所得税
分離課税の譲渡所得
堀内勤志税理士事務所
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掲載(更新)日: 2016年10月2日
分離課税とは、政策的見地から他の所得と分離してそれぞれの所得ごとに税額計算を行うものをいいます。
分離課税には、申告分離課税と源泉分離課税があります。
Ⅰ. 申告分離課税
次のものがあります。
  1. 土地等の譲渡による所得
  2. 株式等に係る譲渡所得等の金額
  3. 上場株式等に係る配当所得
  4. 先物取引に係る雑所得等
Ⅱ. 源泉分離課税
次のものがあります。
  1. 利子所得
  2. 懸賞金付預貯金等の懸賞金等の所得
  3. 金融類似商品の所得
  4. 割引債の償還差益の所得
  5. 上場株式等の特定口座制度により特定口座での取引について源泉徴収口座を選択した場合の所得
少し違いますが、退職所得も他の所得と分離して課税されます。
以下、株式等に係る譲渡所得、上場株式等に係る配当所得、先物取引に係る雑所得等、金融類似商品の所得、割引債の償還差益の所得について簡単に説明します。
  • 株式等に係る譲渡所得等の金額
金融商品取引業者等を通じた上場株式等の譲渡益ついては、26年以降は20%(所得税15%、住民税5%)、平成25年分までは10%(所得税7%,住民税3%)、それ以外の譲渡益には20%で他の所得と区分して課税されます。ただし平成26年から平成35年までの間は、非課税措置(NISA)が設けられています。
 さらに、上場株式等に係る譲渡所得等と非上場株式等に係る譲渡所得等を別々の分離課税制度とし、「特定公社債等(例、国債、地方債、外国国債、外国地方債、公募公社債、上場公社債等をいいます。)及び上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税」と「一般公社債等及び非上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税」となります。
ただし、特定公社債等の譲渡所得等に係る課税は、平成28年1月1日以後の譲渡より適用となります。
 特定口座制度で源泉徴収口座を選択した場合にはその口座内における年間取引の譲渡損益及び配当等については、源泉徴収で完結するため、原則として、確定申告をする必要はありません。 ただし、他の特定口座との譲渡損益を相殺する場合、配当所得と損益通算する場合及び上場株式等に係る譲渡損失を繰越控除する特例の適用を受ける場合には、確定申告が必要です。
 株式等に係る譲渡所得等の金額は、総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費(総平均法準ずる方法で計算)+委託手数料等) となります。ただし、取得費が不明な場合、概算取得費を用いることになりますが、その金額は譲渡価額の5%です。
  • 上場株式等に係る配当所得
配当所得は、原則として確定申告の対象ですが、確定申告不要制度を選択することもできます。 確定申告不要制度とは、① 大口株主等が受ける場合を除き、上場株式等の配当等は源泉徴収税額で済ませ省略する、② 上場株式等以外の配当等の場合は、 10万円×配当計算期間の月数÷12 で計算した金額以下の場合は申告しなくてよいという制度です。
 この制度を適用するかどうかは、1回に支払を受けるべき配当等の額ごとに選択することができます(源泉徴収選択口座内の配当等については、口座ごとに選択することができます。)  「大口株主等」とは、その株式等の保有割合が発行済株式又は出資の総数又は総額の5%以上である個人をいいます。  しかし、上場株式等の配当等(一定の大口株主等が受けるものを除きます。)については、申告分離課税も選択することができます。
 申告分離課税の税率は、平成21年1月1日から平成25年12月31日までの間に支払を受けるべき上場株式等の配当等については、7%(他に地方税3%)の税率が適用されます(平成26年1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当等については、所得税15%、地方税5%の税率になります)。 上場株式等に係る譲渡損失がある場合又は年の前年以前3年内の各年に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額のうち、前年以前で控除されていないものがある場合には、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得の金額から控除することができます。
  • 先物取引に係る雑所得等
居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者が、商品等の先物取引を行い、その差金等決済をした場合には、その先物取引による事業所得の金額及び雑所得の金額の合計額(以下、この合計額を「先物取引に係る雑所得等」といいます)については、他の所得と区分して、所得税15%,他に地方税5%の税率による分離課税なります。 適用対象となる先物取引の差金等決済の範囲は、次のとおりです。
1. 商品先物取引の決済
(その商品先物取引による商品の受渡しが行われることとなるものを除く。この取引は、総合課税になります。)
商品取引所で行われる取引で、次のような取引をいいます。
  • 現物先物取引
  • 現金決済型先物取引
  • 商品指数先物取引
  • 商品オプション取引
  • 商品の実物取引のオプション取引
2. 金融商品先物取引等の決済
(その金融商品先物取引等による金融商品の受渡しが行われることとなるものを除く。この取引は総合課税になります。)
金融商品先物取引等とは、金融商品市場において、金融商品市場を開設する者の定める基準及び方法に従い行う、次に該当する取引をいいます。
  • 旧証券取引法に定められている有価証券先物取引、有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引
  • 平成17年7月1日以後に行う廃止前の金融先物取引法に定められている取引所金融先物取引(いわゆる通貨等先物取引、金利等先物取引、金融オプション取引)
  • 平成19年9月30日以後に行う、金融商品取引法第2条第21項第1号から第3号までに定められている取引(この取引とは、同項に規定する「市場デリバティブ取引」に該当するもので、旧証券取引法に規定する有価証券先物取引等 旧金融商品先物取引法に定められている取引所金融先物取引に相当する取引又はこれらに類する取引です)
  • 上場カバードワラントの差金等決済
  • 金融商品取引所で取引される上場カバードワラントに表示される権利の行使若しくは放棄又は上場カバードワラントの金融商品取引業者への売委託により行う譲渡又は金融商品取引業者に対する譲渡した場合の差金等決済による取引をいいます。
 先物取引に係る雑所得等の金額の計算上、損失が生じたときは、他の先物取引に係る雑所得等の金額との損益の通算は可能ですが、先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできません。
 また損失の金額は、一定の要件の下で、翌年以後3年間にわたり繰り越し、その繰り越された年の「先物取引に係る雑所得等の金額」を限度として差し引くことができます。
  • 金融類似商品の所得
金融類似商品の給付補填金等の収益については、一律20%(所得税15%、地方税5%)の税率による源泉分離課税が適用され、源泉徴収だけで課税関係が終了します。 源泉分離課税の対象となる給付補てん金等(雑所得)は次のとおりです。
  1. 定期積金の給付補てん金
  2. 銀行法第2条第4項の契約に基づく給付補てん金
  3. 抵当証券に基づき締結された契約に基づき支払われる利息
  4. 貴金属などの売戻し条件付売買の利益  例えば、金投資口座の利益など
  5. 外貨建預貯金で、その元本と利子をあらかじめ定められた利率により円又は他の外貨に換算して支払うこととされている換算差益  例えば、外貨投資口座の為替差益など
  6. 一時払養老保険や一時払損害保険などの差益(保険や共済の期間が5年以下のもの、又は保険や共済の期間が5年を超えていてもその期間の初日から5年以内に解約したものの差益に限ります。)
  • 割引債の償還差益の所得
次の割引債の償還差益については、割引債を発行するときに原則として18%(1~3)ないし16%(4及び5)の税率による源泉分離課税が適用され、源泉徴収だけで課税関係終了します。その他の償還差益は雑所得になります。
  1. 国債及び地方債
  2. 内国法人が発行する社債(会社以外の内国法人が特別の法律により発行する債権を含みます。)
  3. 外国法人が発行する債券(国外において発行する割引債にあっては、平成20年5月1日以後発行されるもので、その債券の社債発行差金のうち国内において行う事業に帰せられるものがある場合に限ります。)
次のものは除かれます。
① 外貨公債の発行に関する法律第1条第1項に規定する外貨債
② 特別の法令により設立された法人がこれらの法令の規定により発行する債券のうち、独立行政法人住宅金融支援機構、沖縄振興開発金融公庫及び独立行政法人都市再生機構の発行する債券
  1. 東京湾横断道路株式会社が、法令の規定によって発行する社債
  2. 民間都市開発推進機構が法令の規定によって発行する債券
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