辛島 文雄
大音量で聴きたい! 「男の中の男」のジャズ
"GREAT TIME"
辛島 文雄(p), DREW GRESS(b), JACK DeJOHNETTE(ds)
2005年9月 スタジオ録音 (VIDEOARTS MUSIC VACM-1277)
1月18日発売の出来立てホヤホヤ。
辛島文雄のデビュー30周年を飾るアルバムだという。
メンバーが凄い!果たしてどんなジャズが飛び出してくることやら?
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辛島とDeJOHNETTEは初顔合わせだという。そのDeJOHNETTEがベースに推薦したのがDREW GRESSだとライナーノーツに書いてある。この3人は初めて共演することになる。
DREW GRESSといえば、MARC COPLANDやFRED HERSCH(JAZZ批評 127.)、LUIGI MARTINALE(JAZZ批評 108.)での共演を連想するが、DeJOHNETTEと共にANTONIO FARAOのトリオでプレイしたこともあるそうだ。
このアルバム、音も良いし、バランスも良いが、願わくば、大音量で聴きたいアルバムだ。DeJOHNETTEの繊細にして豪胆なドラミングを満喫するには小音量では駄目だ。今回は相当大胆不敵でもあり、その一方で、繊細な配慮の利いたドラミングも披露している。やはり、「流石!」というべきでしょう。
強靭なピチカートのGRESSのゴリゴリベースも負けていない。DeJOHNETTEが推薦するだけのことはある。辛島のピアノはいつもながら音のタッチが綺麗で力強い。ウ〜ン、男の中の男のジャズという感じさえする。
@、A、C、D、Fが辛島のオリジナル。意欲のほどが選曲にも表れている。更に、曲のよさも付け加えておこう。「良いテーマに良いアドリブあり!」
@"LIKE BLUES FOR J.D." 辛島がDeJOHNETTEに捧げたブルース。切れの良い珠玉のフレーズに若かりし頃のCHICK
COREAの影響を感じさせる。ベース・ソロの後、12小節交換〜4小節交換を経てテーマに戻る。
A"QUIET MOMENT" 繊細なシンバル・ワークを聴き逃すまい。
B"JUST ENOUGH" HERBIE HANCOCKの曲。グリグリ、ゴリゴリの演奏でDeJOHNETTEが煽る、煽る!エンディングの3者のインタープレイが最高!イェイ!
C"THOSE YEARS WITH ELVIN" 6年間、グループの一員として演奏を共にしたELVIN JONESへのトリビュート・チューン。ここではGRESSの強いピチカート・ソロが聴ける。やはり、このベーシスト、只者ではないね。豪胆なドラミングに乗ってクライマックスを迎える。
D"BRILLIANT DARKNESS" もう、絶対、大音量で聴いて欲しいよね!この躍動感、このドライブ感を満喫して欲しい!
E"I FALL IN LOVE TOO EASILY" JULE STYNEの書いた名曲。曲名が泣かせるね。しっとりバラードからインテンポに。GRESSのベースソロも良く歌っている。強いピチカートから生まれる躍動感がなんとも言えない。
この曲には名演も多い。例えば、KEITH JARRETT"STANDARDS VOL.2"(JAZZ批評 321.)、BRAD MEHLDAU(JAZZ批評 24.)、CHRISTIAN JACOB(ボーカル入り JAZZ批評 244.)、KASPER VILLAUME(JAZZ批評 243.& 268.)。機会があれば、聴き比べてみるのも面白い。
F"STILLNESS" この繊細なシンバル・ワークを堪能するためには大音量でなければならない。
G"STRAIGHT UP AND DOWN" CHICK COREAの曲。ハード・ドライブに弾きまくるという感じ。
このアルバム、辛島のデビュー30周年を飾るに相応しい素晴らしい仕上がりになった。前作、"IT'S JUST BEGINNING"(JAZZ批評 206.)も素晴らしかったが、個性的サイドメンの強烈なバックアップがあって、それ以上のアルバムになった。DeJOHNETTE、GRESSという超一流どころを向こうに回して、辛島の面目躍如といったところだ。
何回も言うけど、このアルバムはチマチマ小さな音量で聴いていたのでは駄目だ。思いっきり大音量で楽しんでもらいたい。
北川潔(JAZZ批評 312.)といい、この辛島文雄といい、日本人プレイヤーが臆することなく世界の一流ミュージシャンと白刃を交あわすのは嬉しい限りだ。
「manaの厳選"PIANO & α"」に嬉々として追加しよう。 (2006.01.21)
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