TETE MONTOLIU / JAVIER COLINA
ある意味、奇をてらわず真面目にやってみましたという感じかもしれない
"TETE MONTOLIU JAVIER COLINA 1995"
TETE MONTOLIU(p), JAVIER COLINA(b),
1995年8月 スタジオ録音 (CONTRABAIX : KAR 7803)


TETE MONTOLIUといえば、スペインの盲目のピアニストとして有名だ。かつては結構聴いたものだが、最近はとんとご無沙汰していた。1995年録音のデュオ・アルバムが出たというので購入してみた。スペインのピアニストというとこのTETEのほかにも、同じく盲目のIGNASI TERRAZA(JAZZ批評 192.)がいるし、若手にはMARTI VENTURA(JAZZ批評 287.)やINAKI SANDOVAL(JAZZ批評 401.)がいる。いずれのピアニストもそれぞれの個性を感じさせるが、妙に、日本人の感性にピタリと嵌るようだ。これはヨーロッパ言語の中でもスペイン語が日本語の発音に近しいというのと関係があるのだろうか?

@"YESTERDAYS" フリーのピアノ・ソロから一転してイン・テンポになり4ビートを刻む。MONTOLIUは大御所らしく好き勝手に切れのあるフレーズを連発するが、ベースのCOLINAは忍の一字(?)で耐え忍ぶ?
A"COME RAIN OR SHINE" ベースがテーマを執る。小手先で弾いている感じが物足りない。
B"T'ESTIMO TANT" MONTOLIUのオリジナル。少々大仰なピアノ・プレイではある。
C"I REMEMBER YOU" 2ビートで始まり、さびの部分で4ビートを刻む。COLINAのベース・ワークはあくまでも控え目だ。
D"LAURA" 
E"WILLOW WEEP FOR ME" MONTOLIUは色々とけしかけるけど、ベースが踊らずという感じも無きにしも非ず。ベース・ソロもフィーチャーされているが、少々芋っぽい。
F"ACUARELA" アップ・テンポで4ビートを刻むMONTOLIUのオリジナル。最後に"OLEO"のメロディが流れて終わる。
G"BROWN BASAJAUN" ピアノとベースのユニゾンで始まるCOLINAのオリジナル。
H"UN BLUES" 二人の競作。

ピアノとベースのデュオといえば、"ONE TO ONE 2"(JAZZ批評 259.)のRAY DRUMMOND、"HOPE"(JAZZ批評 275.)のTERJE GEWELT、 "DUO LIVE IN CONCERT"(JAZZ批評 292.)のNIELS-HENNING ORSTED PEDERSEN、 "LOCKROP"(JAZZ批評 338.)のGEORG RIEDEL、"ARCHING"(JAZZ批評 346.)のJESPER LUNDGAARD等のベース・ワークを思い出す。いずれも世に名ベーシストと言われるプレイヤー達ばかりで、その歌心に秀でたものがあるのと同時にユーモアや遊び心がある。ピアノを阿吽の呼吸でサポートしながら、いないドラムスの分までリズムを刻み、一方で自己主張もきちんとやるタイプだ。
デュオの場合はベースの力に負うことが多いのも事実だろう。その点、このJAVIER COLINAのプレイは遠慮がちでもある。スペインの重鎮、MONTOLIUを前にして臆したわけでもなかろうが。
決して悪いわけではないが、ピアノとの絶妙なインタープレイと遊び心という点で物足りなさが残ってしまう。このアルバム、また聴きたいと思わせるトラックがない。じゃあ、詰まらないかというとそういうわけでもなくて、要は強烈な印象を抱かせるトラックがないということなのだ。ごく当たり前に普通なのだ。ある意味、奇をてらわず真面目にやってみましたという感じかもしれない。   (2008.04.27)



独断的JAZZ批評 480.