独断的JAZZ批評 460.

JEAN-MICHEL PILC
どの曲にも圧縮したような濃密さがある
"NEW DREAMS"
JEAN -MICHEL PILC(p), THOMAS BRAMERIE(b), ARI HOENIG(ds: F,I,J,K,Lを除く全て), MARK MONDESIR(ds: F,I,J,K,L)
2006年10月 スタジオ録音 (DREYFUS JAZZ : FDM 46050369052)

JEAN-MICHEL PILCのアルバムといえば、2004年のライヴ録音盤、"LIVE AT IRIDIUM, NEW YORK"(JAZZ批評 306.)を紹介しているが、職人気質な頑固さに襟を正したいと思ったものだ。今回のアルバムは前回のアルバムとメンバーはほぼ同じ。ドラムスがARI HOENIG主体になり、元のメンバー、MARK MONDESIRが5曲で入れ替わっている。
全15曲と曲数は多い。その分、1曲あたりの演奏時間が少ない。4分以上の演奏曲が4曲、あとはほとんどが2分〜3分半までだ。

@"BUT NOT FOR ME" 
ピアノのテーマ崩しで始まる。もうこの時点で躍動感満載だ。サクサクとしたHOENIGのブラッシュ・ワークが心地よい。ドラムスとベースが磐石のリズム・サポートをしているので安定感がある。あっという間の4分と41秒。
A"A CHILD IS BORN" 
メルヘンチックな優しさに溢れた4分と1秒。PILCのベースになっているのはこうしたリリカルな演奏かもしれない。
B"TREES PART 1" 
C"HUMMINGBIRDS" 
HOENIGのドラミングに注目。ワクワクしてくるね。
D"NEW DREAMS" 
美しいテーマに入り込む不協和音との絶妙なアンサンブル。5分と41秒。
E"SATIN DOLL" 
HOENINGの力強い(!)ブラッシュ・ワークに乗って、テーマ崩しで迫る。話題のドラマーHOENIGのブラッシュ・ワークは流石だ。3分過ぎからは"THERE IS NO GREATER LOVE"のテーマが挿入されている。スティックに持ち替えてアップテンポの演奏となる。HOENIGのドラミングは手数が多いが無駄を感じさせない。この間、丁々発止のやり取りでテンポは変幻自在に変化していく。このトリオの真骨頂だろう。6分と37秒。

F"WIDMUNG" 一転して、美しいテーマ。力強く終わる。
G"OLD JOE" 
ソロ・ピアノ。やはり、このピアニストの根底に流れているのは美しさと優しさなのだろう。
H"ACTION" 
I"THE MEADOW" 
J"BURNING PATH" 
K"THE BROOK"
 1分半過ぎからの切れまくるピアノを聴け!2分と59秒。
L"SIMPLICITY"
 前曲から連続して入る。
M"STRAIGHT NO CHASER" 
超攻撃的疾風怒濤の2分と47秒。気分爽快!
N"TREES PART 2" 

このアルバムには4分以下の演奏が11曲と多いが、どの曲にも圧縮したような濃密さがある。4分以上の演奏時間を持っている@、A、D、Eはじっくりと腰を据えて聴いてほしい。これらの4曲はいずれもドラムスはHOENIGが叩いているが、そのドラミングは実に刺激的だ。特に@、C、E、Mはブラッシュ、スティックのいかんを問わずドラミングの素晴らしさを堪能できるだろう。
全体を通した印象としては、難解とまでは言わないが聴く人をある程度選ぶと思うので、誰にでもお勧めというわけにはいかない。
ALI HOENIGの参加でより刺激的になったということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2008.01.14)



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