JURAJ STANIK
この頃のSTANIKは未だスタイルが確立されていないというか、至極オーソドックスな一面を見せている
"EN BLANC ET NOIR"
JURAJ STANIK(p), MARIUS BEETS(b), JOOST PATOCKA(ds), TOON ROOS(ss on D, G)
1999年6月 スタジオ録音 (DAYBREAK : DB CHR75020)

JURAJ STANIKのアルバムは今までに2枚紹介している。1枚目が2003年録音の"SHAKEN NOT STIRRED"(JAZZ批評 170.)で、ブルース・フィーリングに溢れており、単にヨーロッピアン・テイストのジャズとして括れないオランダらしい無骨さがあった。2枚目が2005年と6年録音の"THE ITEM"(JAZZ批評 368.)であるが、曲数の割りにトータル演奏時間が短く「食い足りない」という印象を持った。
3枚目のこのアルバムは2枚のアルバムを遡る1999年録音というから「掘り起こし」的なアルバムなのかも知れない。メンバーは"THE ITEM"と全く同じだ。これらの3枚、いずれのアルバムもベースにはPETER BEETS(p)のお兄さん、MARIUS BEETSが参加している。オランダを代表するベーシストなのでもっともな話だ。
JURAJ STANIKは1969年生まれというから録音時30歳。アルバム・タイトルの"EN BLANC ET NOIR"は「白と黒で」という意味らしい。それゆえか、曲目には「色」に関するタイトルが多い。

@"OVER THE RAINBOW" フリーのイントロで始まり、テーマからイン・テンポになる。MARIUSの太くて温かなベース音がいいね。ピアノは「華麗な」と言いたくなるような演奏で、らしくない。
A"BETWEEN THE DEVIL AND THE DEEP BLUE SEA" 印象的にはSONNY CLARKをこざっぱりと明るくしたような感じかな。
B"G(REEN) FORCE" 
STANIKのオリジナルを自らのピアノ・ソロで。少々気負いを感じさせるソロだ。
C"BLUE MONK" 
(take 4) こういう単純明快なブルースでは有無を言わせぬ躍動感が欲しい。MARIUSのベースがもう少し表に出てきたら面白かった。
D"BLUE IN GREEN" 
TOON ROOSのメランコリックなソプラノ・サックスが入るが、良い雰囲気が出ていると思う。
E"A VICTORI" 
STANIKの書いたオリジナル・バラード。しっとり系のなかなか良い曲で3者のアンサンブルも決まっている。
F"HOUSE OF JADE" 
これもオリジナル。STANIKはコンポーザーとしても豊かな才能を感じさせる。
G"SNO'PEAS" 
ソプラノ・サックスが入る。この曲の名演としてはB. EVANSの"AFFINITY"(JAZZ批評 330.)のピック・アップは当然として、2009年の僕のお気に入りアルバム、LUIGI MARTINALEの"LE SUE ALI"(JAZZ批評 549.)あたりも入ってくるだろう。是非、聴き比べて欲しいと思うのだが、躍動感という点でこの演奏は今ひとつだ。どちらかというとバラード風の仕上げになっている。
H"C. HER HIDDEN AGENDA" 
オリジナルをピアノ・ソロで。
I"COLOR OF DAYBREAK" 
このアルバム中、4曲目のSTANIKのオリジナル。
J"BLACK NILE" 
W. SHORTERの書いた曲。頭から尻尾まで3人が躍動し続けて終わる。多くの曲でこういう展開があればさらに良かった。気持ちの良いMARIUSのウォーキングが聴けて、このアルバムのベスト。
K"BLUE MONK"
 (take 9) Cの演奏に比べるとこちらのほうが遊んでいて面白い。

僕は2003年の"SHAKEN NOT STIRRED"がデビュー・アルバムと思っていたのだが、それを遡ること4年前にもトリオ・アルバムがあったということ。この頃のSTANIKは未だスタイルが確立されていないというか、至極オーソドックスな一面を見せている。4年後の"SHAKEN NOT STIRRED"ではSTANIKならではの演奏スタイルというのが垣間見れるようになってくる。当然、アルバムとしては"SHAKEN NOT STIRRED"の方が面白い。
それともう少しリズム陣の録音レベルが高くてもよかった。   (2010.01.22)

試聴サイト : http://www.emusic.com/album/Juraj-Stanik-En-Blanc-Et-Noir-MP3-Download/11035051.html



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独断的JAZZ批評 602.