スミレ

スミレの語源 

スミレの 墨入れ語源説に疑問

山部赤人とは 




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スミレ スミレ(菫)の名前は 今も使われている大工さんの 墨入れ(墨壷) が語源である
と述べられる方がかなりおられます。  ”すみいれ” が ”すみれ” に訛っていったことに由来する と説明 されています。
しかし・・・

ケイコ スミレの名は万葉集にも登場します。
万葉集は7世紀後半から8世紀前半に成立しています。
現在も使われている大工さんの墨入れが、 遥かな昔の7−8世紀の、 山部赤人 (下に注釈あり) の頃と 全く同じ形で存在していたというのでしょうか?

この野草の名を大工道具の墨入れから取り すみれ になまっていったとするなら この野草が すみいれ と呼ばれていた時期が かなり長くあった筈です。  そして少しは古代の文献に登場したはずです。
スミレが すみいれ と記述された古文は果たして存在するのでしょうか?

大工道具の墨入れは奈良時代に大陸から伝来したものとされますが、 当初は国内に幾つも存在しない特殊なもので、 万葉集の頃には野草に名前を取られるほど一般化していなかった筈です。 
また古代のものの形状は直線的で角ばっており 花に似た丸みをおびた形に変化したのは江戸時代以降とされています。 
墨入れ語源説を唱える方々がよく参考に出される写真は 現代の墨入れで 古代のものではありません。

スミレ さらに山部赤人などの使用した万葉仮名ではスミレは
  ”須美禮”  となっています。
墨入れでもなく 墨斗でもないのです。  つまり万葉集での表記と 墨入れor墨斗 との関連性は全くありません。
この点からも すみいれ がなまって すみれ なったという説明には無理があります。

さらに墨入れという大工道具が 奈良時代には江戸期以降と同じく 墨入れ という名前であったかどうかも疑問があります。   墨斗とも記され ます現在は すみいれ と読まれていても 古代には すみいれ とは読まれていなかったようです。 

墨入れ語源説は高名な植物学者が 遊び心 で唱えてみた説を、 一部の人が真に受けて定説と信じこんだところからきたのではないでしょうか。
また 墨入れを語源とする説は江戸時代に唱えた人もあるようです。
スミレ 江戸期以後に丸みをおびてきた墨入れを目にして 型が似ているから 名前が似ているから と想像をふくらませた推測に過ぎず なんら明確な 根拠があるわけではないようです。   遊び心でそう唱えてみたに過ぎない と思われます。

この野草は現在 墨入れ と呼ばれている大工道具が伝来する奈良時代以前から すみれ と呼ばれていたとするのが妥当で はないでしょうか。

スミレ スミレの語源とされる説は他にもかなり存在します。
  つみれ のような形で食用になったから という説。
  摘まれる という言葉からきた という説。
  染みれ と染料になったから という説。
  すもうとり からきたという説
など様々あるようですが決定的なものはありません。   

スミレは語源がはっきりしなくても 大昔から すみれ と呼ばれてきたということだけでよいのかもしれませんね。

(註)山部赤人について

スミレ 上記 すみれの歌の万葉仮名による原歌 : 

春野爾   須美禮採爾等 来師吾曾 野乎奈都可之美 一夜宿二来  (巻八 一四二四)

春の野に すみれつみにと 来し吾そ 野をなつかしみ  一夜ねにける 

分かりやすく また作者の心の優しさを感じさせる素晴らしい歌ですね。
奈良時代の人で下級役人だったとされ 来歴 生年没年など詳しく分かっていないそうです。
しかし聖武天皇に仕えた優秀な宮廷歌人でした。
後年になるほど評価を高め 万葉集では柿本人麻呂と並ぶ歌仙として尊敬を集めるようになりました。
諸国を旅することが多く 自然の美しさを詠んだ 叙景歌 には定評があります。  万葉集には 長歌短歌およそ 50首が載せられています。 

百人一首には 「田子の浦ゆ・・・」の歌が少し改造されて採用されています。   しかし改造される前の原歌の方が実際の情景を正しく表している  と昔から論議されていることは皆様もよくご存知だと思います。

田子の浦に うち出てみれば白妙の  富士の高嶺に雪は降りつつ
  ・・・ 百人一首 
田子の浦ゆ うち出てみれば真白にそ 富士の高嶺に雪は降りける
 ・・・ 万葉集の原歌

<註>田子の浦ゆ の ”ゆ” は古語で  ・・・を通って という意味です。
雪はふりつつ の時には雪雲にさえぎられて富士山が見えるはずはありませんね。
田子の浦から出てみると富士山は雪に覆われてた という感動的な情景は本当に眺めた人にしか作歌できませんね。

  <富士山>  田子の浦ゆ
田子の浦"


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春の野にすみれつみにと来し吾ぞ
野をなつかしみ一夜ねにける 
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