独断的JAZZ批評 738.

TAKUJI YAMADA
新しくて古く、古くて新しいストレートなバップ・テイストを堪能できるアルバム
"LITE BLUE"
山田拓児(as, ss, bc), DANNY GRISSETT(p), LUQUES CURTIS(b), QUINCY DAVIS(ds)
阿部大輔(g on 3,5,6,8,9,10)
2008年10月 スタジオ録音 (D-MUSICA : DMCD 18)


D-MUSICAが日本の若手ジャズプレイヤーにスポットを当ててリリースしてきたアルバムも発足以来枚数を重ね、このアルバムが第18弾に当たる。既に19弾、20弾のアルバムも告知されている。真摯な制作活動と相俟って応援したくなるレーベルである。
今回、スポット・ライトを浴びるのは山田拓児、31歳である。2002年にBERKLEE COLLEGE OF MUSICの奨学金を得て渡米、現在はこのアルバム発売記念のツアーなどを国内で行なっているようだ。C、F、Iのスタンダード以外は全て山田のオリジナル。オリジナルは山田の作曲センスを見事に表現している。オリジナルとスタンダードのバランスも丁度よい。
ピアノに最近、頭角を現してきたDANNY GRISSETT。2007年録音の北川潔の"I'M STILL HERE"(JAZZ批評 448.)で躍動感と緊迫感の漲る演奏を披露していくれた。いずれのメンバーも30歳前半で、粒揃いの若手が揃った。

@"IN A REVERSE WAY" 先ず、アルト・サックスの音色が良いね。伸びやかで力強い。GRISETTのピアノも生き生きとしている。このピアニストは自分がリーダーになった時より、サイドメンの時のほうが適応力を発揮して良く歌う。
A"DANCING IN THE DEEP BLUE SEA" 
ライナー・ノーツでチンさんこと鈴木良雄が山田のサックス・プレイヤーとしての能力の高さと同時に作曲能力を絶賛していたけど、確かにいい曲を書くね。CURTISのウォーキング・ベースが心地よい。ノリノリの演奏に拍手!
B"KURIKOLOGY" 
阿部のアコースティック・ギターがいい。オーソドックスではあるがセンスの良さを感じさせる。
C"DON'T BLAME ME" 
切ないなあ!泣かせるなあ!CURTISのベースは一音一音に重みがあって良いね。
D"FLY" 
アップ・テンポのアグレッシブな演奏。モーダルで骨太なGRISSETTのピアノがフィーチャーされる。
E"RAIN" 
山田はソプラノ・サックスを手にしている。少し物憂気な曲。しかし、色々な曲想の曲を書くね。
F"WHEN LIGHTS ARE LOW" 
CURTISのベースとのデュオで始まる。これが実にグルーヴィで唸ってしまう。続くGRISSETTのピアノは心も踊るバップ・テイストでノリノリ。
G"LITE BLUE" 
今度はしっとりバラード。オーバーダビングしてるけど、ここでバス・クラリネットを吹いているのだろうか?
H"THE BLUE JACKET" 
ブルース・フィーリングたっぷりの歌モノ。とてもいい曲だ。無骨な感じだけど黒い味わいのCURTISのベース・ソロに続いて明るくスマートな阿部のギターが歌っている。アルトに続くGRISSETTのピアノがまた黒い雰囲気を出している。
I"SKYLARK" 
大好きな曲のひとつ。伸びやかで艶のある音色が山田のアルトの魅力だ。吹きっぷりもケレン味がなくて良いね。

日米混合の若手ミュージシャンが奏でる爽快バップ・テイスト。後味スッキリのストレートな演奏に好感が持てる。一人ひとりの実力もさることながら、グループとしての緊密感も素晴らしい。一点、ジャケットのクレジットの中に山田が奏でる楽器としてバス・クラリネットの表記があるのだけど、僕にはどの曲で吹いていたのかよく分からなかった。
新しくて古く、古くて新しいストレートなバップ・テイストを堪能できるアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2012.01.26)

試聴サイト : http://www.d-musica.co.jp/release/18.html



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