独断的JAZZ批評 346.



OLIVIER ANTUNES / JESPER LUNDGAARD
何気ない優しさと品性に溢れおり、
何年たっても瑞々しさを保ち続けるアルバムだと思う
"ARCHING "
OLIVIER ANTUNES(p), JESPER LUNDGAARD(b)
2005年9月 スタジオ録音 (MUSIC MECCA CD 4096-2)

ハード・バップが暫く続いたので、一転、北欧のデュオを・・・
ヨーロッパの名手JESPER LUNDGAARDをベースに迎え、
若手ピアニスト、OLIVIER ANTUNESがデュオに挑む
*     *     *     *     *     *     *     *     *     * 

最近、ピアノとベースのデュオに良いアルバムが目白押しだ。つい最近紹介したばかりのJAN LUNDGRENとGEORG RIEDELの"LOCKROP"(JAZZ批評 338.)も北欧の香りのする良いアルバムだった。少し遡ると、TERJE GEWELTの"HOPE"(JAZZ批評 275.)も素晴らしかった。
いずれのアルバムにも共通しているのは、ベースが超一流であること。デュオはベースが下手では先ず聴けない。その点、これらのベーシストはヨーロッパの一流どころだ。勿論、音程に狂いはないし安心して聴いていられる。そして、ピアノとのコミュニケーションが実に良い。心の通い合いがあってこそのデュオなので、緊密感は非常に大事だ。
ベーシストのGEORG RIEDELはスウェーデン、TERJE GEWELTはノルウェイ、そして、このJESPER LUNDGAARDはデンマークと期せずして北欧3国が揃った。北欧のベーシストはクラッシクの薫陶を得ているので音程は確かだし、ピアノを生かす術を知っている。自らが良く歌い、ピアノをも引き立たせる、その塩梅が実に良い。

"LOCKROP"がLUNDGRENとRIEDELのオリジナルが中心だったのに対し、このアルバムはスタンダードとジャズ・ジャイアンツのオリジナルが中心だ。曲数も同じ15曲だ。聴きなれた曲が多く親しみを感じる一方で、"LOCKROP"に比べて、若干、新鮮味に劣るのは仕方のないことか・・・。

@"GIV MIG GUN EN SALMETUNGE" 
(TRAD.) 1曲目を飾る快い癒し系ワルツ。
A"THE OLD COUNTRY" 
(NAT ADDERLEY) ジャズ・ファンなら一度は耳にしたことがあるだろう。2ビートで始まりアドリブから心地よい4ビートを刻む。ドラムレスであることを忘れさせる躍動感。
B"JEG SER DE BOGELYSE OER" 
C"COME SUNDAY" 
(DUKE ELLINGTON) 僕はELLINGTONのこの曲を聴いてみたかった!
D"REUNION BLUES" 
(MILT JACKSON) ブルース一発、躍動する。
E"ESTATE" 
2000年に亡くなったBRUNO MARTINO(イタリア)の書いた曲で今やスタンダード。最近、よく取り上げられる曲のひとつ。こういう哀愁を帯びた旋律に日本人は弱いと思う。確かに、良い曲だなあ!

以下、大人のデュオを堪能頂きたい。

F"LAD DET KLINGE SODT I SKY" 
(TRAD.)
G"IT'S ME, OH LORD" 
(聖歌)
H"MIT HJERTE ALTID VANKER" 
I"TIT ER JEG GLAD" 
J"HJERTE, LOFT DIN GAEDES VINGER" 
K"AUTUMN LEAVES" 
スタンダード。
L"KIRKEN DEN ER ET GAMMELT HUS" 
M"HYMN TO FREEDOM" 
(OSCAR PETERSON)
N"I DANMARK ER JEG FODT" 

OLIVIER ANTUNESのピアノは変に気負ったところもないし、LUNDGAARDのベースは包容力を感じさせる実に温かみのある演奏だ。触発されたANTUNESのピアノが活き活きとしている。まるで仲の良い夫婦の奏でる音楽の様に息もピッタリ。加えて、音も良い。
"LOCKROP"が気に入った方なら、恐らく、このアルバムも気に入っていただけると思う。何気ない優しさと品性に溢れおり、何年経っても瑞々しさを保ち続けるアルバムだと思う。
「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2006.06.17)