HIDEAKI HORI
何かが少しずつしっくりと噛み合っていないというか、個々の力量は素晴らしいのにプラスαがアドオンされていないというか・・・そういう感じなのだ
"IN MY WORDS"
堀 秀彰(p), 安ヵ川 大樹(b), GENE JACKSON(ds)
2010年1月 スタジオ録音 (DAIKI MUSICA : DMCD 06)


堀秀彰のアルバムを始めて聴く。1978年生まれというから今年32歳だ。ジャケットから見る堀の年齢は24〜25歳くらいに思っていたのだが、意外と歳だった。
ベースに凄腕の安ヵ川が参加している。強靭なピチカートの持ち主でもある。最近のアルバムでは村山浩の"BALLAD OF LYRICS"(JAZZ批評 622.)での容赦なく弦を弾くベース・ワークに感動を覚えたものだ。ドラムスのGENE JACKSONは、「大西純子、顕在なり!」を証明した"MASICAL MOMENTS"(JAZZ批評 573.)でも叩いているが、手数が多いといった印象くらいしか残っていない。
このメンバーはレギュラー・トリオではなくてレコーディング用に集めた特別編成のメンバーらしい。

@"THIS IS NEW" アップ・テンポで突き進むモーダルな演奏。最後にリフを何回も繰り返し、ドラムスのJACKSONがソロを執るが、これは少々長すぎた。JACKSONのドラミングはパワフルで手数が多いが何故か心に響かない。
A"BLACK MIST" 
B"FORM" 
JACKSONをイメージしたという堀のオリジナル。この曲でも延々とJACKSONにドラム・ソロを執らせているが、ここまでの必要はあったのか?ハード・ワークでドラムを叩いているが、手数が多くてうるさいだけという印象が残ってしまう。
かつて紹介した嶋津健一の"COMPOSERS T"(JAZZ批評 617.)ではドラムスの岡田圭大が思い切りの良いハードなドラミングを披露しているが、うるさいという印象はない。録音技術の巧みさというのがあるかもしれないが、やはり、ドラムが歌っているんだよね!

C"TAKE THE A TRAIN" 
何故こういう演奏になってしまうのか?誰もが知っているスタンダードゆえに素直に演奏できなかったのか?変拍子。もって回ったかったるい演奏だ。若くして(もうそんなに若いとは言えないかも知れないが)こういう面白くもない変拍子をやりたがるというのはどういうわけ?スタンダードゆえの差別化かもしれないが、軽快感のない脱線しそうな"TAKE THE A TRAIN"である。A列車のごとく真一文字に突き進んで欲しかった。
D"LIKE A KEYSTONE" 
E"PUPPY WALK" 
アドリブはブルース。3コーラス続く安ヵ川のよく歌うベース・ソロは流石だね。ドラムスとの4小節交換を経てテーマに戻る。
F"WINTER WALTZ" 
堀の書いた美しいワルツ。ちょっとGIOVANNI MIRABASSIの持つ雰囲気に似ている。ここではJACKSONがブラシを用いているので3者のバランスが良い。
G"SO NEAR, SO FAR" 
ミディアム・ファーストの4ビートを刻んでいく。安ヵ川のウォーキングが心地よい。JACKSONのドラミングは相変わらずおかずが多い。
H"ANOTHER “WORDS”"
 

堀のピアノは指捌きも達者でテクニシャンでもあると思う。モーダルな演奏を得意としているようでもある。でも心奮わせる何かが足りない。旨みというか色気というか・・・。
このCDはレコーディング用のメンバーということなので日頃のレギュラー・メンバーと違うわけだ。何故、こういう手法をとったのか?GENE JACKSONに配慮した演奏振りもあまり好ましいとは言えない。ドラムスを替えたらもっと違った印象のグループになるに違いない。例えば、池長一美なんていうのは面白いかもしれない。
このアルバム、何かが少しずつしっくりと噛み合っていないというか、個々の力量は素晴らしいのにプラスαがアドオンされていないというか・・・そういう感じなのだ。   (2010.06.15)

試聴サイト : http://www.d-musica.co.jp/release/06.html




独断的JAZZ批評 632.