句・・・・・・・・・・

4曲目が "ALL BLUES"。 同じくMILESの切ないまでのミュートがテーマを吹く。アドリブに入ると、一転、ミュートを外しおおらかに歌い上げる。ここでは、饒舌気味のCANNONBALLのアルト・サックスも気にならない。むしろ、花を添えている感じ。その後、COLTRANE〜EVANSと続いてテーマに戻る。最後のテーマではバックアップの素晴らしいアンサンブルが聴ける!

5曲目が"FLAMENCO SKETCHES"。艶やかなCOLTRANEのテナー・サックスが伸びやかに歌い上げる。音色といいフレーズといい、もうこれはジャズの最高峰の演奏だ。
続くCANNONBALLの抑制したアドリブも心に焼きつく。

そして現代、こうした濃密な切ないほどに哀しい音楽を創造できるミュージシャンはなかなかいない。
これぞ、MILESの凄さと認識を新たにする。コンボとしての統制感、抑制されながらも秘めた熱い想い―これはJAZZという枠を跳び越えた感動の世界だ。
JAZZの奥深さや感動をじっくりと堪能できる世紀の一大傑作だ。


暫し、余韻に浸りたい。

勿論、"manaの厳選 PIANO TRIO & α" に追加しよう。           (2002.05.18)




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MILES DAVIS

独断的JAZZ批評 70.