トリオ HFトランシーバー TS−530(V、S)
TS−530はTS−830とほぼ同時期に短期間発売された無線機です。カウンターやVFO(ダイヤルパネルはデザインが少し違います)などはTS−830と全く同じものが使用されています。フロントパネルも同じです。発売期間は大変短くそれだけ発売台数も少なかったようです。構成はシングルコンバージョン方式で内部雑音はそれだけ少ないようです。
シングルコンバージョン方式ではTS−820があるのですが、ヤエスのFT−201、FT−901のようなものなのでしょうか。
手に入れたトリオ無線機はラッキーなことに電源が入りちょっと手を加えれば何らかの信号が受信できるもが多くありましたが、中には全く反応なしの状態のものもありました。
複数のトラブルが重なって送受信ができない状態や、一つひとつ不具合箇所を修復しなければならないトラブルはあるものの半世紀近くを経て曲りなりに動作するのは、それだけ品質面も含め完成度の高いトランシーバーであることの現われでないかと思います。
TS−530の部品(基板などはオークションで)は集荷台数が少ないこともあってなかなか入手することができないですが、TS—520と違ってWARCバンドやSSBの混信の除去機能が装着されているのは嬉しいことです。 |
TS−530レストア項目
項目をクリックすると該当する説明項目にジャンプし、「戻る」をクリックするかブラウザ←印でこの項目に戻ります。
写真をクリックすると大きくなります。
入手時の状態
ロータリー、プッシュ、スナップ、VRなどの接触不良・ガリの修復
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受信ができないなどのは各スイッチ等の接触不良が原因の
ケースが多く見られます。ロータリースイッチなどの接触不良を修復しただけで正常に動作するようになることもまれではありません。
無線機等は長期間動作させないと、ロータリースイッチ、スナップスイッチ、プッシュスイッチなどのスイッチ関係の接点やボリュームの接触面が酸化皮膜等で接触不良になり、正常に動作しないことが多く見られます。接触不良が原因で全く送受信ができないこともあります。
接触不良を解消しただけで元のように正常に動作する例は多くあります。
・全く受信ができない、
・各ボリューム類にガリや接触不良が見られる、
・AGCの切り替えができない、AGCをオフにしてもSメーターが振る、
・METER切り替えが上手くいかない、
・RIT調整ができない、
・RF ATTが動作しない、
・スタンバイスイッチを動作させても送信状態にならない
・バンドによって受信出来ない、
などは接点の接触不良が原因の場合が多く見られます。
接点の修復は多くの場合接点洗浄剤で修復することができます。接点復活剤はNGです。
接点復活剤はべとべとする溶剤がそのまま接点周りに残りショートしたり、容量や抵抗値を示したりする危険が大です。
接点洗浄剤は溶液が蒸発するのでこのような心配はありません。ただし接点洗浄剤の溶液も蒸発するまで多少時間が必要です。電源を入れるのは30分以上経ってからが無難です。
接点復活剤を使用する場合はスプレー式はさけて、ハケや綿棒で接点に直接塗布する方法であればトラブル防止につながると思います。
実際にこれまで30台弱のTS−520、TS−530、TS−820、TS−830をレストアしてきましたが9割以上を復活させることができました。勿論、これだけで復活するわけではありませんが、修理の第一歩です。
接点修復でも受信できなかった事例は下記に掲載しています。
さらにVFOの特定の箇所で受信ができなくなる現象も長く動作させなかったために起こったローター部の接触不良が原因です。接点洗浄剤で修復できないときは、2000番紙ヤスリを接触面に差し込んで接触面を磨き、接点洗浄剤を塗布し何度か回転させて接触不良を解消することができます。
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接点復活剤を使用したバンドスイッチの修復(電波が出ない不具合)
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修復方法 |
入手した無線機に接点復活剤が塗布されているのを目の当たりにするとレストアの意欲がなくなってしまいますね!
バンドスイッチと言うより無線機には接点復活剤の塗布は間違いなくトラブルにつながるので使用しては絶対NGです。
スイッチ接点周りにベト付く溶液が残り修復不可能なトラブルを引き起こす可能性が大です。
高圧電圧が加わるとショートしスイッチのベーク板が炭化し使用できなくなったり、付着した溶液が容量を持ち同調ができなくなったりのトラブルに繋がります。
この無線機は接点復活剤塗布で全バンド送信出力が全くでない不具合があったのですが、ラッキーにも修復できた事例です。
送信できない不具合原因は色々ありますが、今回は全バンド12BY7入力まで信号が確認でき全バンドプレート側に出力がないことからコンデンサーやコイルの不具合ではなく接点復活剤塗布の可能性が大きいと考えました。
以下に
修復前と接点復活剤除去後の状況を対比した画像を掲載しました。
修復は油汚れ除去に強いスプレータイプのシンプルグリーンを使用しました。
洗浄後よく水洗いし、その後十分乾燥させました。
このRF基板には高圧電圧DC300Vが加わつので乾燥が不十分の場合ショートする可能性があり注意が必要です。
@RF基板を取り外した直後の状態です。撮影の関係で溶液付着の状態が少なく見えますが、ベト付く状態です。
A B以下の修復処理を行った後にローターリー基板などを取り付けた後のRF基板です。
BRF基板からドライブ部ロータリー基板を取り外した状態。
CRF基板に付着したベト付く接点復活剤の溶液除去後の画像です。
Dバンドスイッチドライブ同調部の溶液が付着した基板。裏面の画像は省略しましたが特に回転部の付着が多くありました。
E洗浄後の基板は光沢がなく溶液が除去されているのが分ると思います。
Fコイル内部に付着した溶液は無水アルコールをしみこませた綿棒で取り除きました。
修復後の動作確認で送信出力が通常通り出ていることを確認しました。
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リレー動作修復(リレー不具合に伴うSメーターの不具合含む)
VFOの安定度向上策(PTO LOCKの組み込み)
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TS−530のVFOは電源オン直後にわずかな周波数変動はあるものの大変安定した動作をしておりますが、より高安定度が期待できるPTO LOCK
Collins PTO Lock FR Radio Lab
製が手元に有ったので、このTS−530Vの高性能かを図るために取り付けることにしました。
Collins PTO Lock FR Radio Lab
製はKWM−2用に開発されたものですが、その後トリオ TS−830に使用できる基板も販売されました。
手持ちのPTO LOCK Ver2はトリオ用で周波数安定度の向上を目的に、エフアールラジオから発売されていたもので、取り付けにより劇的に高安定VFOになります。
キットは小さな基板にパーツを取り付け、それを本体に取り付けられるように工夫されています。
実際本体側に配線を少し追加する程度の、比較的簡単な作業で済みます。
TS−830とTS530のVFOはデザインは若干違いがありますが電気的な仕様はは全く同じなので問題なく使えます。
VFOの安定度がどう変わるのか期待大です。
@P基板はキットで組み立てた後に写真のように平滑コンデンサー側に取り付けました。
Aトリオ用はTS−530はもとよりTS−830やTS−820、520にも使用ができます。
B効果は抜群でカタログによると60分間の変動幅は約6Hzの範囲です。
C周波数カウンターの測定では10Hz以内の変動で極めて安定しております。
実際、マーカー信号受信波をオシロで測定しても、1時間経過後も波形の変化は全く見られませんでした。
この基盤はオークションでは30,000円前後で取引されてましたが、今となっては入手は難しいと思います。
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100W改造
100W改造後突然ファイナル同調が取れなくなった現象
スタンバイスイッチの交換
WARC対応・28MHz100W化
その他の改造 |
WARC対応
・RFユニットのD4、D5、D6をカットします。D4が10MHz、D5が18MHz、D6が24MHzに対応しています。
D4、D5、D6のカットはニッパなどが入りにくいバンド切り替えスイッチのそばにあります。
10、18、24MHz全部の場合は「RF UNITの抵抗R42」をニッパーでカットすれば同じ結果が得られます。今回はR42をカットしました。
R42をカットするにはカウンターユニットを一旦取り外す必要がありますが、D4、D5、D6をカットより作業はしやすいと思います。
28MHz100W化
・バンドスイッチS22-1に入っている2本の線をショートすれば100Wになります。
RECTFIER UNITのP01とP02のショートでも可能です。
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受信感度調整・送信調整
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受信感度調整
@受信感度はANT、MIXコイルを調整します。
ADRIVEツマミを12時の状態にします。
BCALをオンにして指定の周波数に合わせます。
C該当バンドのANT、MIXを調整しSメーターの振れが最大になるように調整棒を使用し調整します。
調整は必ず1.9MHzバンドから行います。
CSメーターの振れ具合はIFユニットのVR2、3で調整します。
14.175MHzでSGから40dbμVを抽入した状態でS9に調整しました。
送信調整
DDRIVEコイルは送信状態(TUNEモード)にし出力最大に該当DRIVEコイルを調整します。
EIFユニットのL28、29 RFユニットのT4を調整します。 |
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「突然受信感度が極端に悪化」原因追及と修復
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特に何の操作もしない状態で急にマーカー信号がかろうじて受信できる程度に受信感度が落ちてしまいました。RFボリュームが全く機能せず、Sメーターは全く触れません。電波も全く出ません。
原因
IF基板Sメーター回路Q7(2SK19)が内部でショートしたため、Q2〜Q4FETに通常はドレーンに12Vだけが供給されるのですが、ゲート2にも供給されてはいけないDC9Vが供給されていました。
その結果Q2〜Q4がNGになっていました。
修復方法
Q7を交換し、Q2〜Q4には3SK73が使用されているのですが、手持ちが2個だったのでQ4には3SK74を取り付けました。
3SK74は3SK73とは形状が全く違うので変換基板作りIF基板に取り付けました。
送受信とも問題なく動作しているようです。
古い無線機では突然TRなどがNGになるのは良くあることですが、原因を特定するのは根気が必要です。
今回はIF基板コネクター(6)の3番ピン(AGC)に9Vが測定(正常時は0V)されてことから追っていき特定しました。 |
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カウンターの不具合
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カウンターが表示されない不具合
カウンター不表示の要因にはIF、PLL、AF各基板やVFO不具合が考えられますが、まれにカウンター基板に原因のこともあります。今回のケースはDC−6Vが出力されないためカウンターが表示されない現象として現れました。
カウンター基板ではAC12Vを基板Q12、13の2SC1959を経由してDC−6Vを出力しています。−6VはIF基板に供給されてIF基板が動作します。
@当初全波整流用ダイオードを交換しましたが修復できませんでした。
AQ12、13を交換したところー6V電圧が確認できカウンターも表示され無線機全体の動作が確認できました。
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ンターのちょっとした不具合解消法
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TS−830の周波数カウンターは大変安定た完成度の高いカウンターでこれまで10数台入手したTS−830でカウンターユニットそのものが故障していたケースがありませんでした。
カウンターユニットそのものではなく他の原因で表示が不安定になる不具合は何件かあり、その対処方法です。
@カウンターソケットコネクター接触不良による表示の不具合
TS−830のソケットは差し込み式になっています。このソケットとコネクター(カウンターユニット以外でも)の接触面が酸化などにより接触不良を起こすことが見られます。カウンターが表示したり一瞬消えたりする現象が見られることがあります。
これは微弱電流にたいしての接触不良でソケットピンとコネクターに接点洗浄剤をスプレーし2、3度ソケットを脱着すると解消できます。
APLLユニットのコネクター接触不良でも同様の現象が起こります。
Bモードスイッチの接触不良による表示の不具合
モードスイッチが接触不良の場合はカウンターが全く表示できなくなります。モードスイッチは密閉式のローターリースイッチが使用されているので接点洗浄剤による修復はできません。スイッチの回し方でカバーするか、スイッチの交換が必要になりますが、スイッチの入手は難しいと思います。今回はスイッチの回し方でカバーできたのでそのままとしました。
CVFOの発振停止による表示の不具合
TS−830のVFOはアナログ式VFOでバリコンで発振周波数をかえています。バリコンのローターとアース間の接触不良があると、ダイヤル操作中にVFO発振が止まり一時カウンター表示が消えてしまいます。ローターとアース間の接触不良を解消すればこれも解決します。
VFOローターの接触不良解消はTS−520ページに掲載しています。
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周波数表示が500KHz下に表示される現象
@全てのバンドでバンド周波数より500Khz低く表示されています。
Aもちろん受信は全くできません。VFOを回しても周波数は変わりません。
BTS−830では10MHz水晶発振を分周して得た500Khz信号をカウンターに供給しています。
Cカウンターユニット接続コネクターAを揺らすと正常に表示します。
Dこのことからコネクターの接触不良の可能性が疑われますが、TS−830に使用されているコネクターはTS−820などに使用されているコネクターと違い接触不良が起きにくいコネクターが使用されています。
前述のピンの酸化による微弱電流に対する接触不良も稀にありますが!
このことからコネクターピンの接触不良ではなくむしろプリント基板面のハンダクラックの可能性が大きいと考えました。(揺らすと正常になることから)
カウンター基板のコネクターピン部をハンダ鏝でなぞったところその後このような現象は起きなくなりました。
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Sメーター破損修復
中和の取り方再調整
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中和の取り方
@終段の中和調整のため50Ωのダーミロードを準備します。
Aダーミロードへの出力を最低に調整することにより中和をとります。
Bまず28.8MHzCWモードで出力調整をします。
CSGスイッチをオフにします。
Dダーミロードへの出力をIN60などで整流し出力電圧を測定します。
E電圧(電流)が最小になるように中和調整バリコン(終段ケースの裏側にある)を調整します。
今回はほぼ0Xになるように調整できました。 |
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ケース塗装
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