MARC PERRENOUD
「オールド & ニュー」
即ち、伝統に根差しながらも新しい音楽を創出していくような・・・
"LOGO"
MARC PERRENOUD(p), MARCO MULLER(b), CYRIL REGAMEY(ds)
2008年6月 スタジオ録音 (NEU KLANG : NCD4028)

正月気分の酔い覚ましにCDをトレイに載せた。やはり正月に聴くジャズは5つ★であって欲しいと思い、昨年末にゲットしたアルバムの中から一番のお気に入りをチョイスした。
最近はネットショップでも試聴サイトを掲載しているので、これは本当に助かる。「百聞は
一聴にしかず」で、百のレビューを読むより一回の試聴のほうがアルバム選定の役に立つだろう。最後に試聴サイトを記載しているので、ご自分の耳で確認されることをお勧めしたい。
ドイツのマイナー・レーベルから出されたアルバムだが、ピアニストは1981年のジュネーブ生まれのスイス人だ。未だ28歳という若さである。写真を見る限り、同年齢のメンバーが集まっている。
M. DAVISの曲が2曲(
CD)、スタンダード・ナンバーが2曲(FH)で、残り5曲がPERRENOUDのオリジナルという構成になっている。
ところで、このNUE KLANGというレーベルは、僕が2008年のベスト・アルバムにも選定したOLIVIA TRUMMERのアルバム《"WESTWIND"(JAZZ批評 498.)&"NACH NORDEN"(JAZZ批評 517.)》をリリースしたレーベルでもある。意欲的なアルバムであることが分かるだろう。

@"MIB" 
最初の数小節を聴いただけで新しい息吹を感じさせてくれる。聴き進むうちに「これは何か期待できそうだ!」と思えてくる。
A"FLIGHTCASE" 
高速4ビートを刻むシンバリングが切れているし、ベースの力強いウォーキングも気持ちよい。ピアノ・タッチもクリアでこれも心地よい。このグループの実力のほどが伺える演奏だ。先ずは、お手並み拝見だ。
B"LOGOGLACE" 
内省的なスロー・バラード。音数の少ないベースとピアノであるが、多彩なドラミングとのバランスは良い。
C"SOLAR" M. DAVISの曲に果敢にチャレンジ。ここではむしろ多弁なピアノに変わっている。多ビートを刻むドラムスが時間と共に昂揚感を増してくる。それにインスパイヤーされるようにピアノがどんどん熱くなっていく。そしてクライマックスを迎える。クール・アンド・ホットだ
D"BLUE IN GREEN" 超スロー・テンポの演奏でじっくりと耳を傾けないとこの曲と分からない。

E"EMIRA" 
先に紹介したOLIVIA TRUMMERやオーストリアのグループ・TRIOTONIC(JAZZ批評 424.)などとも共通した革新性を感じることが出来る。
F"ALONE TOGETHER" スロー・テンポで演奏されるこの曲はテーマのたった1コーラスだけで終わる。しかし、進むにつれて徐々にテンションが高まっていくその様がいい。
G"NAX" 
一転して、アップ・テンポの4ビートを刻む。速いパッセージを難なく弾くPERRENOUDは相当のテクニシャンでもある。
H"YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC" またまた雰囲気はガラッと変わって、ラテン・リズムで奏でるスタンダード・ナンバー。ついついニヤッとしてしまう。

色々なことをやってみても自分たちの演奏スタイルに確固たるモノを持っているので、リスナーに迎合しているような感じは全くない。
サイドメンにも良い面子が揃った。特に、ドラムスのCYRIL REGAMEYは手数が多くても饒舌多弁とは思わせないクレーバーなドラマーという印象を持った。
このグループの持ち味は「オー
ルド & ニュー」とでも言いたくなるスタイル。即ち、伝統に根差しながらも新しい音楽を創出していくような・・・。これも将来が楽しみということで「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2009.01.05)

試聴サイト : http://www.myspace.com/marcperrenoud



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独断的JAZZ批評 524.