相続により、事業を継承された場合の届出関係について説明します。下記の届出は、被相続人から継承されませんので、改めて届出を行う必要があります。特に今まで被相続人の事業専従者であった場合や全く被相続人の事業に携ってこなかった方むけに説明いたします。既に不動産所得がある方、別の事業をされている方はご自身に関係ある部分だけ参考にしてください。
◇ 所得税
1. 個人事業の開業・廃業等届出書・・・事業の開始等の事実があった日から1ヶ月以内
2. 所得税の青色申告承認申請書・・・提出期限は次の通りです。
相続開始を知った日(死亡の日)の時期
|
提出期限
|
その死亡の日がその年の1月1日から8月31日までの場合
|
死亡の日から4か月以内
|
その死亡の日がその年の9月1日から10月31日までの場合
|
その年の12月31日まで(年末年始は、休日にあたりますので、1月4日になります)
|
その死亡の日がその年の11月1日から12月31日までの場合
|
その年の翌年の2月15日まで
|
3. 青色事業専従者給与に関する届出書(生計を一にする親族に青色事業専従者給与額を必要経費に算入する場合)・・・青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後開業した場合や新たに事業専従者を有することとなった場合には、その日から2か月以内)。
4. 所得税のたな卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書・・・事由が生じた日の属する年分の確定申告期限まで。
ただし、これらの届出を行わなかった場合には、棚卸資産の評価方法は最終仕入原価法、減価償却方法の法定計算方法は定額法。
◇ 源泉所得税
1. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書(青色専従者や従業員がいる場合)・・・開設の日から1ヶ月以内
2. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(青色専従者や従業員がいる場合で、給与の支給人員が常時10人未満である給与等の支払者が、源泉徴収した所得税の納期について年2回にまとめて納付するという特例の適用を受ける場合)・・・随時(申請書を提出した月の翌月末までに通知がなければ、申請の翌々月の納付分からこの特例が適用されます。例えば、4月に申請した場合は6月10日納付分から適用。よって6月10日納付分の納期限は7月10日になります。)
◇ 消費税
次のような場合には、納税義務が生じます。
- 相続によって相続人が被相続人の事業を承継した年において、基準期間となる前々年の被相続人の課税売上高が1千万円を超えている場合
- 相続によって相続人が被相続人の事業を承継した年の翌年及び翌々年において、被相続人のその基準期間の課税売上高と相続人のその基準期間の課税売上高の合計額が1千万円を超える場合
よって、次のような届出が必要となります。
1. 消費税課税事業者届出書(「相続・合併・分割等があったことにより課税事業者となる場合の付表」を添付)
2. 消費税簡易課税制度選択届出書(簡易課税制度を選択する場合)・・・選択しようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間等である場合には、その適用を受けようとする課税期間中
3. 消費税課税期間特例選択届出書(課税期間の短縮を選択する場合)・・・選択しようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間等である場合には、その適用を受けようとする課税期間中
なお、被相続人が生前、事業を営んでいるときに従業員(専従者を除く)がおり、社会保険や労災保険・雇用保険等に加入していた場合には、年金事務所や労働基準監督署等にも届出が必要となります。
◇ 相続人にあっては、被相続人に関する次の手続きを行う必要があります。
- 所得税の「個人事業の開業・廃業等届出書」(「所得税の青色申告の取りやめ届出書」は不要です。「死亡」を原因とする場合は、廃業届出で青色申告の承認は自動的に取り消されます。)
- 消費税の「個人事業者の死亡届出書」
|