アンクルKの他愛もない話

人形劇・影絵劇の台本 BGMを操作しながらナレーター気分になってお楽しみ下さい。

なだめてやりなさい

どうかすると、お客がこき下ろしたり、粗さがしをしたり、皮肉ったり、また、悪口を言ったりすることがある。こうしたことに出っくわすと、大抵のセールスマンは馬脚をあらわす。彼が失敗するのは意地悪をする当の客を苛立たせるからである。

もっとも優秀なセールスマンはそんなヘマはしない。そういう客にも実行できる一手がある。こんな客には思う存分にさせておくがいい。

このような人を扱う最善の道は、その人に終わりまで思うままにしゃべらせておく。決して反論しないことである。議論しないことである。ただ黙って聞いてやる。もしも、心から苦情の種を持っていると思われたら、その苦情を残らず聞き出して、心から同情してやる。そして、彼が冷静になった時、はじめて静かにもちかけて、販売の話法に導くのである。

かつて私の販売陣にいた白髪の婦人がいたが、こういった面倒な客にぶつかると、何時もこの婦人を煩わすのがお決まりになっていた。すると、彼女は必ず判で押したようにその人から注文を頂いて帰ってくるのであった。

ある時、どうして注文が取れるのかと尋ねてみたことがあった。

『思うに、私の母性愛本能のためでしょう』というのが彼女の返事であった。

『このような人達は、私には大人になった実業家という印象は少しもないのです。小さな子供がむずかっているとしか思われないのです。私はいつも、うちの子のジャックを相手にしている気持ちで取り扱っています―― 聞いてやるだけですよ。黙ってお終いまで。そしてなだめてやるのです。そうすると、その人の方から買ってくれるようになるものです。』

なだめてやりなさい。そうすると買ってくれるものです。 けだし、名言である。

 

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