独断的JAZZ批評 768.

ALAN BARNES / DAVID NEWTON
一粒で3度美味しい
"INSIDE OUT"
ALAN BERNES(as, bs, cl), DAVID NEWTON(p)
2011年2月 スタジオ録音 (WOODVILLE RECORDS : WVCD136)


ALAN BERNESはイギリスのマルチ・リード奏者で、このアルバムでも、クラリネット、アルト・サックス、バリトン・サックスの3種類を吹分けている。各曲名の後に演奏されているリード楽器名を記しておいた。クラリネットが5曲、アルト・サックスも5曲、バリトン・サックスが3曲という配分になっている。
一方のDAVID NEWTONもイギリスを代表するピアニストである。
選曲は二人のオリジナルがなくて、スタンダード・ナンバーとジャズの巨人のカバー曲で成り立っている。

@"DREAM DANCING" (as)COLE PORTERの書いた曲。この人のメロディ・センスは抜群だからね。カラッと明るく爽やか。二人のコンビネーションも申し分ない。
A"GEE BABY, AIN'T I GOOD TO YOU?" (cl)クラリネットの音色がより一層ノスタルジックな雰囲気を醸し出している。よかかりし時代のジャズっていう感じだ。
B"WINDOWS" (as)新しいところでCHICK COREAの楽曲だ。この曲もスタンダード化してきたかな。明るく楽しげな二人の会話がいいね。
C"I'LL CLOSE MY EYES" (bs)バリトン・サックスをバリバリ吹きまくるのに釣られて、ピアノがベース・ラインを躍動感豊かに刻んでいく。指でも鳴らして聴いてほしいね。
D"INSIDE OUT" (cl)バリトンの後にクラリネット。当然のことだけど、雰囲気がガラッと変わる。明るい郷愁みたいなものを感じる。
E"LOTUS BLOSSOM" (bs)BILLY STRAYHORNの有名曲。今度のバリトンはしみじみとスロー・バラードだ。
F"DROP ME OFF IN HARLEM" (as)BILLY STRAYHORNの後とくれば、やはり、DUKE ELLINGTONときた。跳ねるように、踊るように奏でるアルト・サックスが心地よい。二人の息もぴったりだ。
G"IF I HAD YOU" (cl)「アメリカのシューベルト」とまで言われたIRVIN BERLINの書いた曲。曲とクラリネットのマッチングが素晴らしい。
H"SEGMENT" (as)今度はC. PARKERの曲。ピアノがベース・ラインを奏で、アップテンポでグイグイ進むドライヴ感が気持ち良い。
I"TRISTE" (cl)A. C. JOBIMの曲。ボサノバ・タッチのこの曲にクラリネットが映えている。
J"YOU'VE CHANGED" (as)
K"VARY EARLY" (cl)BILL EVANSの曲。
L"LAMENT" (bs)トロンボーン奏者のJ. J. JOHNSONの書いた佳曲。

面白いもので、クラリネットの演奏になった途端にノスタルジアの度合いがグーンと増すのだ。最近はジャズでもクラリネットを吹くプレイヤーが増えてきた。将来性が嘱望されているJORIS ROELOFS(JAZZ批評 523.)や日本で最近話題の若手、土井徳浩などもそういうプレイヤーだ。
このALAN BERNESはさらにアルト・サックスとバリトン・サックスを吹分けていてアルバムに彩りを添えている。まさに「一粒で3度美味しい」ということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。食後のリラックスタイムに肩肘張らずにアルコールでも嗜みながら楽しんでもらえば、それが最高の聴き方だろう。   (2012.08.29)

試聴サイト : http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=8632579



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