3.基本的な用語

 樹木の話でよく出てくる基本的な用語がある。これは本を読んでもインターネットでも出てくるので、樹木の話の際は覚えておいたほうがいい。なお、用語の定義は参考文献「原寸図鑑葉っぱでおぼえる樹木」「原寸図鑑葉っぱでおぼえる樹木2」による。

(1)葉っぱ(見分けるのにもっとも重要な要素)

クリックすると拡大○葉とは
葉で樹木を見分ける場合が多いのでまず葉の説明をする。写真はケヤキでケヤキには托葉はないが、これらをまとめて葉という。
・葉身:葉の主要な部位である偏平な部分
・葉柄:茎と葉身をつなぐ棒状の部分
・托葉:歯の付け根にある葉片状の器官(写真はケヤキで托葉はない)
・翼:植物の特定の場所につく薄く平たい突起物
・葉脈:葉身内部にある水分、有機物の通路、葉身の形を保つ役割も持つ。葉脈には、羽状脈、掌状脈、単純脈、平行脈、二又脈、鳥足状脈がある。
 ・中央脈:葉脈の主脈
 ・側脈:主脈から枝分かれする葉脈
 ・細脈:側脈から枝分かれする葉脈
 ・葉縁:葉の縁


○葉序(葉のつきかた)


一本の枝につく複数の葉の秩序ある配列様式で樹木の種類によって決まっている。ひとつの節につく葉の数が1、2もしくは3以上のいずれかにあてはまるかによってそれぞれ葉序は互生、対生、輪生に大別される。ただし、カツラのように同一の樹木でも枝の基部と上部とで対生と互生が同時に見られるものもある。
 ・互生:枝に葉が交互につく
 ・対生:枝に葉が対でつく。対の葉が交互に90度ずつずれてつく十字対生もある
 ・輪生:枝に葉が複数一緒(三輪生、四輪生)につく
 ・束生:葉や枝が、同じ場所から束になって発生する

08.11.01浜松町互生(オトメツバキ) 

08.11.01浜松町対生(トウネズミイモチ) 

08.11.16上福岡輪生(ドウダンツツジ) 

08.11.01浜松町束生(イチョウ)

○単葉と複葉
単葉が枝から一枚づつ葉がつくのに対して、複葉は枝(葉軸)がさらに分かれたように葉がつく。複葉を構成しているひとつの枝のように見える部分が葉であり、末端の1枚の葉のように見える部分を小葉という。複葉の出方によって、三出複葉、奇数羽状複葉、偶数羽状複葉、掌状複葉、鳥足状複葉、2回偶数羽状複葉、3回奇数羽状複葉になる。小葉が対生になっていても、枝から分かれる葉軸が互生ならば、その樹木は互生という。
 ・単葉:枝に葉が一枚ずつつく
 ・複葉:枝がさらに分かれ枝になり、その先に葉がつく

08.10.30ふじみ野3回羽状(三出)複葉(ナンテン)

08.11.02上福岡偶数羽状複葉(メタセコイヤ)

09.05.23森林公園羽状複葉(ネムノキ)

09.07.11森林公園羽状複葉(ウルシ)

○葉形(葉のかたち)


葉の縁は、樹木にさまざまである。また、同じ樹木でも幼葉、成葉で形が異なるものが同じ木に混在するので一概には言えない。
葉形には、円形、針形、狭披針形、披針形、卵形。広卵形、倒披針形、倒卵形、心形、倒針形、腎臓形、菱形、三角状、へら形、矢じり形、矛形がある。葉の大きさは樹木ごとに一応のサイズ(何cm~何cmという幅で)がある。
また、葉のつや、硬さ、しわの有無等も葉の特徴を示す。

線形(メタセコイヤ)

針形(ダイオウショウ)

広倒被針形(ヤマモモ)

楕円形(ウバメガシ)

楕円状卵形(ハクモクレン)

倒卵状長楕円形(タブノキ)

倒被針状長楕円形

円心形(カツラ)

広楕円形、ほぼ円形(ハナズオウ)

楕円形、長楕円形、卵状楕円形(ヤブツバキ)

ゆがんだ円形(シナノキ)

うろこ片状(ニオイヒバ)

○葉縁(葉のふち、鋸歯/欠刻)


葉の縁は、樹木によってギザギザ(鋸歯(きょし)という)があったり、つるりとしてギザギザがなかったりする。また、鋸歯にもケヤキのように緩やかなものと、鋭いものがあるし、さらに二重に鋸歯が出る葉もある。もっとややこしいのは同じ樹木で、老・幼木で鋸歯があったりなかったりする。
プラタナスやカエデのように鋸歯とは別に、葉の切れ込み(欠刻(けっこく)という)を持つ葉もある。欠刻にはその切れ込み具合で、羽状浅裂、羽状中裂、羽状深裂、羽状全裂、掌状裂がある。
 ・全縁:葉の縁が滑らかでギザギザがないもの
 ・鋸歯:葉の縁に突端が葉の先のほうに向いたギザギザ
 ・歯牙:葉の縁のギザギザは葉の先を向いていないもの
 ・重鋸歯:粗い鋸歯の縁にさらに細かい鋸歯があるもの
 ・欠刻:葉の切れ込み

クスノキの葉 

葉の縁には鋸歯はない。明確な鋸歯ではなく、緩やかな波状、円鋸歯の葉もある。

クヌギの葉 

葉の縁に鋸歯がかなり鋭いある。特にクヌギ、栗は鋸歯の先端は針状になる。

ソメイヨシノの葉 

細かい歯状の歯牙もあり、葉の縁は大きな鋸歯とさらに細かい鋸歯が二重にある重鋸歯になる葉もある。

エノキの葉 

エノキは葉の途中から鋸歯が現れる。

モミジバスズカケノキ 

浅く3または5裂して掌状となり、裂片は三角状卵形、縁に不揃いな粗く大きな鋸歯がある。

モミジバフウ 

葉縁が5~7裂し、各裂片は卵状三角形で先が長く尖り、各裂片の縁に細かい鋸歯がある。

○落葉/紅葉


 ・落葉:葉身や葉柄の基部の一定の位置に離層と呼ばれる組織が作られ、葉が枝から離れ落ちること。
 ・紅葉:葉が紅色や黄色に変化する現象で、黄色に変わることを区別して黄葉と呼ぶこともある。紅色は色素の一種であるアントシアニンが葉の細胞内に蓄積されることにより生じる。