独断的JAZZ批評 338.


JAN LUNDGREN
心の通った演奏を通して、聴くものの心を洗い、沸き立たせてくれるはず
"LOCKROP"
JAN LUNDGREN(p), GEORG RIEDEL(b)
2005年9月 スタジオ録音 (GEMINI RECORDS GMCD 122)

素晴らしい音色のデュオ・アルバム
一聴して、直ぐに何を置いても掲載しようと思った
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このアルバムがDISKNOTEから届いたのが昨日。一聴して、これは良いと思った。折りしも前掲でJAN LUNDGRENの"IN NEW YORK"(JAZZ批評 336.)を掲載したばかり。LUNDGRENの名誉回復には丁度良いと思った。掲載の順番を変えてでも早く紹介したいと思った。
良いアルバムというのは良いか悪いかの判断に時間はあまり必要としない。一聴して良いと思ったアルバムは1週間してもその評価が変わることはほとんどない。「厳選」に選択したアルバムのほとんどに共通して言えることだ。
で、このアルバムであるが、「美しさ、躍動感、緊密感」を兼ね備えている上に、心洗わせるような清々しさと爽やかさに満ちている。時、今まさに春爛漫。窓を開け放って大音量で聴いてみたいものだ。特筆すべきは「音」のよさ。ベースは「生音」に近い。アコースティックな木の香りのする音色だ。深く、太く、伸びやかで艶のある音だ。ベースはこうでなくちゃあ!勿論、ピアノの音色もクリアで清々しい音だ。恐らく、オーディオ・ファンの方も一目置く音色だと思う。こういう音色が欲しかった!
ベースのG
EORG RIEDELはジャケットの写真を見る限り、相当のベテランのようだ。1934年生まれというから、録音時、71歳ということになる。力みのない、それでいて力強いベースワークで、心沸き立つ演奏だ。LUNDEGRENのピアノも温かく清々しい。心の通い合った緊密感溢れる演奏だ。

ピアノとベースのデュオと言えば、TERJE GEWELTの"HOPE"(JAZZ批評 275.)という傑作があったが、このアルバムも甲乙点け難い。"HOPE"がスタンダード・ナンバーを中心にアルバムが組まれていたのに対して、このアルバムは1曲を除く全ての曲が二人のオリジナル。と言っても、どこかで一度は聴いたことがあるような美しい旋律があちこちに配置されているので、違和感なく楽しむことが出来る。GEORG RIEDELはコンポーザーとしても比類稀なセンスを持っていると思う。

@"LOCKROP" 
まあ、まあ、ゆっくりとご堪能くだされ!
A"IDA'S SOMMARVISA" 
B"M.Z." 
C"OCH JUNGFRUN GICK AT KILLAN" 
この曲のみトラッド。
D"SOLEN SKINER" 
E"LILLE KATT" 
F"ARNE" GEORG RIEDELの書いたオリジナル。心に沁みる。
G"DIS" 
H"STENHUGGARENS VISA" 
I"BAD WEATHER" 
J"LOOKING BACK" 
K"BLUES FOR JAN JOHANSSON" 
アドリブはブルース。泥臭いブルースが入ってグッとアルバムが締まった。
L"RAMSA" 
M"DIMMAN LATTAR" 
ベースがアップ・テンポの4ビートを刻む。実に良い音色だ!
N"TOO SOON" 

謂わば、小作品集とも言うべきアルバムで、全部で15曲。1曲あたり2分から4分と短めではある。しかし、どの曲も濃密な時間を提供してくれるだろう。
心の通った演奏を通して、聴くものの心を洗い、沸き立たせてくれるはず。 「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。    (2006.05.03)



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