アンクルKの他愛もない話

人形劇・影絵劇の台本 BGMを操作しながらナレーター気分になってお楽しみ下さい。

人心収攬(しゅうらん)の秘訣

誰でも他人に対して、大切な人になりたいと思う人、好意を抱かせたいと思う人は―それはセールスマンを含めているが―その姓名を正確に覚えていて、同時にその人達のことについて何らかの事柄を覚えていなければならない。ここに私は二人の人物に関する古い物語を繰り返してみたい。

セオドール・ルーズヴェルトは、その公生活において最も有能な人間操縦者であった。選挙運動をしていたとき、歓迎者の列の中から一人の人が近づいて来るのを見た。彼は見覚えはあったが、その名前が思い出せなかった。彼は側に立っていた秘書にその人が誰であるかを尋ねた。

『お名前はウォットソンです。あなたはご存じのはずです。彼はウォシントンであなたを訪れたことがあります。ワイオミング出の人で、五人の子供がおります。』

ウォットソンが近づいてきたときに、大統領は彼の両手を握って情をこめて振り、

『お目にかかれて実にうれしい。ウォシントンでお会いしたあの愉快だったことは決して忘れません。奥さんや、五人のお子さんはお元気ですか。』と言った。

故郷のワイオミングで政治的に有力なウォットソンは益々熱心なルーズヴェルト後援者となった。

これと反対のことがある。このルーズヴェルトと同じことが、シャトルのウィリアム・ハウワード・タフトに起こった。

『あなたがご存じのはずの人がこちらに歩いて来ますよ、ミスター・タフト。』と彼の秘書がその名前を言いながらタフトに教えた。その人が近づいて来た時、タフトははっきり言った。

『私はあなたを存じ上げているはずだとのことですが、しまったことに、あなたを少しも想い出すことができないんですよ。』

それからというもの、この人は大のタフト後援者であったのだが、この些細な事件のためにタフトを離れ、タフトに反対するために全力を尽くすようになった。

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