ナ行の花 解説   ※牧野新日本植物図鑑より引用

ア行 カ行 サ行 タ行 ハ行 マ行 ヤ行 ラ行 ワ行

【ナ の 花】


ナガバノスミレサイシン

ナガバノスミレサイシン すみれ科
山地の樹林下にはえる多年草で根は長く、根茎は太く、節があって横に延びる
葉:普通、長い葉柄のある小葉の根葉が束生し、葉身は長三角状卵形で先が尖り、基部は心臓形、へりは鈍鋸歯があり、全体に毛がほとんどなく、質はやや柔らかである.托葉はほとんど離生し、卵状皮針形で先が尖り、株もとに鱗片状に着くのはスミレサイシンやアケボノスミレと同じである
花:春に葉の高さとほとんど同じの少数の長い花柄を出し、その先にかなり大きい左右相称の淡紫花を横向きに開く.花弁には紫のすじがあるが、唇弁のものは特に著しい.距は短大な袋状で左右から押しつぶれている.側弁に毛はない.花柱の先は倒三角状で柱頭部は鋭く前方へ尖っている
箱根(210402)


ナギナタコウジュ

ナギナタコウジュ しそ科
山地や道端に多く見られる一年草
茎:四角で分枝し、まばらに軟毛があり、全体に強い香がある
葉:対生し、長卵形で先は尖り、ふちには鋸歯があり、両面にまばらに毛がある
花:秋、枝先に太い花穂をだし、淡紫色の小形の唇弁花を一方向きに密生する.花の下に着く包葉は扁円形でがくより少し長く、萼は5裂し裂片の先は尖り、毛がある.花冠は4裂し唇形で毛がある.葉と花穂を陰干ししたものは漢方に用いられる
稲取細野高原(211021)


ナツトウダイ

ナツトウダイ とうだいぐさ科
山地に生える多年生草本、30cm
茎:細長い円柱形で直立し、滑らかで無毛、緑色で帯紅紫
葉:互生、無柄、細長い楕円形または倒皮針形、先端は丸く基部は細い、茎先に4輪生、傘型に分枝
花:4〜5月、小花序は一つの花に見える、小総包癒着して壺状赤褐色、1本の雌蕊からなる雌花、1本の雄蕊からなる雄花数個が入る、小総包の腺体は紅紫色三日月形
茅ヶ岳(180528)


ナナカマド

ナナカマド ばら科
山地に自生する落葉高木、樹皮は灰色をおびた暗褐色、表面はザラザラ
枝:濃紫紅色、全体に無毛
葉:互生、奇数羽状複葉、小葉は5または7対、長楕円形、鋭尖頭、基部円形あるいはくさび状鈍形、無柄、単鋸歯または重鋸歯、上面緑色、下面淡色無毛
花:7月、白色小形、枝端に多数集まり複散房花序、花弁5、平円形、内面毛、雄蕊20本、花柱3〜4本、基部に軟毛が密生
涸沢(170818)


ナルコユリ

ナルコユリ ゆり科
山中または原野に生える多年生草本
茎:1年ごとに1茎を出す、少し傾く、無稜円柱状
葉:互生2列、皮針形から卵状皮針形、楕円形、変化多い、先端鋭尖形、基部は短柄または無柄
花:初夏、葉腋から花柄、3〜5分枝、各1個の緑白色花を下垂、2cm長、6花被は筒状、先端は分かれて緑色、雄蕊6本は花被筒の中、球状液果は暗緑色
箱根(170618)


ナワシロイチゴ(サツキイチゴ)

ナワシロイチゴ ばら科
いたるところの原野にはえるほふく性の落葉小低木.茎は長さ1,4mくらいになり、直立茎は30cmくらい.ほとんど無毛であるが、小さな刺を持つ
葉:互生、3出または5小葉の羽状複葉、小葉はひし形状倒卵形、円頭、基部はくさび形または切形、縁に切れ込み状の荒い歯牙があり、時には2裂または3裂.表面は無毛で緑色、裏面は白色のもうせん状に毛を密生し、長さ幅とも2〜5cm、托葉は線状皮針形、全縁
花:夏、まばらな集散花序を作って枝の上部に腋生または頂生する.がく裂片は卵状皮針形、鋭尖頭.表裏両面に乳頭毛が密生し、裏面の基部に小さい刺.花弁5個は寄り添って立ち淡紅紫色、倒卵状へら形、萼片より短い
箱根(170618)


ナンテンハギ(タニワタシ、フタバハギ)

ナンテンハギ まめ科
山麓地帯あるいは原野にはえる多年生草本.根は丈夫
茎:束生して直立あるいは斜上して30〜60cm
葉:互生して短葉柄、1対の斜に開出下小葉をつける.巻きひげはない.小葉は長楕円形あるいは広皮針形、革質または洋紙質で緑色、3〜7cm.先端は鋭尖形、基部は鋭形でごく短い柄.縁は全縁で毛がある.托葉は緑色腎臓形、1側方は鋭尖形の、他方は尖った荒い鋸歯
花:夏から秋にかけて、葉腋から花軸を出し、上部に短い2〜4cmの総状花序をつけ、小柄を持った紅紫色の蝶形花を開く.花は12mmくらい.がくは短筒形、先端の5裂片は線形、旗弁は倒卵形
三ツ峠(170903)


ナンバンギセル(オモイグサ)

ナンバンギセル はまうつぼ科
草地にはえる一年生の寄生植物で、ススキ、ミョウガ、サトウキビなどの根に寄生する
茎:ごく短くほとんど地上に出ず、赤褐色で数枚の鱗片状の葉が互生する
花:秋、葉の脇から長い花柄を直立し、頂に淡紫色の大型花を開く.萼は赤褐色の舟形で一方が深く裂け、先端が尖り淡紫色の条がある.花冠は筒状でヘリは浅く5裂して唇形となる.花冠に癒着して2本づつ長さの異なる4本の雄蕊がある
稲取細野高原(211021)


【ニ の 花】


ニオイタチツボスミレ

ニオイタチツボスミレ すみれ科
山や丘の陽当りの良い草地を好む有茎性の多年草
茎:長柄の根葉と共に束生または単生し、直立して普通短細毛を密生
葉:花期の葉は小さく質が軟弱で心臓状卵円形、先は丸くなって尖らず、ヘリも鈍鋸歯が並ぶ
花:春まだ茎が伸びない頃、束生する葉むらの間から花柄を高く出し、先に微かな香のある左右相称の紅紫花を横向きに開くが、しばし下向きかげんの時もある.花弁は広卵形で紫の筋が多く、基部1/3ほどは白く抜けていて他首都の区別になる.また5枚の花弁が集まっている.唇弁の距も白く、やや上向きかげんである
幕山(220423)


ニガナ

ニガナ きく科
明るい草地、高山帯から暖温帯低地、変異に富み多数の変種・亜種が多い
葉:根出葉は2〜4枚、粗い鋸歯、羽状に切れこむ
花:舌状花は5個内外、花冠黄色、まれに白色、冠毛は汚白色50本内外
箱根(170618)


ニシキウツギ

ニシキウツギ すいかずら科
山地にはえる落葉低木、高さ2〜3mになる.若枝は無毛か2列の毛の線がある
葉:対生し、葉身は長卵形、楕円形または倒卵形、両端鋭く尖り鋸歯がある.上面はやや無毛、下面の主脈の下半分には密生した毛がある
花:5〜6月頃葉腋から2〜3個の花を散房状に開く.花冠は5裂する漏斗状、ほとんど無毛かまったく無毛.筒部は基部へ次第に細まり、初めは白色、後に暗紅色となる.花中に5本の雄蕊と1本の雌蕊、花柱は花外へ伸びる.子房は下位で細長く、その先に5片の広線形の萼片がつく.種子には翼がある
※三色ウツギに対する二色ウツギで、初め白色でのちに赤変するから.錦ウツギではない
金時山(190607)


ニシキゴロモ(キンモンソウ)

ニシキゴロモ しそ科
山地に生える小形の多年草.茎は1本または数本直立し、少し縮れた毛がある
葉:対生し3〜4対あり、柄を持ち、長倒卵形で、あらく鈍頭の鋸歯がある.表面は普通脈に沿って紫色になり、裏面は紫色をおびる
花:初夏の頃、上部の葉の付け根から淡紅白色の小さな花を数個付ける.萼は5裂し毛がある.花冠筒部は細長く、上唇と下唇に分かれ、上唇は2深裂し、下唇は大形で3深裂し、中央の裂片は他の2片より大きい.雄蕊は4本でうち2本は長い
※錦衣は葉が美しいのでいう
大沢山(160514)


ニッコウキスゲ(正式名:ゼンテイカ)

ニッコウキスゲ ゆり科
山地にはえる多年生草本で、草原に群生することがよくある.高さ50cm内外で概形はカンゾウより小さい 葉:2列に扇形に出て、鮮緑色、幅1,5cmで上半部は湾曲して垂れている
花:7月頃葉心から花径を1本出し、先に短い枝を付け、互いに接して3〜4の花を付け下から順に開く.花色は濃い橙黄色で、昼間だけ開き、漏斗状の鐘形で径7cmくらい.花被片6個、ほとんど同形の倒卵状皮針形で上部はわずかに反り返る.雄蕊6個は花被より短く、花柱は雄蕊より長い
八方尾根(190724)


ニョイスミレ(ツボスミレ)

ニョイスミレ すみれ科
有茎性の多年草で、原野や人家附近の湿気のある土地に多い
茎:緑色軟質で根元から多数出て斜に立つ
葉:互生し、茎の下方の葉は長柄があるが上の葉は短柄.腎臓状卵形で低鋸歯がある.托葉は皮針形でほとんど全縁かまばらな鋸歯があって緑色
花:春から初夏にかけて長い花柄のある小白花を葉腋から出す.花茎は1cm内外で上弁はそり返り、唇弁には紫色のすじが多く、距は丸く短い.側弁、ときに上弁にさえ内側に突起物毛があるが全くない場合もある.花柱の先端はカマキリの頭型にふくらみ毛はない
南郷山(210407)


ニリンソウ

ニリンソウ きんぽうげ科
山地や山すその林下に生える多年生草本、群がって繁殖、真夏と秋冬は茎葉が枯れる
葉:根生葉は少数が叢生長柄、心臓状円形3深裂、中央裂片3尖裂、両側2尖裂、鈍頭の欠刻状歯牙縁、葉面に淡白色斑、基部くさび形、総包葉3個で茎の先、無柄3裂、歯牙縁
花:4〜5月、総包葉の中心から1〜3本の長花柄、白花、萼片は花弁状、広卵形、外側毛、花弁なし、雄蕊多数黄色、雌蕊多数
幕山(210407)


【ヌ の 花】


ヌスビトハギ

ヌスビトハギ まめ科
林下に多く生える多年性草本
茎:直立、または斜上、上部で分枝
葉:互生、長葉柄、3出複葉、小葉は卵形、長卵形あるいは卵形ひし形、先端鋭尖形、基部は円形または鈍形、短柄、頂小葉が最大
花:葉腋から長花軸、総状花序、淡紅色、白色の小形蝶型花をまばらにつける
箱根(150816)


【ネ の 花】


ネコノメソウ

ネコノメソウ ゆきのした科
各地の山中やふもとの湿った地にはえる多年生草本で、全体は薄緑色
茎:横に伏し節から根を下ろす
葉:対生、葉柄があり、卵形で鈍鋸歯がある.花に近い葉は特に黄色をおびる
花:3〜4月頃、茎頂に薄黄色の小花が集まってつく.がく片4個、やや四角で先端は円く、直立し内側はくぼむ.花弁は無い.雄蕊4本、がく片と対生し、それより短く、葯は黄色.花柱はごく短い
大山南尾根(210328)


ネバリノギラン

ネバリノギラン ゆり科
高山にはえる多年生草本
葉:根生葉はロゼット状に平開し、細長く皮針形で先は尖り、黄緑色で茎より短い
花:8月頃、葉間から20〜30cmの直立した茎を出し、少しの小形葉を互生し、茎の上部には多くの緑がかった黄色の花が細長い穂状につく.どの花も無柄に近い.花被片6、花糸は短く花筒の上部につく
八方尾根(190724)


【ノ の 花】


ノアザミ

ノアザミ きく科
山野に最も普通な多年生草本、茎高さ60〜100cm、ときに2m、上部で分枝
根葉:花時も生存、著しいロゼットではない、倒卵状長楕円形、羽状中裂、裂片5〜6対、縁に刺多い、上面に多細胞の毛、下面脈上に毛
中葉:互生、基部は茎を抱く
花:初夏、枝頂に紅紫色の管状花からなる頭花が直立、花冠はまれに白色紅色などの異品あり、総包やや球形、幅2mm内外、多少クモの糸状毛、総包片は直立して先鋭、刺針、背面に隆起した粘着部がある
箱根(180617)


ノイバラ(ノバラ)

ノイバラ ばら科
原野、河岸等にはえる落葉性小形低木.枝には鋭いとげが多い
葉:互生し1〜4対の小葉を持った奇数羽状複葉、小葉は楕円形または広卵形、先端は鋭形、基部は鈍形または鋭形、無柄、ふちには鋸歯がある.上面は無毛で光沢が無く、下面に細毛を生ずる.托葉は皮針形で鋭く切れ込み、軟毛があって下半分は葉柄に沿着する
花:初夏、枝先に円錐花序を作り密集して開き、花径2pくらいの白色または淡紅色を帯び、芳香を放つ.花柄は無毛、または少数の腺毛を生ずる.萼筒はなめらか、がく片は皮針形でちぢれた毛を密生し、反り返る.花弁は5、水平に開き、心臓形または広い倒卵形、頭部は凹む.雄蕊は黄色で多数
箱根(220526)


ノギラン(キツネノオ)

ノギラン ゆり科
山野の多少日当たりの良いところに生える多年生草本
茎:根茎は短、強固で直立
葉:根生10個内外、ロゼット状、倒皮針形の広線形から倒卵状皮針形まで種々の変化、先尖、つやがあり黄緑色
花:7〜8月頃、葉心から1本の茎25〜40cm、頂部に穂のような総状花序、淡黄赤花、短柄の基に長短2枚の包葉、花被6片漏斗形、線状皮針形尖、縁白色、雄蕊6個
三ツ峠(170709)


ノコンギク

ノコンギク きく科
山野に多い多年草、変化多い
茎:直立、やせ長、縦に線、ざらつき、分枝
葉:多数茎に互生、広皮針形または長楕円形、あらい鋸歯、ざらついて両面に毛、下部3脈明瞭
花:晩夏から秋、多数の頭花を散房状、紫色舌状花冠、管状花は黄色、緑色の総包片の上部は暗紅紫色
※ヨメナとの違いは、そう果に4〜6mmの長冠毛
三ツ峠(170903)


ノジスミレ

ノジスミレ すみれ科
道端や田畑のなど人家の近くで粘土地に多く見られる無茎性多年生草本、全体に白色短毛が密
根:深く、白色で数本に分かれる
葉:束生して斜に立つ、葉身は長楕円形または線状広皮針形、葉柄と合わせて5cm、先端鈍、基部は切形かわずかに心臓形、縁に低鋸歯、質やや厚く、青緑色
花:3〜4月頃、スミレより先に開花、花柄10cm、線形包葉2枚、スミレよりやや小形、淡青紫色、横向き、がく緑色先尖、附属体ほぼ四角、側弁無毛、唇弁の距は無毛5〜6mm
※スミレとの見分け:側弁内無毛、花色は青に近寄った紫
真鶴(170409)


ノハラアザミ

ノハラアザミ きく科
乾いた草地に生える多年草
茎:1m内外、花径状分枝、基部太い
葉:根葉は長楕円状披針形8〜12対、裂片に欠刻、鋭い刺毛、帯紫色、茎葉は小形まばらに互生、裂片不整に歯状裂、端に刺毛、無柄、基部は茎を抱く
花:晩夏から秋、茎上部で分枝、紫紅色の頭花、短柄、2〜3個集まり直立、総包は鐘球形、くもの糸状の毛、粘着しない
箱根(210901)


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