SIMONA PREMAZZI
「心地よく躍動しないジャズなんてジャズじゃない」
と思っている僕にとっては苦痛でしかない
"LOOKING FOR AN EXIT"
SIMONA PREMAZZI(p), JOE SANDERS(b), ARI HOENIG(ds)
2005年12月 スタジオ録音 (PRE001)

このアルバムは、一時期、ネットでも結構話題になったアルバムと記憶している。何しろ、このジャケットであるから、厭でも記憶に残ってしまう。とても購入意欲をそそるジャケットとは言い難いし、グロテスクとさえ言いたくなってしまう。。
では、何故、購入したかというと、ピアノ・トリオであれば「毒食わば皿まで」という感覚が働いたのと、前掲に続きARI HOENIGの活きの良いプレイを聴いたみたいと思ったからだ。僕が入手したアルバムの中ではこのアルバムがHOENIG参加の中で一番古い。果たして、3年前のHOENIGのプレイはどうだったろうか?

@"SMOKERSION" いきなりハード・タッチのモード奏法らしき演奏で始まる。テーマに続くアドリブでは高速の4ビートが展開され、HOENIGの活きの良いドラミングが期待に応えてくれる。天衣無縫、傍若無人のドラミングは抑えるところは抑えて配慮も利いている。続くJOE SANDERSのベース・ソロは無機質な印象を拭えない。この間、PREMAZZIは演奏を放棄したかのように何のバッキングもなしで二人に任せっきりだ。まるでHOENIGのワンマン・ショーだ。でも、これは悪くない。
A"AUTUMN LEAVES" 
人の演奏とは差別化したいという思いからか?躍動感の無い変拍子。ひょっとして5拍子?何で、わざわざこんな手の込んだことするのか?全く、不明。その上、不快。
以降、どの曲も心地よい躍動感というものが全然無くて小難しい演奏ばかりで、これ以上、無理しながら聴きたいとも思わない。「心地よく躍動しないジャズなんてジャズじゃない」と思っている僕にとっては苦痛でしかない。

B"FOUR O'CLOCK" 
C"JUST ONE OF THOSE THINGS" 
訳の分からない変拍子。
D"ALE 'S DOG" 
E"PRAYER FOR ROBERT" 
F"JUNKIE PAPER DRAGON" 躍動する4ビートの演奏もベースのソロから躓く。
G"B. R. A. D" 
H"BUT NOT FOR ME" 
折角のスタンダード・ナンバーも変拍子。
I"LOOKING FOR AN EXIT" 

ピアノのPREMAZZIのプレイは特に何かに優れているという印象もないし、いくつか演奏しているスタンダード・ナンバーの解釈も素晴らしいとは言い難い。
ベースのJOE SANDERSのプレイも上手いとは言い難い。演奏に躍動感が無いのはこのベースに負うところが大きいのでは?
一方、HOENIGのドラミング、特に、高速でのシンバリングなどは素晴らしいし、繊細かつ豪胆なスティック捌き、ブラッシュ捌きは天性なモノと感嘆するのだが・・・。
ピアノ・トリオに限らず、どのユニットでも一人だけ秀でていても駄目で、一人が足を引っ張っても駄目。それぞれの力が拮抗してユニットとしてのプラス・アルファが生まれてこないと楽しくない。
このアルバム、無機質な印象を拭えないし、心地よさのかけらも無いといったら酷だろうか?   (2008.11.11)



独断的JAZZ批評 511.