スペインの血というのだろうか
奏で出る音楽はバルセロナの空のように青く澄み切っている
"IT'S COMING"
IGNASI TERRAZA(p), PIERRE BOUSSAGUET(b), GREGORY HUTCHINSON(ds)
2003年4月 スタジオ録音 (THE MONTREUX JAZZ LABEL TCB 23702)


このIGNASI TERRAZAというピアニストはスペイン生まれで、9歳のときに失明したという。同じく、スペインにはTETE MONTOLIUという盲目のピアニストがいるが、このTETEを師と仰いでピアノの勉強をしたらしい。
奏でる音楽はTERRAZAの生まれたバルセロナの空のように明るい。

@"GIVE ME ANOTHER" ガツンと一発、いきなり来ましたね。軽快で快いスウィング感のあるTERRAZAのオリジナル。3人がそれぞれに乗りまくって心地よいスウィング感を生み出した。
A"I'M GETTING SENTIMENTAL OVER YOU" この出だしが、また、良い。ミディアム・テンポの味のある曲。スティックに持ち替えたあたりからハード・ドライブに推移していく。最後は、PETERSON顔負けの、いや、PHINEAS NEWBORN JR.顔負けのピアノプレイを披露する。基本的にこの系統は音符過剰の傾向があるが、これが良いか悪いかはリスナーに委ねたい。BOUSSAGUETのベースはなかなか良いと思う。
B"VAN GOGH" 16ビートだけど、グルービーでヘヴィーな雰囲気を持った演奏だ。

C"PRELUDE TO A KISS" D.ELLINGTONの手になるスタンドナンバーをしっとりと演奏した。このピアニスト常に音符過剰かと言えば、そうではない。曲によって上手に使い分けている。
D"OSCAR'S WILL" OSCAR PETERSONに捧げたTERRAZAのオリジナル。陽気にバリバリ、ゴリゴリとピアノが歌う。ベースのウォーキングをバックにしたHUTCHINSONのドラムスのソロもご機嫌だ。あたかも、OSCAR PETERSON TRIOのようではある。
E"BECAUSE OF YOU" いかにもPETERSONが好みそうな曲だ。演奏スタイルもPETERSONに似ているが、小粋な演奏で誰でも指を鳴らしたくなるに違いない。難しい理屈はいらないからこの演奏に酔いしれよう。このアルバムのベスト。聴く人を幸せにする演奏・・・・と思う。

F"YESTERDAYS" スタンダード・ナンバー。タイプに似合わず、理屈が多過ぎたようだ。少々ドラミングが耳に障る。
G"MY IDEAL"
 バルセロナの空のように明るく軽快なボサノバ調。へえー、この名曲をこんな風に演奏するだ!JAZZ批評 185.のJAN LUNDGRENの演奏と比較してみるのも面白いかも。
H"BROWN'S SWEETS" タイトルのようにベーシスト、RAY BROWNに捧げられたBOUSSAGUETのオリジナル。RAY BROWNばりのひょうきんでいて逞しいテーマの演奏の後に、3人のノリノリの演奏が繰り広げられる。

I"ROSOR" TRADITIONALと書いてあるのだからスペイン民謡だろうか?美しいピアノ・ソロ。左手のバッキングが印象的。音符を少なくしても充分に弾ける事を証明して見せた。
J"IT'S COMING" TERRAZAのオリジナル・ブルース。BOUSSAGUETのベースがバリバリ歌う。
 
スペインの血というのだろうか。奏で出る音楽はバルセロナの空のように青く澄み切っている。Eにあるような、その曲だけで、その演奏だけで、聴く人を幸せにすることが出来るなら、これは演奏者冥利と言うものだろう。
併せて、ベースのPIERRE BOUSSAGUETの好演ぶりも追記しておこう。太く暖かい音色で良く歌っている。良いベーシストだ。
このバルセロナの空のような明るさに共鳴し「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。    (2004.04.19)



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IGNASI TERRAZA

独断的JAZZ批評 192.