『HERO』(英雄)をめぐる往復書簡編集採録 | |
「多足の思考回路」:めだかさん ヤマ(管理人) |
|
(めだかさん) 今回の外国映画の日誌は『英雄』でしたね(^^)。私も観たところでしたので、リアルタイムに読めました。 ヤマ(管理人) 僕もめだかさんのを拝読しましたよ。 (めだかさん) 東洋的な神秘と歴史を盛り込んだ大作でした。 ヤマ(管理人) ほんとに。 (めだかさん) 私はチェン・ダミオンの奏王が胡散臭かったのですが(笑)、ヤマ様は奏王の造形に最も説得力をご覧になったのですね。 ヤマ(管理人) そうですね。造形という点では、説得力よりも魅力だったけど、その魅力的な造形に説得力を与えたのがチェン・ダオミンの演技ということかな。 (めだかさん) えらく見栄えの良いカッコイイ秦王でしたよね(笑)。演技というのは、あの覇気もあるでしょうか。 ヤマ(管理人) 咸陽宮って舞台の造りの効用ってのはあったかも(笑)。 (めだかさん) ん〜、でもあの舞台でリー・リンチェイやトニー・レオンと蝋燭を挟んで絵になる秦王となると、やっぱりあのくらいの見栄えはなくては気のバランスが・・・(笑)。 私はリー・リンチェイの無名が良かったです♪(いきなり最初にヌードが出るとは思わなかったな〜v・笑) ヤマ(管理人) メイル・ヌードと言えば、近頃の『二重スパイ』ではハン・ソッキュ、『スパイ・ゾルゲ』ではモックンでしたが、観てない?(笑) (めだかさん) この二つとも未見です。惜しいことをしました(笑)。 『スパイ・ゾルゲ』はともかく『二重スパイ』は機会があったら見たかったのに。予め知ってたら頑張って行ったかも(笑)。 ヤマ(管理人) でも、ちと凄惨な場面でのことだからね、どちらも。 (めだかさん) 観賞に向いてはなさそうですね〜。 ヤマ(管理人) それはともかく、めだかさんの感想で面白かったのは、位詰めのハッタリとも言うべき威容ってとこでしたね(笑)。最初の中国統一国家となった秦国の威容に見合うだけの威容を映画のほうもきちんと備えていたのが凄いよね。 そのスケール感と圧倒力で言えば、陳凱歌の『始皇帝暗殺』も大きな映画だったけど。 -----『始皇帝暗殺』と比較して------------------------- (めだかさん) 何しろ、あの人数と真っ黒が迫力ありました〜。『始皇帝暗殺』は大きさはあったんですけれど、ちょっと兵の人数が城の広さに比べて少なく感じてて、位詰めというほどの迫力は感じてなかったんです。『HERO』があれだけの人数で城を埋められるのもCGだからですけれど。 ヤマ(管理人) 『始皇帝暗殺』はCGでなくしてあの迫力ってのがウリだったような記憶があるけど、どうだったっけなー? (めだかさん) 迫力はあったと思うんですけれど、でも私はどっちかというと、それは城外の部分に感じてたんじゃないかと思います(一生懸命、思い出そうとしてます・汗)。 ヤマ(管理人) ただ僕は、むしろ『始皇帝暗殺』では、今やCG使わずにこれだけデカイ映画を撮ることができるのは、もう陳凱歌くらいのもんだろーなーって感慨を覚えたよ。なんか黒澤を想起した記憶がある(笑)。 (めだかさん) でも『始皇帝暗殺』は私は好きなんですよね。『HERO』とは別なスケールの大きさがありますね。あの人間臭い秦王の造形も面白かったし。ただ、あの映画の私にとっての難点は、登場人物の見分けが話が相当進んでからでないとできなかったことでしょうか(笑)。 ヤマ(管理人) ドラマとかもうほとんど覚えてなくて・・・(たは)。 (めだかさん) あの時代のリアルに拘る映画って髪の毛は総髪だし身なりは汚いし、ひげは皆生やしてるし・・・見分けが付かないです(笑)。きっと外国の人も日本の時代劇は登場人物を見分けられないでしょうね。 ヤマ(管理人) 僕が子供の時分、外国映画は、これに苦労したもんだよ(苦笑)。 (めだかさん) その点、『HERO』は登場人物を絞ってるし、色分けしてるし、武器でも衣装でも人物を見分けやすくされてるのが世界向けに巧いな、と思いました。 ヤマ(管理人) なるほど。そういう面でも効用があるわけだ、確かに。 それとあの映画、ハッタリっていうのか、一騎当千、白髪三千丈の詩文のお国柄だから、その雰囲気を視覚化すれば、ああなって当然というか、ぴったりなわけだけど、 (めだかさん) なーんか、詩とかもやたらとイメージが大きいんですよね〜(笑)。詩作する時の志や夢を尊ぶからか(笑)。 ヤマ(管理人) それがおバカっぽく見えないところがさすが張藝謀なんだよねー。 (めだかさん) 三国志とか水滸伝の世界を知ってる人にとっては、ハッタリも自然に受け入れられる絵だと思いますが、あのリアル感のない色彩と衣装では、見せ方次第でまずあそこで引くでしょうね。 ヤマ(管理人) 案外と賛否両論に分かれてるらしいというのは、このへんのところなんだろうかね。僕は、あの作品がつまらなかったという人の感覚がよく判らないでいるんだけど。 (めだかさん) 面白くないと思う理由は人それぞれなのでしょうけれど、友人に最近のお勧めを訊かれても、私はこの映画は出し難かったですよ^^;きっと相性があると思って。 カンフーや中国武道を見せるための映画ではないし、中国のこの頃の歴史をある程度は知らないと話に入れないだろうし、 ヤマ(管理人) まぁ、そういう点では秦の始皇帝について全く知らずにいると焚書坑儒のことも度量衡統一のことも含めて、最初の統一国家を作ったってのをあの映画のなかでは、何も説明してはなかったね。 (めだかさん) そっちの方がまだ知られてるんじゃないでしょうか。これって統一前の話ですもの。秦王よりも始皇帝の方が通りがいいですよね(笑)。 そっか〜、時代背景としても「始皇帝暗殺」と同じ時期なんですね、これ。(あっちのタイトルが合ってないのか。それとも分かり易いようにああいうタイトルになってるのか? はたまた、始皇帝になることの阻止劇というのであのタイトルだったのか) ヤマ(管理人) でね〜、実は今回の作品も何かとチェン・カイコーと対照させると興味深いところが本当はいくつもあったんだけど、その悉くと言ってもいいところで、僕には、チャン・イーモウが上回っているように思えてきて、そんな比較対照をして日誌を綴る意欲が減退しちゃったんだよね。んで、今回、日誌ではチェン・カイコーに言及しなかった(苦笑)。 (めだかさん) チェン・カイコー監督、分が悪そう^^; でも、『始皇帝暗殺』と『英雄』を対照させたらということで、全作品というわけではないですよね? ヤマ(管理人) いや、『活きる』は『さらば、我が愛』と対照できるし、『至福のとき』は『北京ヴァイオリン』と対照できるよ。『活きる』の日誌や『北京ヴァイオリン』の日誌では、そういうとこに言及してる。 (めだかさん) どういう点を対照なさっていらしたのか気になるところですけれど(笑)。 ヤマ(管理人) 今回の『HERO』で言えば、僕が日誌に「観念的な言葉を使わないことを身上としてきた感のあるチャン・イーモウが…」と綴った段が、僕にはチェン・カイコーを想起させたとこだね。それとスケール感のこととか。 それはそれとして、中国のあの頃の歴史について知ってるか知らないかが、この映画を楽しむうえで決定的なことのようにも、僕は思わないんだけどね。 (めだかさん) ナレーターが入ってるし、最初から歴史背景もフィクションと見ても、話は通じますね。 ヤマ(管理人) そうそう。 (めだかさん) でも、それと別にワイヤー・アクションを受け入れられるかどうかもあるでしょうけど。 派手で幻想的なアクションと綺麗な映像が無かったら、話そのものはすごく地味、というか単純だし、 ヤマ(管理人) それだけで充分だって気もするんだよ。この造形力の見事さには目を奪われたもの。 ---『スター・ウォーズ』や『マトリックス』と比較して--- (めだかさん) それでしたら、平成のスター・ウォーズやマトリックスとかはどうなんでしょう。あちらもかなり賛否両論のようですが。アクションと映像は見事ですよね? なんちゃって、私はそのどっちもUはパスしたんですけれど^^;。(マトリックスはTは好きですよ〜) ヤマ(管理人) 平成のスターウォーズは日誌にも綴っているけど、僕的には×だね(笑)。 マトリックスは、○。日誌はリローデッドのほうしか綴ってないけど。 (めだかさん) リローデッドの日誌を拝読しました。未見なので「え?マトリックスからこーなっちゃったの!?」とビックリ(笑)。感想、面白かったです。 ヤマ(管理人) ありがとう。 (めだかさん) 西の『マトリックス』、東の『英雄』って言われてたそうですけれど、こっちとの対照もなんだか面白そうですよ。 ヤマ(管理人) 僕は、そういうふうには並べてみなかったなー。どうしてだろ? (めだかさん) 中国って、肉体無視のバーチャルな世界観や精神世界というのだけは作らない気がします。 ヤマ(管理人) なるほど、ね。 (めだかさん) 私が面白さを感じたのは、映画に感じた陰陽五行や中国太古からの思想の影響なんです。 ヤマ(管理人) これは僕はあんまり考えなかったな〜。よく知らないし、ね(苦笑)。 (めだかさん) 映画には関係ないちょっと特殊な見方なので、自分の興味としてサラリと流しちゃう^^;。 それはそれとして(笑)、これがひとつずれてたら『X−MEN2』の時のように、私には「つまらない」となってた可能性はあると思ってます。 日本人には武道での「気」って、なんとなく分かるかもしれないけれど、米国や欧州ではどうなんでしょうね? スター・ウォーズのフォースのようなものと受け取ってるかな? ヤマ(管理人) あ、これね〜、むしろ二十余年前に『スター・ウォーズ』を観たとき、理力って東洋的だなーって思った記憶があるよ。ルーカスとかは、関心持ってたみたいだしね〜。 (めだかさん) そうですね。 どこで読んだのか忘れてしまいましたが、武侠小説についての説明で「気」のことを超能力と説明してるのを本で読んで仰け反ったことがあるもので^^; 東洋からは理力も「気」と思うけれど、西洋から見たらどっちも「超能力」と思う人がいるかも。(これはこれで間違いないのかしら?) ヤマ(管理人) なるほどね。それはそうかもしれないね。ま、別段、その違いってのが決定的で重要だとも思わないけどね。 (めだかさん) そうかなあ。「気」と「パワー」の違いって、私は結構、中国武侠ものには重要だと思うんです。「パワー」で押しちゃうと深みがないんですよね〜。といっても、数点の小説しか知らないんですけどね^^; ヤマ(管理人) 肉体的パワーってことなら、確かに「気」とは違う感じだけど、サイコ・パワーってことでも、違っちゃうんですか? (めだかさん) 逆で、人間の発する「気」には体が重要なのです。 ヤマ(管理人) なるほどね。そりゃ、そうだ。 (めだかさん) 「気」というのは物を形成している最小の物質で、世界にあるもの全てが持つ形成のための一種のエネルギーという考え方です。人の場合は、肉体と精神の両方あってこその「気」です。誰でも持っていて、鍛錬することのできる力ですから、道教の仙人という達した存在もあります。 でも、西洋のパワーってサイコ・パワーのように、二元論として精神と肉体を離して考えるか、あくまで極端に物理的に見るかで、陰陽といった調和の考え方はないし、人間も自然も同じ物質であるとか、双方の気の循環という考えもないですよね。 ヤマ(管理人) そうね。あんまりそういう感じはしないね。 (めだかさん) 気功や中国の武術の知識に堪能な方なら説明できるのでしょうけれども、中国4千年の人体研究と思想のシロモノですから、私ごときではうまく解説できません^^;。すみません。 ヤマ(管理人) いえいえ、お詫びいただくなんてとんでもありません。 でも、一番嬉しかったというか、にんまりしたのが、めだかさんの“風”への注目だったね〜。僕も風と水の印象深さについて言及してるんだけれど、列挙の数が僕よりも多くて、大いに補強してもらえるテクストだね、こりゃ(笑)。 (めだかさん) 私もヤマ様の日誌を読んで、風に触れて下さっていたのが嬉しかったです(^^) 。 ヤマ(管理人) 「風水」なんていう駄洒落じゃなくて、きちっと「五行と気」で語っているところに感心! 愉しく読ませてもらったよ(感謝)。 (めだかさん) 「風水」って風水(方位占学)から出していらしたんじゃなかったんですか? ヤマ(管理人) そうそう。だから、まるっきり駄洒落と言えば、駄洒落みたいなもんだよ(笑)。 (めだかさん) 私は奇門遁甲が映画のどっかにこっそり入れられてるのでは? と疑ったんですが、星空がなかったしこっちまでは無かったかも(笑)。 とはいえ、各章での中国各地の舞台の方角、色、環境とかの関連も調べてみるとなんか出てくるかも・・・と思ったんですけれど、流石にそこまでするのはオタクに過ぎますよね(笑)。私には手に余るので止めました。 ヤマ(管理人) 僕なんか、そもそもそこまでは考えもしなかったからね(苦笑)。 (めだかさん) 「気」というのは武侠ものでは「内功」とか「内家功夫」とか体内の気のことで、本当は私が感想で使ったような時流の流れや機微の読みという意味はないです^^; ヤマ(管理人) あら、そこんとこがメインだったのか。じゃあ、めだかさんもかなり駄洒落的だったんだね。僕は、てっきり無名と秦王の両者の気のぶつかり合いのことを指していると思ってた。 (めだかさん) でも、『戦場のピアニスト』でも思ったことですが、ゲットーや文化大革命のような、あまりに個人の力ではどうにも抗いようもない過酷で激しい変化を経験したことがある人というのは、風のような、人間のコントロールできない自然現象に特別な感慨を持つようになるかもな〜なんて思って、大気の変化と時勢の変化を掛けてしまいました。 ヤマ(管理人) 時勢のほうは後から加えた、解釈的な意味づけかも知れないけど、メインの大気の変化のほうは、それを生じさせたのが両者の「気」のぶつかり合いだったってことなんでしょ?、やっぱり。 (めだかさん) そうです(^^)。その辺の意味は蝋燭の炎に触れてることで含めてるつもりでした。 ヤマ(管理人) ええ、ええ、あのテクストはそのように読めてたと思うよ。 -----造形の妙の素晴らしさ----------------------------- (めだかさん) それはそうと『HERO』では、話が二転三転する展開に面白みと意味を感じられなかったら、かなりつまらないだろうとは思います^^;。 ヤマ(管理人) そういうもんかね〜(苦笑)。 (めだかさん) 昨日、テレビであった『キス・オブ・ザ・ドラゴン』の方を面白いと思う人も多いんじゃないでしょうか。(私はあれも面白かったですけれど。リーの魅力全開!)。 ヤマ(管理人) 未見だー(とほ)。 (めだかさん) 『HERO』は後半、メッセージ性が強烈にきたので、私は「おぉ!」となりましたけれど、それが無かったら「綺麗だな〜。舞台の道具の使い方が面白いな〜。」くらいで、私もさらっと流していたかも^^;。 ヤマ(管理人) これが半端じゃない!って気がするんだけどねー。 (めだかさん) 凄く綺麗にまとまってる話ですけれど、・・・私には綺麗すぎるのかしら?(ヒネクレモノ;) 主張もストレートですよね。観終わって後からそれぞれのキャラを考えたり、ジワジワと胸に来るものは、私はあんまり無かったです。つまらないとは全く思いませんでしたけれど、面白さの質が、いつも私が乗れるものと違ったのでしょうね。 ヤマ(管理人) ある種、図式的ではあったからね。でも、だからこそ、造形の妙が鮮やかに決まるっていう気もするんだけどね(笑)。 (めだかさん) う〜ん。見事だとは思いましたけれども、気持ちに残らないんですよ。いけないなあ。前に掲示板でヤマ様に旦那に「難解なのばかりすすめてるんじゃない?」って言われたことがありましたけれど(笑)、見終わってから悩むのが私は好きだっていうのは、確かにありますね(あの時には、「仮面ライダー」や「ポケモン」は確かに旦那には難解よね♪なんて自分でうけてましたけど・笑)。 ヤマ(管理人) うん、まぁ、『HERO』は、後からそんなに思い悩むような作品じゃないね、確かに(笑)。 (めだかさん) 自分と対照させてはね(笑)。だから悩まない。ヤマ様が面白さを感じた舞台の道具の使い方というのは、胡楊林や湖上の東屋などですか? ヤマ(管理人) いや、僕が面白かったのは、落ち葉であったり、蝋燭の炎であったり、書であったり、大きな碁盤であったり、ってことだったように思うけど。 それより「色解釈はパンフレットのチャン・イーモウのインタビューより」とのことだから、最初のパートは、僕が解した沈青色とかいうより「黒と黄土」ってことなんだろうね。でも、それって衣装の色であって、必ずしも画面の基調色でもないって気がするけど、白が真実ないしは事実であって、意味と感情が色合いを施しているっていうのは、やはり作り手の意図していたところなんだね〜(にやり)。 (めだかさん) 画面の基調色については、触れていなかったと思います。ワダ・エミのデザインに関連してのインタビューだったと記憶してますので。 ヤマ(管理人) でも、いずれにしても、色に意味づけがされているってことは、あったわけでしょ。「白」に対して真実ないしは事実っていうように。 (めだかさん) そうです。それと、長空との対決シーンの基調色は見定めるのが難しいですね。私は、雨は碁会所という屋内に自然を取り込むためかと思っていて、後の青の章の湖の水にも自然という以上の注目をはらっていなかったのですが、ヤマ様の日誌を読んで「あ、そうか」と思いました。 ヤマ(管理人) 賛意をいただき、ありがとう(礼)。僕は、むしろ最初に長空とのエピソードを語り始めたところで色調自体が変わっておやっと思ったもんで(笑)。 んで、その後、さらに話題が変わるたびに色調が鮮やかに変わり始めたんで注目してました。 (めだかさん) 私は、あれは回想だから色調を変えたくらいにしか考えてなかったんです^^; 話で色を変えているのに気付いたのは、青の章になってからくらいなので、遅いですね〜(汗)。 ヤマ(管理人) 「決着をつける前に己を知り剣を引く“礼”と“義”を見てちょっと感激。こういうところが“侠”。」というとこも嬉しい着目だったね。あちこち、どこ見てもカッコイイんだよねー、この映画。 「“英雄”というのが無名や秦王、残剣、飛雪、塾頭のように、その精神が一線を突き抜けてしまっている人物だとしたら、如月はこの作品の中の取り残される大衆の代表なんだなあ。」 これも面白い気付きを与えてくれましたね。追い縋る如月のエピソードは、無名の騙りだから、あれが如月そのものではないわけだけど、人物たちの配置としては、お書きのとおりだよね。 (めだかさん) 白の章では無名の騙りではなく、主観ではありますが事実でしょう。 ヤマ(管理人) 白の章もやっぱり主観なんですかねぇ(ふーむ)。 んで、確かに白んとこでも追ってはいたけど、追い縋るっていうよりは、従者として付き従う側面が比較としてはニュアンス的に強くて、それに加えて慕う心も潜んでいるってイメージだったんですよ。少なくとも赤の章のような濡れ場的な濃密さはなかった感じだったな、僕的には。 -----飛雪と如月--------------------------------------- (めだかさん) うん。ヤマ様と話してるうちに、自分の感情がなんとなく分かってきましたよ〜。その慕う気持ちというのが、飛雪贔屓になってた私には煩かったんでしょう(笑)。 この辺は女性としての私の感情がちょっと入ってるかも。つまり、嫉妬ですね(笑)。 ヤマ(管理人) この辺はかなり微妙だねー(笑)。贔屓は飛雪で、感情移入しやすいのは如月ってのは。なるほど、「嫉妬」ってことにつながるんだね(笑)。 (めだかさん) あの健気さは可哀想な一方で、癪です(笑)。飛雪って絶対、惚れた男にあんなふうに一途にはなれないでしょう。別に負うものがあるからでもあるし、気性や生まれとしてもできない。 ヤマ(管理人) はいはい。 (めだかさん) だから、残剣を殺してしまった後の叫びが本当に悲痛で。というのは、私が女だからかもしれませんけれど。 ヤマ(管理人) 女・男っていうことでは、むしろ、そういうことよりも、あの映画って一つ見方を変えれば、女は何も解っちゃいないって映画でもあるよね。如月が残剣と飛雪のことが何も解っちゃいないように、飛雪も残剣と秦王との間に成立し得たような交感など解りっこないって描き方だった気がする(笑)。 (めだかさん) あれはね〜(笑)仕方ないな、って見てました(笑)。如月は侍女っていう位置付けだし(格として下に描かれることになってる役柄ですね・笑)、飛雪は“復讐の鬼”って役でしたから。それに残剣の恋人役でしたし。残剣に近すぎて理解できない(しない?)という役柄でしょう。同じように復讐に走ってる無名が残剣を理解できたのは、第3者だから。 ヤマ(管理人) 男だからってワケじゃないってことだね。 (めだかさん) 別に飛雪と残剣の役柄が逆でも話としては全く問題ないわけですけれど(笑)。そうなると残剣・飛雪・無名の三角関係の可能性が出てきそう(笑)。 ヤマ(管理人) それじゃあ、やっぱダメですよ。あの飛雪と如月が美しく舞い戦う黄紅の章が成立しないもん。 (めだかさん) それにしても如月のあの表に出まくりの慕う気持ちというのは、飛雪のような女性には脅威ですね〜。 ヤマ(管理人) ふふ。フツーの男は、残剣と違って、無名が最初に秦王に騙ったようなことになっちゃうだろうからね(笑)。 (めだかさん) だから、トニー・レオンがとことん良いとこ取り。人間ができすぎ! 私の感想では、残剣については全然触れてないでしょう。出来すぎててツッコミを入れられない(笑)。あそこでヨロリと行かなかった残剣への女性の評価は、きっと高いですよ〜(笑)。 ヤマ(管理人) そうなのかぁ(笑)。遺恨を超えたことよりも、よろめかなかったとこが凄いのかァ〜。まぁ、そう言えばそうかもなー。 (めだかさん) もっとも、残剣も飛雪も、作中で如月を全く眼中にしてなかったですけれど。観てた私は飛雪に肩入れしてたので、煩かったということです(笑)。 如月は、白の章で追うところでも、残剣に止められるまで向かっていますよね。得物が剣ではなく刀だし、一生懸命な役だけにはっきりと侠客たちとは一線を引かれているのが、なんだか可哀想になってくるんです。 一番、自分に近くて感情移入しやすい役のはずなのに、刺客たちがカッコよすぎて、彼女を見てると自虐的になっちゃうなあ(笑)。 |
|
by ヤマ(編集採録) | |
|