CHARLIE HADEN
C. HADENは、誰もがしゃしゃり出たがる世の中にあって裏方に徹することの出来る数少ないプレイヤーの一人だと思う
"FIRST SONG"
ENRICO PIERANUNZI(p), CHARLIE HADEN(b), BILLY HIGGINS(ds)
1990年4月 スタジオ録音 (SOUL NOTE : 121222-2)
昨年末に、それまでに気には掛けていたけど購入していなかったアルバムを何枚かゲットした。年末バーゲンで価格がお得ということもあった。そんな中の1枚がこのアルバム。
"FIRST SONG"といえば、CHARLIE HADENの代名詞みたいな曲で、C. HADENといえば「パブロフの犬」のごとくこの曲が思い起こされる。このアルバムの録音は1990年と少々古い。競演のE.
PIRANUNZIで言えば、名作"YELLOW & BLUE SUITES"(JAZZ批評 487.)を録音した年だ。
PIERANUNZIとHADENの組み合わせというと、2003年録音の"SPECIAL ENCOUNTER"(JAZZ批評 282.)がある。そのときのドラムスはPAUL MOTIANであったが、今回のアルバムはBILLY
HIGGINSとなっている。
@"FIRST SONG" HADENの手になる名曲。まさに、C. HADENが奥さんに捧げた代名詞的佳曲。親しみやすいメロディと切ないほどの美しさが印象的。死に直面したSTAN
GETZが"PEOPLE TIME"(JAZZ批評 231.)で最後の力を振り絞って熱演した曲としても有名。ここではPIERANUNZIのシングル・トーンでの寡黙な演奏が際立つ。
A"JE NE SAIS QUOI" この曲はENRICO PIERANUNZIが同じ年の12月に録音した"YELLOW & BLUE SUITES"(JAZZ批評 487.)の中や、1995年録音の"SEAWARD"(JAZZ批評 352.)の中でも演奏しているENRICOのオリジナル。PIERANUNZIのうねるような躍動感を満喫できるワルツ。HADENとの息もぴったりだ。
B"POLKA DOTS AND MOONBEAMS" HADENのソロを長めにフィーチャー。
C"LENNIE'S PENNIES" LENNIE TORISTANOの書いた曲。まず、テーマが素晴らしい。ありそうで、ないテーマだ。テーマに続くHADENのベース・ソロが長い。このベーシストの長いソロって滅多に聞かないのだが、ここはリーダーだからか?PIERANUNZIのアドリブが良くスイングしている。PIERANUNZIのピアノはいつもこうでなくちゃあ。
D"NEWSBREAK" ここではHIGGINSの軽快なブラッシュ・ワークが聴きモノ。PIERANUNZIの個性がぴかりと光る好演ぶり。味があるねえ。
E"ALL THE WAY" この曲というとLEE MORGAN "CANDY"(JAZZ批評 64.)や馬場和子の"ai"(JAZZ批評 112.)の中にある演奏を思い出す。ここではPIERANUNZIの叙情的な演奏が聴ける。
F"SI SI" CHARLIE PARKERの書いた曲をブルース・フィーリングたっぷりに歌う。
G"FOR TURIYA" ジャズ風ど演歌という風情だ。
H"IN THE MOMENTS" 3者がそれぞれアグレッシブに突き進む。
CHARLIE HADENというベーシストは自らをリーダーとして身をおくタイプではないと感じる。あくまでも、サイド・メンとして評価の上がるタイプだと思う。そういうことの出来る数少ないベース・プレイヤーという気がしてならない。誰もがしゃしゃり出たがる世の中にあって裏方に徹することの出来る数少ないプレイヤーの一人だと僕は思うのだ。
それと同時に、対話の出来るミュージシャンだとも思う。PAT METHENYとのデュオ・アルバム"BEYOND
THE MISSOURI SKY"(JAZZ批評 6.)やKENNY BARRONとのデュオ"NIGHT & THE CITY"(JAZZ批評 16.)はその最たるものだろう。
このアルバムについて言えば、PIERANUNZIのピアノがもっともっと目立って良かった。僕はENRICOのめくるめく、うねるような躍動感をもっと聴いてみたかった。
とは言うものの、このアルバムが素晴らしいアルバムのひとつであることを否定しない。 (2010.01.30)
視聴サイト : http://www.emusic.com/album/Charlie-Haden-with-Billy-Higgins-Enrico-Pieranunz-First-Song-MP3-Download/11332475.html