〜過労死〜「脳血管疾患及び虚血性疾患等の認定基準」
1 基本的な考え方
脳血管疾患及び虚血性疾患については、その発症の基礎となる動脈硬化、動脈瘤などの血管病変等が加齢、食生活、生活環境などの要因・遺伝により形成・進行・悪化して発症するものとされます。
しかしながら、仕事が特に過重であった場合にも血管病変等が著しく悪化・進行して発症する場合もあり、この場合、仕事との因果関係が認められる場合は、労災補償の対象となる場合があります。
この点、影響を及ぼす業務による過重負荷として、
@長期間による疲労の蓄積、
A近接した時期による負荷
も考慮されることになります。
2
対象疾病
・脳血管疾患=脳内出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症
・虚血性心疾患=心筋梗塞、狭心症、心停止(不整脈による突然死含む)、解離性大動脈瘤
3
業務上疾病の認定要件
業務上疾病とは=「業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患」であること。つまり、発症の有力な原因が仕事によるものであることが必要となります。
◇認定要件として
@異常な出来事
A短期間の加重業務
B長期間の加重業務 があります。
●心理的負荷による精神障害に係る業務上外の判断指針
「心理的負荷による精神障害に係る業務上外の判断指針」 (平成11年9月14日基発544号)
いわゆる仕事上のストレスが原因で精神障害を発症した、または自殺したという労災請求事案が業務に起因するものかどうかを判断する指針 平成21年4月に一部改正あり。
A 業務による心理的負荷の強度を評価する
B 業務以外の心理的負荷の強度を評価する
C 個体側要因を検討する
A 業務による心理的負荷とは・・・事故や災害の体験 仕事の失敗 過重な責任の発生 仕事の質的量的変化 など
B 業務による心理的負荷とは・・・自分の出来事 家族・親族の出来事 金銭関係 など
C 個体側要因とは・・・既往歴 生活史 アルコール依存等状況 性格性向
●精神障害の発症の原因を判断するには、上記のA、 B、 C のいずれが有力な原因となって発症したのか総合判断します。
1 業務上とする基本的な考え方
次の@〜Bのすべての要件を満たす必要があります。
@判断指針で対象とする精神障害を発症していること
うつ病、ストレス関連障害等・・
A発症前6か月の間に 発症させる原因となる強い心理的負荷が業務にあること
B業務以外の心理的負荷、個体側要因により発症したと認められないこと
●自殺についての判断
ア 精神障害を発症している人が自殺した場合=鬱病など精神障害に罹患していると「希死念慮」(自殺を望むこと)という状態が出やすいと医学的に認められます。よって、業務による心理的負荷精神障害を発症した人と認められた人が自殺をはかった場合は、「行為選択能力が著しく阻害され、または、自殺を思いとどまる精神な抑制力が著しく阻害されている状態」にあると推定され業務上と認定されます。
イ 精神障害を発症していない人が自殺を図った場合は、故意の自殺とされ、労災とは認められません。
●最近の過労死判決の動向・・過労死労災認定〜最近の判例〜
過労死をめぐる裁判で遺族側勝訴の判決が相次いでいるようです。
・「ノキア・ジャパン 大阪地裁判決 23年10月」
通信会社や工事協力会社の関係者を頻繁に接待していた事務所長が死亡した事案について、国に対して労災保険の請求を認めるよう求めた裁判判決。
接待をしていた時間が労働時間に含まれるがどうかが争点となっていたが、判決は、接待が個別の問題点を具体的に議論する場であったと認め、発症前1〜6か月間の時間外労働を約63〜81時間と認定し監督署の労災保険不支給処分を取り消した。
・「日本海庄や 大阪高裁判決 判決」
同社で働く男性が過労による急性心不全で死亡。遺族が運営会社と社長ら取締役に損害賠償を求めた裁判で大阪高裁は、23年5月、会社と経営者に連帯して慰謝料の支払を命じた京都地裁判決を支持し、会社側の控訴を棄却。取締役の善管注意義務違反と判示した。