硝石作り
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「十字軍」により、西ヨーロッパ人は、イスラム文化やビザンツ文化に触れ、 視野を広げて、新しい文化を生み出す刺激を与えられました。 イスラム文化では、ハイヤーンが、硫酸・硝酸・塩酸(王水)を発明していました。 硝酸は、硝石(硝酸カリウム)に硫酸を加えて生成させます。 ところが、原料である硝石は、雨の降らない乾燥地域に偏在しており、どこでも手に入るわけではありません。 硝酸カリウムは水溶性なので、雨が降ると、土中の深層に拡散してしまいます。 また、雨が降ると、植物が育つわけですが、 硝酸カリウムが養分として根から吸収され、土中からなくなってしまいます。 ・・・というわけで、 温帯湿潤気候である日本を含む東アジアや、西岸海洋性気候である北西ヨーロッパでは、 天然の硝石を得ることが難しく、人工的に作ることにしました。 ![]() 学ぶ項目を、ステップを細かく分けて一覧にしました。 「この項目は大丈夫だな。」と思うものは飛ばしてもらって結構です。 自分に必要な項目だけを学べば良いでしょう。 カッコ内は、文部科学省の学習指導要領に従った、目安となる履修学年です。 【肥料としての糞尿】 (※)事前に、「古代・中世のヨーロッパ農業」について学んでおくと良いです。 → こちら (01)三圃式農業(高1)・・・3つの圃場を用意し、冬作物、夏作物、休閑地のローテーション。 (02)休閑地・・・家畜の放牧地として利用できました。 (03)オオムギ・・・夏作物として栽培。 家畜の餌にもなりました。 (04)家畜の糞尿・・・次の2年間、農地として利用する際に、肥料となります。 (05)尿素・・・尿の、水(96.39%)以外の成分の半分以上(2.000%)を占めます。 (06)尿素の加水分解・・・アンモニアが発生します。 (07)温度・・・なお、この加水分解は、温度が高くないと進行しません。 (08)野焼き・・・土中における発酵熱や、野焼きによる熱が、加水分解を促すことになります。 (09)付加価値・・・野焼きには、余計な雑草を焼却する目的もありました。 (10)アンモニア・・・水に溶け、アンモニウムイオンとして植物体に吸収されます。 【硝石原料としての糞尿】 (11)植物がない環境だと・・・土中のアンモニアは、化学合成細菌によって代謝されていきます。 (12)亜硝酸菌・・・アンモニアを亜硝酸にする化学合成細菌です。 (13)硝酸菌・・・亜硝酸を硝酸にする化学合成細菌です。 (14)硝酸カルシウム・・・硝酸は、土中の酸化カルシウムと反応して硝酸カルシウムになります。 (15)人工硝石・・・土中の硝酸カルシウムに灰汁(炭酸カリウム)をかけると、硝石が生じます。 (16)硝石丘法・・・木の葉や土を積み上げておき、定期的に尿をかけて、硝石を析出させました。 (17)東アジア・・・鶏や豚を大量に飼育していた高床式住居の床下から硝酸カルシウムをゲット! (18)熱帯地方・・・コウモリの大群が生息していた洞穴から硝酸カルシウムをゲット! (19)イギリス・・・自国生産だけでは足りなかったので、インドから硝石を輸入しました。 (20)フランス・・・革命によりイギリスと仲が悪くなり、硝石を分けてもらえなくなりました。 (21)硝石採取人・・・フランス国王から、あやゆる家に立ち入って床下を掘る特権を与えられていました。 (※)「錬金術」の“キーアイテム”として重要視された「尿」なのですが、 これが、元素「リン」の発見につながります。 → こちら (※)「硝石作り」は、できるまでに数年を要し、まことに気の長い話です。 現在では、「オストワルト法」により、硝酸を製造しています。 → こちら 「酸と塩基」に戻る |
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