アンクルKの他愛もない話

人形劇・影絵劇の台本 BGMを操作しながらナレーター気分になってお楽しみ下さい。

競争者をけなすな

有名なキャンディ業者のジョン・ハイラーがニューヨークで小さな菓子屋を創めた数年間というものは苦難と失敗の連続であった。しかし、ある全く偶然の出来事が彼を成功させる動機になった。その出来事というのは、ハイラー氏から聞いたところによると、

『下町のブロードウェー通りの私の店のほど近くに、もう一軒、菓子屋がありました。そして商売の大部分はこの競争者が占めていました。私はしくじって、今にも店を畳んでしまおうかとしておりました。』

『ある雪の降った日曜の夕方のことでした。一人の大柄な人が店に入ってきて、私が良い菓子を造っているかどうかを尋ねました。勿論、私は確かに良い菓子を造っていると言いました。』

客は菓子を三ポンド買って私に尋ねました。

『時に、あの人はどんな菓子をこしらえていますかね。丁度この上にある店では?』

私は答えました。『旦那、あの店はなかなか立派な菓子をこしらえております。私も少しは買ってみましたから、よくわかっております。ある時などは、あの店の品をまねようとさえ努力してみたものです。』それからこの見知らぬ客は店を出ていきました。

『翌週、私の店は景気づいて来ました。先日の客がまたやって来ました。他の人たちも入ってきました。店の売り上げはにわかに増してきました。ですが、何でこんな風になったのか訳がわかりませんでした。』

『このお客に最初に会ってからざっと一年間、このお客は毎週、判で押したように私の店に来ました。そこで私は勇気を振るってこのお客に、あなたは私に幸運をもたらして下さいました。』ということを申しました。ここでこの話の結末がつくことになります。

このお客は、もとは私の競争者のお得意だったのです。そのお客が競争者である私の菓子のことを尋ねたら、『あの店の菓子には毒が入ってます。買ってはいけませんよ。』と言ったのです。

『このことが、この有力なお客を怒らせてしまったのです。そしてこのお客は自分の取引ばかりでなく、友人の取引をも一切私の店の方へ振替させてしまったのです。』

 

賢明なセールスマンは、競争相手をけなすことが割の合わないことだとは先刻承知している筈である。が、時にはこんな話を読んでみるのも何かの薬になるであろう。

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