独断的JAZZ批評 604.

BILL CARLAP (NEW YORK TRIO)
「毎度お馴染みのNEW YORK TRIOでございます」ってな感じだ
"BEGIN THE BEGUINE"
BILL CHARLAP(p), JAY LEONHART(b), BILL STEWART(ds)
2005年8月 スタジオ録音 (VENUS RECORDS : VHCD-4007)


ビーナス・レコードの2009年の年末セールで1350円でゲット。CDもこのくらいの価格で買えるとお買い得感が増してついでにもう1枚ゲットしてみようかという気持ちになる。
このNEW YORK TRIOは2003年にはDUKE ELLINGTON集"LOVE YOU MADLY"(JAZZ批評 151.)をリリースしているし、2006年にはRICHARD RODGERS集"THOU SWELL"(JAZZ批評 395.)を出している。トリオとしてやりたいことがなくなってきたので、有名作曲家の作品集ならば、曲の知名度も高いしそこそこ売れるかもしれないという打算があったのかもしれない。こういうのを称して「売れ線狙いの企画モノ」というのだろうけど、"THOU SWELL"のように素晴らしいアルバムもあった。
今度のアルバムはCOLE PORTER集だ。COLE PORTERのジャズ界に残した功績は大きい。このアルバムに挿入されている曲のみならず、LOVE FOR SALE","NIGHT & DAY","ALL OF YOU"など、スタンダード・ナンバーとして定着した曲は枚挙に暇がない。

@"YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO" 
COLE PORTERの代表的楽曲といっても良いだろう。ピアノのイントロに始まり、ついで2ビート〜4ビートへと展開していく。この辺はお手の物という感じだ。極めてオーソドックスな演奏だ。
BILL MAYS TRIOの名盤"GOING HOME"(JAZZ批評 130.)の中に入っている演奏と聴き比べてみるのも面白い。個人的にはMAYSの個性的な演奏が好きだ。

A"MY HEART BELONGS TO DADDY" 
LEONHARTがベース・ラインを口ずさみながら楽しそうに弾いているが、これって難しい技だと思う。
B"SO IN LOVE" 
これも名曲のひとつだ。途中からSTEWARTのブラシが引っ張って倍テンになるところがスリリング。
C"BEGIN THE BEGUINE" 
ちょっとけだるいような、ゆるいような・・・。
D"I LOVE PARIS" 
E"FROM THIS MOMENT ON" 
F"JUST ONE OF THOSE THINGS" 
G"EASY TO LOVE" 
これもPORTERの代表的佳曲。
H"EVERY TIME WE SAY GOODBYE" 
スロー・バラード。

演奏する作曲家の名前が変わっても、演奏スタイルに大きな変化はない。「毎度お馴染みのNEW YORK TRIOでございます」ってな感じだ。金太郎飴みたいにどこを切っても同じような絵柄が出てきてしまう。一流の3人がやっていることなので、不快感を抱くということはないが、やはり、新鮮味と緊迫感に欠ける。やっている当の本人たちも「やり飽きたなあ」くらいに案外思っているのかもしれない。
BILL CHARLAP率いるNEW YORK TRIOの一押し演奏は何といっても、第1弾で2001年録音の"BLUES IN THE NIGHT"(JAZZ批評 30.)の中にある"MY FUNNY VALENTINE"だと思っている。B. STEWARTの虚飾を排した単純明快な4ビートのシンバリングが素晴らしい。   (2010.02.03)

試聴サイト : http://www.venusrecord.com/recent/2005.html