独断的JAZZ批評 352.




ENRICO PIERANUNZI
この組み合わせこそPIERANUNZIの最高のトリオだ
"SEAWARD"
ENRICO PIERANUNZI(p), HEIN VAN DE GEYN(b), ANDRE CECCARELLI(ds)
1995年3月 スタジオ録音 (SOUNDHILL FSCD 2034)

PIERANUNZIにとって黄金のトリオと言ってもいいだろう
2001年録音の名盤"LIVE IN PARIS"を遡ること6年も前の同じメンバーによるスタジオ録音
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今までに紹介したENRICOのアルバムではベースとドラムスの組み合わせが少しずつ違う。"THE NIGHT GONE BY"(JAZZ批評 141.)はMARC JOHNSONとPAUL MOTIAN、"PLAY MORRICONE"(JAZZ批評 203.)はドラムスがJOEY BARON、"SPECIAL ENCOUNTER"(JAZZ批評 282.)はCHARLIE HADENとPAUL MOTIANという組み合わせだった。それともう1枚、ベースのMADS VINDINGがリーダーとなった"THE KINGDOM"(JAZZ批評 327.)では、ドラマーはAREX RIELだった。
この"SEAWARD"のメンバーは2001年録音の"LIVE IN PARIS"(JAZZ批評 324.)と同じHEIN VAN DE GEYNと ANDRE CECCARELLIというメンバー。僕はこの組み合わせこそPIERANUNZIの最高のトリオだと思っている。何故なら、この組み合わせがどの組み合わせより一番刺激的であり、一体感、緊密感に溢れている。さらには美しさも躍動感も溢れ出る泉の如しだ。
因みに、"THE NIGHT GONE BY"を引っ張り出して聴き比べてみたが、やはり、ドラマーの良し悪しが強く影響しているようだ。センシティブで豪胆なCECCARELLIのよく歌うドラミングは昂揚感と躍動感を上手に醸成して行っている。

"LIVE IN PARIS"は2枚組みのライヴ・アルバムだったが、このアルバムでも演奏されている曲が3曲ほどある。
CG"BUT NOT FOR ME"、そしてIの3曲だ。1995年のスタジオ録音と2001年のライヴ録音を聴き比べてみるのも面白いだろう。

@"SEAWARD" 
耽美的なイントロで始まる。
A"L' HEURE OBLIQUE" 
似たような耽美的イントロで始まる。徐々に3者の昂揚感がうねりのように増してくる。
B"STRAIGHT TO THE DREAM" 
更にテンションが上がって昂揚感を増していく。

C"FOOTPRINTS" このアルバムはここらあたりから本番モードになっていく。PIERANUNZIのピアノも冴え渡ってくる。いやあ、いいね。3者の渾然一体となった演奏を堪能頂きたい。
D"THE MEMORY OF THIS NIGHT" 耽美的なバラードだけど単なるバラードで終わっていない。
E"YESTERDAYS" 
いつものテーマ崩しで始まる。ベース・ソロでのCECCARELLIのバッキングいいね。それに続く怒涛のプレイ。
F"JE NE SAIS QUOI" 
美しいワルツ。アドリブでは躍動する。

G"THIS IS FOR YOU / BUT NOT FOR ME" 不協和音をそろえたテーマからドライブ感溢れる4ビートへ。ドラムスのソロを経て一気呵成に"BUT NOT FOR ME"に雪崩れ込む。エンディングはユーモアと遊び心に溢れている。
H"KEY WARDS" 
I"I HEAR A RHAPSODY" ベースがテーマを執った後、分厚い4-ビートへと移行する。小気味の良いスティック捌きと図太いベースに乗ってピアノが躍動する。
J"WHAT YOU TOLD ME LAST NIGHT" 
最後を締める美しくも躍動感溢れる演奏。こういう演奏こそ、最もPIERANUNZIらしいと言えるのではないだろうか。素晴らしい!

このアルバムはスタジオ録音なので、先に記した"LIVE IN PARIS"と比較するとライヴならではのスリルや瞬時に反応する波動は若干薄めだが、その分緻密だ。もし、どちらかを選ぶとするなら2枚組みの"LIVE IN PARIS"をお奨めしたい。2枚組みでは重たいという方にはこのアルバムをお奨めしよう。いずれ劣らぬ名演であることに変わりない。
ENRICO PIERANUNZIの実力を充分に知らしめたピアノ・トリオの傑作として「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2006.07.10)



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