ENRICO PIERANUNZI
PIERANUNZIのピアノは沈思黙考型とでも言ったらいいのだろうか?
"SPECIAL ENCOUNTER"
ENRICO PIERANUNZI(p), CHARLIE HADEN(b), PAUL MOTIAN(ds)
2003年3月 スタジオ録音 (CAMJAZZ CAMJ 7769-2)
ENRICO PIERANUNZIというピアニストは僕にとってはもうひとつ良く分からないピアニストだ。世間ではイタリアを代表するピアニストして騒がれているようだが・・・。
既に掲載した2枚(JAZZ批評 141. と 203.)とも諸手をあげて絶賛とまでは行かなかった。このアルバム"SPECIAL ENCOUNTER"も諸手をあげてというわけには行かないのが本音だ。
このアルバムで興味を誘ったのはCHARLIE HADENの参加だ。このベーシストは不思議な神通力を持っていて、共演者から素直でナチュラルな演奏を引き出すことが出来る天才なのだ。過去の例では1996年録音のPAT
METHENYとのデュオ(JAZZ批評 6.)やKENNY BARRONとのデュオ(JAZZ批評 16.)では、その能力が如何なく発揮されている。
この2003年録音のアルバムはドラムスにPAUL MOTIANを迎えたトリオである。そう言えば、HADENとMOTIANの共演では1989年録音のGERI
ALLEN"SEGMENTS"というアルバムを持っていたが、心に響くものがなくてこのJAZZ批評に掲載することなく処分してしまったCDであった。今回はどうだろう?
@"MY OLD FLAME" トリオ演奏だが、ドラムスが控えめ。全曲を通して言えることだが、激することがない。あくまでも沈着冷静という感じだ。
A"YOU'VE CHANGED"
B"EARLIER SEA" PIERANUNZIのオリジナル。マイナー調の日本人好みの曲想だ。躍動感もあるし、これはお奨めだ。やはり、ジャズには「美しさと躍動感、緊密感」が揃っていないと・・・・。
C"NIGHTFALL" いかにもHADENの書いた曲という感じ。重く美しい。珍しく雄弁にソロをとる。PIERANUNZIのバッキングにもう一工夫あっても良いと思うのだが。
D"MO-TI"
E"LOVEWARD" テーマが難解。スカッとしないなあ。
F"WALTZ FOR RUTH" この曲はHADENが奥さんのために書いた美しいワルツで、前述のMETHENYのアルバムやBARRONのアルバムでも取り上げているので、是非、聴き比べてみて欲しい。DやEに比べると圧倒的にテーマが良い!
G"MIRADAS" 唯一のデュオ。PIERANUNZIのオリジナル。美しい曲ではある。
H"HELLO MY LOVELY" HADENの書いた曲はこれを含めてCとFの3曲あるが、どれも良い曲だ。
I"WHY DID I CHOOSE YOU ? "
J"SECRET NIGHTS"
残念ながら、HADENの神通力はトリオには通用しなかったようだ。PIERANUNZIのピアノは沈思黙考型とでも言ったらいいのだろうか?流れ出てくる音楽も平淡としているし、湧き上がるエモーションがない。従って、躍動感を期待すると裏切られる。例え、バラード集だとしても、グイグイ引っ張りこむような躍動感が欲しいところである。そんな中ではHADENの書いたB、FとHはテーマが良いので安心して聴いていられる。やはり、「良いテーマに良いアドリブという法則」は通用するね。
因みにB、D、E、G、JがPIERANUNZIの書いたオリジナル。
先に紹介したKENNY BARRONのアルバムと比較するとBARRONの方が単純明快であり、セクシーである。 (2005.07.20)