TRIO ALLIANCE
1回ポッキリ、その瞬間をライヴで楽しんで、後には残さない・・・そういうタイプのジャズだ。
"STANDARDS STRAIGHT AHEAD"
JAN LAURENS HARTONG(p), MARIUS BEETS(b), PETER YPMA(ds)
2002年8月 スタジオ録音 (MAXANTER RECORDS CD MAX 75150)

タイトル通りのスタンダードのストレート・アヘッドな演奏
時には肩肘張らずにリラックスして聴いてみるのもいいものだ。
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というような期待感を持ちながらこのアルバムを聴いてみたのだが・・・。
ちょっと想いと違った。ストレート・アヘッドな演奏というよりも、むしろ、アレンジや仕掛けに凝っている。それこそ"STRAIGHT AHEAD"に演奏していれば、もっとよかったというのが素直な感想だ。演奏曲目もスタンダード・ナンバーとジャズの巨人の名曲がずらりと並んでいる。このトリオのオリジナルは1曲もない。制作意図からしても万人受けを狙ったものだろう。演奏時間は1曲あたり、7分から11分と長めだ。
@〜Cはスタジオ録音のようだし、D〜Gは拍手が入っているのでライヴ録音のようだ。

このトリオはリーダーが誰か判然としないが、プレイヤーとして名を馳せているのはベースのMARIUS BEETSだろう。弟のPETER BEETSとの傑作ピアノ・トリオ盤"FIRST DATE"(JAZZ批評 182.)や渋いピアニスト、REIN DE GRAAFFとの競演盤"DUETS"(JAZZ批評 189.)などを既に紹介済みだ。

@"I'LL REMEMBER APRIL" 
ベースの定型パターンに軽いタッチのピアノの絡みで始まる。ノリとしては軽い。ヨーロッパ版OSCAR PETERSONという印象もある。確かに、肩肘張らずにリラックスして聴くべき音楽。理屈を言っても始まらない。あとは、好きか嫌いか。
A"SOLAR" M. DAVISの曲。
B"WHAT IS THIS THING CALLED LOVE ?" イントロで何故か"CARAVAN"のフレーズが・・・。長いイントロの後、アップテンポで4ビートを刻んでいく。
C"YARDBIRD SUITE" 
C. PARKERの曲。

D"MY SHIP" この曲以降、演奏後に拍手が起こっているので、ここからはライヴ録音のようだ。
E"THERE IS NO GREATER LOVE" 定型パターンで始まるイントロがお好きなようだ。この曲もテーマに入るまでに2分を要している。最後に"FREEDOM JAZZ DANCE"のフレーズが挿入される。
F"LOVE YOU MADLY" D. ELLINGTONの曲。
G"ON GREEN DOLPHIN STREET" 最後に"MY SECRET LOVE"のフレーズが飛び出してきて終わる。

ある意味、サービス精神が豊富で、聞いたことのあるフレーズがあちこちに配置されていたり、凝ったアレンジが施されている。よく言えば、ユーモアに富んでいるとも言えるが・・・。
この手の音楽はライヴの方がぴったり嵌るのではないだろうか?1回ポッキリ、その瞬間をライヴで楽しんで、後には残さない・・・そういうタイプのジャズだ。
僕のように1枚のCDを出来れば擦り切れるまで(実際にはCDではアナログ盤みたいに擦り切れるということはないのだろうけど)聴き込みたいというリスナーには少々向いていないかもしれない。   (2006.01.28)



独断的JAZZ批評 319.