SCENE OF JAZZ
耳に心地よいが、毒とか灰汁がない分刺激も少ない
2〜3回繰り返して聴くともうお腹いっぱいという感じになってしまう
"NIGHT AND DAY"
石井 彰(p), 安ヵ川 大樹(b), 大坂 昌彦(ds)
2010年9月 スタジオ録音 (D-MUSICA : DMCD 11)


このアルバムはD-musicaレーベルの第11弾だという。今までにこのレーベルのCDを3枚紹介している。1枚目が村上浩の"BALLAD OF LYRICS"(JAZZ批評 622.)でこれは躍動感溢れる良いアルバムだった。2枚目が堀秀彰の"IN MY WORDS"(JAZZ批評 632.)で、これは辛口評価だった。3枚目が主宰者でもある安ヵ川自身のリーダー・アルバムでもある"TRIOS"(JAZZ批評 650.)で、安ヵ川のアルコに唸ってしまった。
このアルバムのピアノは石井彰だ。かつて石井のアルバム"VOICES IN THE NIGHT"(JAZZ批評 89.)も紹介しているが、内省的な演奏が多かった。
このアルバムは朝から夜中までの一日をタイトルに集めている。

@"GOOD MORNING HEARTACHE" 
しっとりとしたバラード演奏で始まる。音数少な目の温度感の低い演奏だ。石井のピアノは常にこういう傾向が強い。クライマックスに向けて徐々に昂揚感が増していくと良いのだけど、なかなかそうならないもどかしさがある。そういうタイプのピアニストではないのかも知れない。
A"SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE" 
ストレートなテーマ演奏に続いて安ヵ川がベース・ソロを展開する。気持ちの良いベース・ワークだ。こういう曲においても石井のピアノはクールだ。ブラシによる大坂のソロを経てテーマに戻る。
B"MORNING" 
今度はボサノバ調。
C"DAY DREAM" 
ここまで石井のピアノを聴いて思ったのは演奏が結構こなれているということ。良い意味でも悪い意味でもそこそこに弾けているという感じで、毒がないというか、尖がっていないというか・・・。年齢を調べてみたら1963年生まれの47歳だ。ウーン、もうそんな歳なんだ!
D"AFTERNOON IN PARIS" 
E"NIGHT AND DAY" 
最初から最後までフリー・テンポのインタープレイ。ありきたりで面白みに欠ける。
F"A LOVELY WAY TO SPEND AN EVENING" 
どこかで聴いたことのある曲だと思ってデスク・トップ検索したが見当たらない。さて、誰の演奏をどこで聴いたのだろう?良い曲だ。静かなしっとり系の曲だけど、徐々に昂揚感が醸成されていくと良いのだけど・・・。
G"THE WAY YOU LOOK TONIGHT" 
アルバムの中では唯一のアップ・テンポの曲だけどしっくりしない。速すぎて何やってんだかわからないという印象を受けてしまう。パス。
H"THE NIGHT WE CALLED IT A DAY" 
唯一、安ヵ川のアルコ奏法が聴けるが、以前の"TRIOS"の時のような切れがないのが残念。ここではピチカート奏法のほうが断然良い。
I"ROUND ABOUT MIDNIGHT"
 いきなり安ヵ川のベースが4ビートを刻んでいく。最後の最後にテーマが出てきてこの曲と分かる。

一日の朝から晩までのタイトルだけを集めた企画モノ。総じて、似たような曲ばかりが集まった。耳に心地よいが、毒とか灰汁がない分刺激も少ない。2〜3回繰り返して聴くともうお腹いっぱいという感じになってしまう。
安ヵ川のベースを聴くなら村山浩の"BALLAD OF LYRICS"(JAZZ批評 622.)をお勧めしたい。躍動感溢れる小気味のよいピアノ・タッチとアコースティックなベースを堪能できる。   (2010.12.30)

試聴サイト : http://www.d-musica.co.jp/release/11.html



独断的JAZZ批評 671.