JORIS ROELOFS
アルト・サックスとクラリネットを持ち替えてプレイするROELOFSは美しい音色と、24歳とは思えない歌心で魅了し続ける
“INTRODUCING JORIS ROELOFS”
JORIS ROELOFS(as, cl) AARON GOLDBERG(p), MATT PENMAN(b), ARI HOENIG(ds)
2007年9月 スタジオ録音 (MATERIAL RECORDS : FNCJ-5531)


僕は普段、管モノはあまり聴かない。ほとんどをピアノ・トリオ中心に聴いているわけだけど、時に、耳に残る管モノのアルバムが出てくる。そういう中にあって、とりわけアルトサックスが好きだ。
先日、紹介し2008年のベスト・アルバムのひとつに入れたJENS SONDERGAARDとKENNY WERNERのデュオ"A TIME FOR LOVE"(JAZZ批評 509.)や、やはり、2003年のベスト・アルバムに入れたGEROGE ROBERTとKENNY BARRONのデュオ"PEACE"(JAZZ批評 147.)はいずれもアルト・サックスが何ともいえない味を出していて絶品だった。
今回紹介するJORIS ROELOFSはフランス人プレイヤーというが、未だ24歳という若さだ。ARI HOENIG 絡みで検索していたら、このアルバムに引っ掛かった。ネットで試聴して一発で気に入り、注文を出したのが8月の初めだった。その後、輸入盤から国内盤への切り替えなどがあって、12月の後半になってやっと入荷してきた。
今まで、ピアノ・トリオ中心で聴いてきたのだが、こういうアルト・サックスの素晴らしいアルバムを聴くにつけ、これ以上、間口を広げてしまうのは不味いなあと思っている。何故なら、ピアノ・トリオだけでも聴く時間が足りないのに、これ以上、間口を広げたら仕事している時間を削るか、眠る時間を削るしかなくなってしまう。これは困る。だから、相当強くブレーキを踏まないといけないと思っている。

@"I FALL IN LOVE TOO EASILY" 兎に角、この曲一発!ってヤツで、もうぶっ飛んだね。この美しい音色に感嘆!そして、この歌心!とても24歳とは信じ難い。ピアノのGOLDBERG、ベースのPENMAN、ドラムスのHOENIGのサポートも磐石で揺るぎがない。最後に試聴サイトを記しておくので、ご自分の耳で確かめていただきたい。
ピアノの世界でも23歳のOLIVIA TRUMMER(JAZZ批評 498.)というとてつもない才女がドイツに現れた。こういう若い人が次から次に出てくれば、ジャズの世界も少しは安泰かもしれない。
A"DOOIE HOEK" 太くて重いアコースティックなベースの音色がいいね。
B"SWEET & LOVELY" 
躍動するHOENIGのドラムス。
C"3/4 SPACE" 
思索的、幻想的なテーマ。多種多様のドラミングを見せるHOENIGは並みのドラマーとは一味も二味も違う。
D"BACKGROUND MUSIC" 
この曲も最高!軽快なブラッシュ捌きと強靭なピチカートがアップ・テンポの4ビートを刻んでいくが、その上に乗ったアルトとピアノのインタープレイが凄い。このグル-プとしてのベスト・プレイがこの曲。実にスリリング。ジャズって素晴らしいと思える一瞬だ。
E"THE RULES" 
後半部に入るHOENIGのドラミングが圧巻だ。
F"FOUR WINDS" 
アルトとドラムスのデュオ。決して飽きさせることのないスリリングな展開に丸。伸び伸びとしたHOENIGのドラミングが堪能できる。これまで僕が聴いたHOENIGの演奏の中ではこのアルバムがベスト・プレイだと思う。
G"FRANCISCA" 
クラリネットに持ち替えての演奏。美しいテーマを淀みのない軽やかな音色で奏でていく。
H"BETER !" 
フリー・テンポのアヴァンギャルド風の立ち上がりから一転、軽快なリズムを刻みだす。
I"SKYLARK"
 リズミックなベースのプレイを背景に伸びやかにテーマを奏でていく。続いて、ベースのソロから4ビートへと進んでいく。このPENMANのベースはとてもユニークで、躍動している。アルトとベースのデュオ。これは面白い。

アルト・サックスとクラリネットを持ち替えてプレイするROELOFSは美しい音色と、24歳とは思えない歌心で魅了し続けるし、GOLDBERG、PENMAN、HOENIGもある時はサポートに徹し、ある時は主張して十分に個性を発揮している。
HOENIGのプレイは僕が聴いたアルバム《JEAN-MICHEL PILK "NEW DREAMS"(JAZZ批評 460.)やAKIKO GRACE "GRACEFUL VISION"(JAZZ批評 493.)やKENNY WERNER "WITH A SONG IN MY HEART"(JAZZ批評 510.)やSIMONA PREMAZZI "LOOKING FOR AN EXIT"(JAZZ批評 511.)》の中ではベスト・プレイにあたると思う。実にスリリングである。
4人が自分たちの役割を見事に演じきったアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
最後はトリを飾るにふさわしい刺激的なアルバムで2008年を締め括ることが出来た。また、来年も沢山の5つ★に巡り会えますように!   (2008.12.30)

試聴サイト : http://www.myspace.com/jorisroelofs



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独断的JAZZ批評 523.