独断的JAZZ批評 767.

HIROSHI MURAYAMA
多少センチメンタルな印象がある
その分、哀愁と慈しみを感じるのだが・・・
"FIRST DRAGON"
村山 浩(p), 安ヵ川 大樹(b), PHILIPPE SOIRAT(ds)
2009年12月 スタジオ録音 (INTEGRAL JAZZ : INT 221.249)

村山浩トリオと言えば、D-MUSICAから発売になった2008年録音の"BALLAD OF LYRICS"(JAZZ批評 622.)が絶品で、このアルバムが2枚目になる。メンバーも同じで、録音時期もほぼ1年後の録音だ。
D-MUSICAレーベルはベーシスト・安ヵ川大樹が主宰となって将来性豊かな若手プレイヤーにスポットライトを当て、レコーディングの機会を与えている。その志は高い。
僕もD-MUSICAレーベルで初めて知ったミュージシャンが沢山いる。この村山浩もその一人。高田ひろ子やGRACE MAHYA、佐藤浩一、山田拓児などもそうだ。いずれも素晴らしいCDを出しているので機会があったら、是非、聴いてみてほしい。
前置きが長くなってしまったが、このCDは8月に開催されたすみだストリート・ジャズ・フェスティバルのD-MUSICAのテントで購入した。日本発売は未だのようだが、そろそろ発売になるだろう。ただ、このCDがD-MUSICAから発売されるかはクエスチョンだ。フランスからの輸入になるらしい。


@"FIRST DRAGON" このアルバム・ジャケットのドラゴンの絵は村山自身が描いたものらしい。ピアノも上手いが、絵も上手い。
A"METAMORPHOSE" 
T. MONKが書きそうな、ちょっとひょうきんでユーモアのあるテーマ。アドリブも音数少なめで何やらMONK的だ。そういえば、何の曲名か思い出せないが、アドリブではMONKの曲のフレーズが挟み込んである。緊密感と一体感に溢れていて、全員が良く歌っている。これは楽しい!
B"DETERMINATION" 
先ず、テーマがいい。そのテーマの後に安ヵ川のベース・ソロ。いつ聴いても安ヵ川のベースは良く歌うし、強いビートで唸らせてくれる。その後、ミディアム・テンポの4ビートを刻むがグイグイ前に突き進むドライヴ感が心地よい。盤石なサポートに乗って村山のピアノが気持ちよさそう。
C"JEUX D'HIPPOCAMPES" 
美しくて哀愁のこもったワルツ。
D"LENNIE BIRD" 
白人ピアニストのLENNIE TRISTANOの書いた曲。テーマがアップ・テンポで妙に小忙しいのだけど、アドリブに入ると、却って落ち着く。適度な「間」があり、よくスイングしている。小気味よく踊るSOIRATのドラム・ソロもいいね。
E"FOR THE MAN" 
"THE MAN"とはこのアルバムを捧げられた人のことだろうか?哀しみと慈しみを湛えたバラードのように聴こえる。村山のとても強い「想い」を感じる。
F"ARE WE ALONE?" 
これも美しい曲。後半に配置されている安ヵ川のベース・ソロとSOIRATのブラシによるソロがいいね。
G"AUTUMN LEAVES"
 ピアノのイントロから入り、テーマをストレートに奏でる。小細工なしの直球勝負がいいね。こういうあまりにも有名なスタンダード・ナンバーは得てして小細工をしたくなるものだ。まあ、名演と言われる演奏が数多くあると腰が引けてしまうのだろう。その点、こういうストレートな演奏は外連味がなくて好感が持てる。グイグイと前に進むドライブ感といい、3者の緊密感、躍動感も申し分ない。8小節交換、4小節交換を経てテーマに戻る。

このアルバム・ジャケットには"This album is dedicated to Tamotsu Murayama(1931.7.9〜2012.4.25)"とある。これはどなたに捧げた1枚なのだろうか?
第1弾に比べるとこのアルバムは多少センチメンタルな印象がある。その分、哀愁と慈しみを感じるのだが・・・。全8曲中、DとG以外の6曲が村山のオリジナル。
先に紹介した"BALLAD OF LYRICS"も併せて聴いてもらいたいアルバムだ。
村山浩は2005年から活動の拠点をパリにおいているので、日本で生を聴ける機会が少ないのが残念だ。是非とも、日本ツアーをやってほしいと願うのは僕だけではないだろう。
一足先にゲットできた幸せに感謝しながら、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2012.08.23)

試聴サイト: 
http://www.myspace.com/hiroshimurayama (但し、"BALLAD OF LYRICS")

参考までに今までに掲載したD-MUSICA発売のCDレビューのリンクを書いておこうと思う。
是非、聴いてほしいアルバムばかりだ。
そして、そのアルバム制作の志の高さに共鳴してほしいと思うのだ。

・安ヵ川大樹 "TRIOS"(JAZZ批評 650.) "VOYAGE"(JAZZ批評 699.) 
・高田ひろ子 "FOR A NEW DAY"(JAZZ批評 707.) "INNER VOICES"(711.
・村山浩 "BALLAD OF LYRICS"(JAZZ批評 622.) 
・西山瞳 "EL CANT DELS OCELLS"(JAZZ批評 749.
・山田拓児 "LITE BLUE"(JAZZ批評 738.
・GRACE MAHYA "POINCIANA"(JAZZ批評 735.) 
・BUNGALOW "METROPOLITAN OASIS"(JAZZ批評 736.)  
・堀秀彰 "IN MY WORDS"(JAZZ批評 632.
・SCENE OF JAZZ "NIGHT AND DAY"(JAZZ批評 671.

以上の11枚。すでに22枚のアルバムが発売になっているので、丁度、半分聴いたことになる。




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