相続税の計算の仕組み
堀内勤志税理士事務所
武蔵野市吉祥寺本町1-32-9
吉祥寺モトハシビル306
℡ : 0422-21-8179
掲載(更新)日:平成28年3月25日
相続税の仕組み
 相続税計算の流れ
相続又は遺贈により財産を取得した者に係る課税価格(各人の課税価格)を個々に計算し、その後、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者の相続税の課税価格の合計額を計算する。
課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を控除した残額(課税遺産総額)を基に相続税の総額を計算する。
相続税の総額を各人が取得した財産の額(割合)に応じ配分し、各人の算出税額を計算する。
各人の算出税額から各種の税額控除額を控除し、各人の納付すべき税額を計算する。
相続税の課税財産
Ⅰ. 本来の相続財産
 相続税法では、被相続人に帰属していた財産のうち、金銭に見積もることができる経済的価値のあるものすべてをいい、積極財産のみを「本来の相続財産」として課税の対象としています。
 例としては、土地、家屋、借地権、株式、預貯金、現金、貴金属、宝石、言軋骨とう、自動車、電話加入権、立木、金銭債権など。
 末登記の土地建物等、被相続人名義以外の家族名義・他人名義の預貯金等であっても、実質的に被相続人に帰属する財産も当然に含まれます。例えば、専業主婦がご主人からの生活費をへそくりして貯めた現金・預貯金は相続財産になります。
Ⅱ. みなし相続財産
 みなし相続財産とは、法律的には被相続人から相続又は遺贈により取得したものではないが、実質的に、相続又は遺贈により取得した財産と同様の経済的効果を持っているものをいいます。
この場合、その利益を受けた人が相続人であるときは、相続によって取得したものとみなされ、その利益を受けた人が相続人でない場合は遺贈によって取得したものとみなされます。
なお、これは「本来の相続財産」ではなく遺産分割の協議の対象ではありませんので、遺産分割協議書には記述しません。
具体的には、
  1. 生命保険金等
  2. 退職手当金・功労金等
  3. 生命保険契約に関する権利
  4. 定期金に関する権利
  5. 保証期間付定期金に関する権利
  6. 契約に基づかない定期金に関する権利
  7. その他の利益の享受
    低額譲受、債務免除等、対価を支払わない又は著しく低い対価で経済的利益を受けた場合の利益
  8. 信託に関する権利
Ⅲ. 被相続人から相続人等が死亡前3年以内に贈与により取得した財産
 相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人の死亡前3年以内に被相続人から財産の贈与を受けている場合には、原則としてその財産の贈与された時の価額を相続財産の価額に加算します。 暦年課税の贈与財産の加算。
Ⅳ. 相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産
 被相続人から、生前、相続時精算課税の適用を受ける財産を贈与により取得した場合には、その贈与財産の価額(贈与時の価額)を相続財産の価額に加算します。 相続時精算課税の適用を受けている場合の贈与財産の価額の加算
Ⅴ. 特別にかかる財産
 次のものについては特別に課税されます。
  1. 被相続人から生前に贈与を受けて、贈与税の納税猶予の特例を受けていた農地や非上場会社の株式など
  2. 相続人がいなかった場合に、民法の定めによって相続財産法人から与えられた財産
相続税の非課税財産
 相続税では、原則として、相続や遺贈によって取得したすべての財産が課税対象となりますが、資産の中には、その財産の性質・社会政策的見地等から課税対象から除外しています。これを「非課税財産」といいます。
種類としては、
  1. 皇室経済法第7条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物
  2. 墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの
  3. 一定の公益事業を行う者が取得した公益事業用財産
  4. 条例による心身障害者共済制度に基づく給付合の受給権
  5. 相続人が取得した生命保険金等のうち一定の金額
  6. 相続人が取得した退職手当金等のうち一定の金額
  7. 相続財産などを申告期限までに国、地方公共団体、特定の公益法人又は認定特定非営利活動法人に贈与(寄附)したその財産
  8. 相続財産である金銭を申告期限までに特定公益信託に支出した場合におけるその金銭
    なお、香典は、被相続人に帰属しないため相続税の課税対象とはなりませんし、弔慰金・葬祭料も通常は相続税の課税対象にはなりません。
相続税の課税価格
各人の課税価格は次のように計算します。
各人の課税価格=取得した「本来の相続財産」+相続等により取得したとみなされる「みなし財産」-債務及び葬式費用+相続開始前3年以内の暦年課税の贈与財産+相続時精算課税の適用を受ける贈与財産
この各人の課税価格を合計したものを「課税価格の合計額」といい、これから基礎控除額を控除した課税遺産総額により相続税を算出することになります。
財産の評価
被相続人の死亡した日の「時価」になります。
ただし贈与財産については、贈与時の「時価」です。
時価とは、「課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」とされています。
相続税法では、地上権及び永小作権、定期金に関する権利、及び立木の評価方法以外は評価方法を定めていませんので、 実務上は「財産評価基本通達」に基づいて評価することになります。
 参 考
Copyright ©堀内勤志税理士事務所 All Rights Reserved