市民による市民のための裁判制度に向かって 本文へジャンプ
その他検討課題  問題の所在など,今後の課題の当面の説明等にとどめます
 
取調べの適正確保
取調べの全面録画録音の当否の問題があります。

多くの事件では,全面録画録音をしても問題はないと思います。
 また,全面録画録音は自白の任意性をより一層確保することに資する
 と思います。

他方,全面録画録音によって,真相究明が阻害されるケースがあるこ
  とも事実です。オフレコの当否はともかくとして,これまで政治等の場で
  オフレコが利用されてきたのは,録画録音ないし公にされると本音が
  言い難い場合がある,あるいは,反対に公にされると,真相が語られ
  ず,曖昧な表現になってしまうということがあったのではないでしょうか。
  さらには,公(テレビカメラ・聴衆の前)の場では,聞き手を話題に引き
  込み,説得力を持たせようとするあまり,つい,誇張ないし断定口調に
  なることがあるのではないでしょうか。こうした人間心理の背景も考察
  する必要があると思います。

なお,現在検察庁で行われている裁判員裁判対象事件における一部
  録画録音でも,自白の任意性の有無を把握するには相当の効果があ
  ることも事実です。以前に比べれば,隔世の感がある取り扱いの変革
  と言えます。

究極的には,「真相究明が一部阻害される点を犠牲にしてでも,全面録
  画録音によってえん罪防止を徹底するのか」,それとも,「えん罪防止に
  努めながらも,一部録画録音(その方法を工夫しながら)方式によって(
  取調べ機能を害することなく),真相究明を徹底するのか」という課題に
  つき,今後,市民がどちらの選択をするのかという問題だと思います。

公判前整理手続の公開
公開した方が,市民の裁判員裁判(CJC)に対する信頼が深まるという
  のであれば,プライバシーの問題や証拠隠滅のおそれがない限り,公
  開して公判前整理手続を行う方向で検討することも可能と思います。

実際は,密室における馴れ合いで争点等が決められるなどということは
  決してなく,厳正に行われています。

もっとも,公判前整理手続において,争点がどのような経緯でどのよう
 に設定されたのか,それ以外の事実について問題ないとされた理由など
 を記した分かりやすい1枚ペーパーを作成し,審理の段階で,裁判員(C
 J)に配布するような配慮は必要になると思います。あくまで,裁判員(CJ)
 に公判前整理手続の状況を的確に把握してもらい,充実した公判審理に
 参加してもらうためです。
 
辞退の理由の拡充
当初は,裁判員(CJ)の人数確保を一次的に考え,拒否事由等を制限
  的に考えることも理解できなくはありません。 しかし,裁判員(CJ)への就
  任を市民の義務として強調し,各市民の置かれた個人的状況を十分尊
  重しないと,やがて制度が頓挫するでしょう。 

それよりも,一人一人の市民の立場をできるだけ尊重し,各人にできる
  範囲で確実に参加してもらうこと(土曜一日法廷の実施等)で,裁判員(C
  J)の職を終えた際の達成感・充実感・やりがいなどが自然と多くの市民
  に伝わっていくことが,やがては制度に対する市民の信頼も得て,裁判
  員(CJ)に就任することの市民的広がりが期待できるのではないかと思
  います。
 
選択制
被告人・弁護人に,裁判員裁判(CJC)の審理と,裁判官だけの審理と
  のどちらを選択するかの選択権を付与するか否かの問題です。

現在は,選択権を付与しておりません。韓国では,選択制を導入し
 ています。
 
精神鑑定と責任能力の問題
法曹関係者でも,容易には理解し難い鑑定内容を裁判員(CJ)にい
かに理解してもらえるかという問題と,その鑑定結果と刑法上の責
任能力との結び付けが裁判員(CJ)に理解してもらえるかという問
題があります。
 
守秘義務の問題
裁判員(CJ)が,任務終了後も,将来にわたり,守秘義務を負ってい
ることの当否が問題とされています。
 
部分判決
裁判員(CJ)の負担軽減のために設けられた区分事件及び部分判決で
 すが,部分判決に関与していない裁判員(CJ)において,すべての事件
 の量刑評決をしなければならないとすることに市民の目からみて違和感
 がないかが問題となります。

全部の事件を合わせると死刑判決も想定される場合,最後の裁判体を
 構成する裁判員は,自分で調べていない事件の部分判決(同判決で指
 摘された事実や情状)を引き継いで全部の事件の量刑判断をすることに
 なりますが,部分判決の量刑判断が,最終的な全部の量刑判断に大き
 く影響してくるような場合などには,特に問題となり得ます(部分判決で
 指摘された情状以外にあらためて部分判決に係る犯罪の情状を評議す
 ることが可能だとしても,そこには時間的な限界等があるので)。 

控訴審の在り方
最高裁司法研修所の研究報告にあるように,「明らかに不合理など特別
の事情がない限り,事実・量刑に関する一審判断を原則尊重することが
相当」とする運用が徹底されるとすれば,従来の控訴審とは質的に異なる
面が現れることも考えられます。


 






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