独断的JAZZ批評 401.

INAKI SANDOVAL
INAKI SANDOVALのピアノは
1.タッチが明るく瑞々しい
2.「間」を持っている
3.そして、歌心がある
"SAUSOLITO"
INAKI SANDOVAL(p), HORACIO FUMERO(b), PEER WYBORIS(ds)
2005年4月 スタジオ録音 (AYVA PRODUCTION : AYVA 035)

このアルバムは去年、ネット注文を出したがいつまでも入荷しないので、一度は諦めたアルバムだ。今年に入って再入荷を知り、今度は即ゲットした。そして、この間、1ヶ月にわたって聴いてきたけど、聴き飽きることがない優れもののアルバムだ。
最初の曲の2小節を聴いて、これはいいアルバムだと直感した。相性の良いアルバムというのはほんのさわりだけでピーンとくるものだ。

INAKI SANDOVALのピアノは
1.タッチが明るく瑞々しい。
2.「間」を持っている。
3.そして、歌心がある。
ということで、良いピアニストの条件を備えているなあと感心した。SANDOVALの年齢は不明だが、写真を見る限り若そうだ。
BHIを除く全ての曲がINAKIのオリジナル。コンポーザーとしても一級のセンスを持っている。

@"PRELUDIO" 「前奏曲」ということだろうか?ピアノ・ソロ。美しく瑞々しいタッチに心洗われる。2分と14秒。
A"SAUSOLITO" 2分過ぎたあたりから4ビートを刻み、躍動していく。ピアノの左手のバッキングのタッチが軽やかでいいなあ。表現力豊かな左手だ。ブラッシュとの4小節交換を挟んでテーマに戻る。軽やかな躍動感に溢れた5分45秒。
B"SMILIN' EYES" ベースとドラムスにはベテランが配置されているらしいが、配慮の利いた、ピアノ・トリオとしては申し分のないサポート振りだ。6分と14秒。
C"TE IMAGINAS...?" ベース・ソロのバックアップのシンバリングが繊細で良く歌っている。エンディングに向けて高揚感が増していく。"NATURE BOY"のフレーズが垣間見れたりして・・・。最長の9分と36秒のワルツ。
D"LUNA LLENA" 美しいテーマ。LUNAとあるから「月」がテーマなのだろうか?絶妙のコラボレーション。ベースとドラムスが利いている。このピアニスト、絶妙の「間」を持っている。少ない音数とこの「間」が作る空間が凄い。誰しも沈黙の空間は不安に駆られて音で満たしたくなるものだが、じっと我慢である。これは凄い。心洗われる8分と15秒。

E"REGINA" ブラッシュが軽快に躍動するボサノバ調。ここでは切れのあるピアノ・プレイを披露している。ベース・ソロへと続いて終わる8分弱。
F"AGUA" フリー・テンポのインタープレイ。3分と22秒。
G"LAS VEGAS BOULEVARD" そういえば、このSANDOVALはアメリカで武者修行をした経験があるらしい。アメリカを思い出したか!?ベースとドラムスのソロを挟んでテーマに戻る。グルーヴィに、ハード・ドライブに躍動する4分強。
H"'ROUND MIDNIGHT" このスタンダードの解釈が洒落ている。グルーヴィで心憎い7分と40秒。若いのにたいしたピアニストだと僕は感心している。エンディングも唸らせる。
I"MY ONE AND ONLY LOVE" 僕の大好きなスタンダード・ナンバー。最後を締めるピアノ・ソロが1コーラス、2分。同じスペインのトリオ、MARTI VENTURA TRIOの"PAS DEL TEMPS"(JAZZ批評 287.)でもこの曲を演奏しているが、好対照で面白い。INAKI SANDOVALを「柔」とすれば、MARTI VENTURAは「剛」だ。"PAS DEL TEMPS"も僕のお気に入りのアルバムのひとつ。機会があれば聴いてみて欲しい。

レビュー後の感想。実に気分が良い。さわやかな気分だ。いいジャズを聴くと本当に気分が良い。お酒が更に一層美味しくなる。感謝。
ということで「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。

今回はスペインの若手ピアノ・トリオを紹介したが、暫く、若手シリーズで行ってみようと思う。次回はアメリカの若手ピアノ・トリオから。   (2007.03.18)



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