独断的JAZZ批評 736.

BUNGALOW
洗練されていてクール
これがこのグループの個性だといわれればそれまでなのだけど・・・
"METROPOLITAN OASIS"
山本 昌広(as, ss), 佐藤 浩一(p), 池尻 洋史(b), 大村 亘(ds)
2011年2月 スタジオ録音 (D-MUSICA : DMCD 17)


日本人の若手ミュージシャンの発掘を目指すD-MUSICAの第17弾。ベーシスト・安ヵ川大樹が主宰するD-MUSICAであるが、今までにも数多くの傑作アルバムをリリースしている。
安ヵ川自身がリーダーを務める"TRIOS"(JAZZ批評 650.)やソロ・アルバム"VOYAGE"(JAZZ批評 699.)、高田ひろ子の"FOR A NEW DAY"(JAZZ批評 707.)、"INNER VOICES"(JAZZ批評 711.)、村山浩の"BALLAD OF LYRICS"(JAZZ批評 622.)なんていうのもそうした1枚。
今回のアルバムは期待の若手にスポットを当てたアルバム。4人が皆、30歳前後だ。

@"METROPOLITAN OASIS" 4人の競作による静謐なインプロビゼーション。
A"BETWEEN" 
ゆったりとした曲。最初から最後まで静かな演奏で通す。やはりどこかで盛り上がりの欲しいところだ。
B"UNDERPASS" 
中近東の匂いのする曲だが、なかなか熱くならない。
C"MARCH TO LAYLA" 
これもアブストラクト的色彩のインプロ。1分46秒と短いので助かった。
D"HUMAN LOST" 
「人間失格」からインスパイヤーされて書いたという佐藤のオリジナル。破滅への道を進むがごとくアブストラクトな演奏で終わる。
E"LITTLE TRIP" 
山本のオリジナル。ミディアム・テンポのメランコリーな曲想で佐藤のピアノがいいね。実力の片鱗を見せてくれる。
F"BATRISTURGISISM" 
コンポーザーの佐藤が自ら実験的アプローチと述べているが、まさにそういう演奏。テンポはコロコロ変わるし、テーマも難しい。若手が4人も集まるとついついこういう実験的なことをやりたくなるのだろうが、聴くほうにはクエスチョンマークが???くらい点いてしまう。
G"O.P.PM." 
山本はソプラノ・サックスを持っている。難しいテーマ。ちょっと、ついていけない。ややもすると自己満足だけで終わってしまう。何しろ、タイトルは「矛盾だらけの人間の道徳観」の略だというらしい。
H"SUZUMUSHI'S CONFESSION" これもソプラノ。山本のソプラノがフィーチャーされている。他の3人は脇役に徹している。
I"NORTH HEAD" 
このアルバムの中では唯一アップテンポの4ビートを刻んで進むモーダルな演奏だ。
J"RETURN"
 一番聴きやすいボサノバ調のテーマ。メランコリーな雰囲気で最後まで。

「バンガロー」のネーミングは、「皆が気軽に行ける心地よい場所」、「アコースティックな音」を表す名にしようということで付けられたらしい。とは言うもの、流れ出てくる音楽はクールでアブストラクト的要素も含まれていて、そんなに気軽には聴けない。若いから汗が迸るような演奏を期待していると裏切られる。全曲、オリジナルというのもどうかな?2つ、3つはスタンダード・ナンバーを入れても良かった。
ピアノの佐藤浩一は期待の若手ピアニスト。昨年、僕はライヴで3回ほど聴いたけどやはりいいものを持っていると思うが、このアルバムではその良さが発揮できていない。このグループでは特にリーダーを設けていないという。
洗練されていてクールではあるけど、熱っぽさとドライブ感がない。これがこのグループの個性だといわれればそれまでなのだけど・・・。   (2012.01.09)

試聴サイト : http://www.d-musica.co.jp/release/17.html



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