鬼平舞台探訪記8
2005/5
私の好きな鬼平犯科帳シリーズの一話に第9巻「本門寺暮雪」があります。この話は、盗賊の捕縛話ではなく、平蔵の剣友井関録之助を狙う<凄い奴>(暗殺者)に平蔵・録之助が襲われるストーリーで、題名名のまま池上本門寺(長栄山本門寺)が舞台です。
江戸名所図会には、「当寺、日蓮大士終焉の古跡にて、弘安年間(1278-88)の開創たり。」とあり、丘全体を境内が占めています。地名の由来でもある池上右衛門大夫宗仲に寄進された約7万坪近い敷地であった由。
1枚目は総門で、幸いに東京大空襲にも被災せず、創建時の姿を留めています。「本門寺暮雪」には「高さ二丈五尺の欅造りの古風な総門の〔本門寺〕としたためた扁額は、かの本阿弥光悦の筆になるものだそうな。」と記されています。
2枚目は、総門の遠景。歌川広重の版画「江戸近郊八景」の「池上晩鐘」の構図を真似て撮ったものです。「本門寺暮雪」では「平蔵と録之助は、本門寺・総門傍の、わらぶき屋根の〔弥惣〕という茶店へ入り、先ず、足を休めた。」と書かれていますが、江戸名所図会の挿絵でも池上晩鐘でも、総門から小橋までは塔中が並んでいて、茶店は描かれていません。茶店は「南無妙法蓮華経」の大石碑より手前に並んでいますので、誤りだと思います。
3枚目が本当の舞台となる石段で、加藤清正が寄進した「此経難持坂(ヒキョウナンジザカ)」と呼ばれる96段の急峻なものです。この石段をあと5,6段で登りきるところで、<凄い奴>が石段上に現れて切りかかり、平蔵が窮地に陥るが、茶店で餌を与えた柴犬が<凄い奴>の足に噛みついて九死に一生を得ます。後でこの犬は平蔵が貰い受けて愛犬「クマ」となります。(うちの愛犬は敵ではなく、私の足を噛みかねませんが。)
4枚目は本堂。これは東京大空襲で消失したため、戦後再建されたものです。
最後に、食べ物のお話。「本門寺暮雪」には「二人は、熱い茶で名物の葛餅を食べた。」と書かれているので、真似をして、門前に最も近い茶店で食しましたが、これが全くのあて外れ。葛餅の舌触りに程遠いものでした。後日に亀戸天神の「船橋屋」のものを食べてみましたが、やはりこっちのほうがはるかに美味しいです。もしも食べようとされるなら、東急池上駅に近い方の店で試して見て下さい。
茨高ネット・クラス会
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