花粉症に一発で効く注射??

花粉症シーズンになると繁盛する医療機関があります。
なかには花粉症に一発で効く注射を売りにしているところもある様で…

そんなすばらしい治療法があるのか?
俺もやってもらおうっと!さあ、やってくれ!

<本当にそれでいいのか?持続型ステロイドの話!>

「花粉症を注射一発押さえる治療方があるそうだが、やってくれないか?」という依頼が時々あります。
おそらくほとんどの良識ある医師(アレルギー科、耳鼻咽喉科)たちが注射治療を行わない理由を検証しましょう。
もちろん、みみ・はな・のど としクリニックでもやってません。

トピックス!
なんと、ステロイドの注射の悪評が広がってきたせいで、最近は強力なステロイドの内服バージョンが出現しました。「内服ならばれないだろう」ってことでしょうか?


花粉症の治療

内服 抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、抗ロイコトリエン剤など
局所外用剤

点眼薬、点鼻薬

注射 @減感作療法 Aヒスタグロビン Bステロイド C星状神経節ブロックなど
手術 レーザー手術、鼻甲介切除術など
民間療法 健康食品、健康飲料、ツボ刺激、気功、乾布摩擦、魔術、祈祷・・・
気合 「ほ、本当か?がんばれえ!」

さて、問題はステロイドの筋肉注射(最近は内服バージョンも)です。

疑問: そんなすばらしい治療があれば、花粉症の患者全員が飛びつきそうだけど・・・なんで皆やらないのかな?

日本アレルギー学会も日本耳鼻咽喉科学会もこんな治療法を推奨しても認めてもいません。

「なぜ?一発でシーズン通して楽だったらいいじゃん!」

「はは〜ん、分かった。薬屋さんが困るからだ。通院する外来患者さんが減って病院の収益が落ちるからだろう!
テメエら金儲けしようとして病院に来させて薬漬けにするつもりだな!」

管理人的TOSHI思った・・・「言われてみると、確かにその治療が本当に安全で有効だったら、全国の耳鼻咽喉科は収入面で打撃を受ける よなあ。」・・・ しかし、そんなことは問題ではありません。


「たった注射一発だけで、花粉症が治まっちゃって、今年は楽だったなあ。症状が出なかったよ!」という話があります。

こんな素敵な治療法はないですね。面倒くさくないし、効果は「ピカいち」かも・・・。

「ちょっとちょっと!じゃあ、やらない理由は何よ!
もしかして・・・副作用?」

一般的にステロイドの副作用としては、糖尿病、消化器潰瘍、骨粗鬆症、中枢性神経障害、無菌性骨壊死、易感染性、高血圧、眼障害などが有名です。

具体的には・・・
〈重大なもの〉
1)アナフィラキシー様症状(呼吸困難、全身潮紅、血管浮腫、蕁麻疹等)→血圧の維持、体液の補充管理、気道確保等の処置 2)感染症(感染症の誘発又は徴候の隠蔽、悪化等)→抗菌薬等の処置 3)続発性副腎皮質機能不全→直ちに再投与又は増量等処置 4)骨粗鬆症、骨頭無菌性壊死→中止等処置 5)胃腸穿孔、消化管出血、消化性潰瘍→中止等処置 6)ミオパチー(連用:ミオパチー)→筋力低下等観察→異常あれば中止等処置 7)血栓症→中止等処置 8)頭蓋内圧亢進、痙攣→中止等処置 9)精神変調、うつ状態→中止等処置 10)糖尿病→中止等処置 11)緑内障、後嚢白内障(連用:眼圧亢進、緑内障、後嚢内白内障)→定期的に検査→異常あれば中止等処置 12)心破裂→(急性心筋梗塞を起こした患者で報告)→中止し処置 13)うっ血性心不全→心電図の検査を実施し、異常あれば中止等処置 14)食道炎→中止等処置 15)カポジ肉腫→中止等処置 16)腱断裂→中止等処置 17)失明、視力障害(頭皮、鼻内又は咽・喉頭部への使用により失明、視力障害の報告)→中止等処置 〈重大(類薬)〉気管支喘息(他の副腎皮質ホルモン薬の投与で喘息発作悪化の報告)→処置 
〈その他にも〉
1)内分泌(月経異常、クッシング様症状等) 2)消化器(膵炎、下痢、悪心・嘔吐、胃痛、胸やけ、腹部膨満感、口渇、食欲不振、食欲亢進等) 3)循環器(血圧上昇等) 4)精神神経(多幸症、不眠、頭痛、めまい等) 5)筋・骨格(筋力低下、筋肉痛、関節痛等) 6)投与部位〔関節腔内:(関節の不安定化)→中止(疼痛・腫脹・圧痛の増悪)〕(筋肉内・皮内:組織の萎縮による陥没) 7)脂質・蛋白質代謝(満月様顔貌、野牛肩、窒素負平衡等) 8)肝臓(GOT・GPT・Al-Pの上昇、脂肪肝等) 9)体液・電解質(浮腫、低カリウム性アルカローシス、カリウム低下、ナトリウム貯留等) 10)眼(中心性漿液性網脈絡膜症等による網膜障害、眼球突出等) 11)血液(白血球増多等) 12)皮膚(ざ瘡、多毛、脱毛、色素沈着、色素脱失、皮下溢血、紫斑、線条、発汗異常、創傷治癒障害、皮膚菲弱化・脆弱化、脂肪織炎等) 13)過敏症(発疹、紅斑、そう痒) 14)その他(発熱、疲労感、ステロイド腎症、体重増加、精子数及び運動性の増減、鼻内投与による鼻炎、無菌膿瘍、仮性脳腫瘍) 

注射一発でシーズンを通して効果が続くのは、非常に作用の強い持続型ステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)(ケナコルトA、デポメドロールなど)です。注射一発のみで体内に貯留し続け、身体にステロイドを長期間(2週間〜数ヶ月)補充し続けるので、花粉症の症状は、抑制されます。花粉症が「治る」わけではありません。来年も同じことをしないと効果無しです。

効果が長期間続くということは・・・
ステロイドによる副作用も季節を通して持続しそうではないですか?

注射しちゃったら最後、途中で副作用が出てきて、「薬を止めたい」と思っても・・・お手上げです。

持続性ステロイドの効果が切れてくるまで、ひたすら待つしかありません。

ステロイド軟膏や、点鼻・点眼薬などは比較的短時間の効果で、含有量も少量です。しかし。これらですらステロイドの副作用が報告されています。ただし、軟膏や点鼻・点眼薬は使用を止めれば作用や副作用も早めに止まります。

ホルモンのバランスは複雑な関係を保って成り立っていますが、これが長期間の強力な作用を持つホルモン剤の投与により狂ってしまい、正常に回復せずに困った状態になってしまうことも考えられます。これはかなり「危険」です。

持続性ステロイドの筋注は、効果も副作用もコントロール不可能です。

ステロイドには、使用方法や投与目的に応じて様々なものがあります。全身に作用するものから、局所に作用するもの。効果の持続時間も短いものから長いもの。持続性ステロイドも関節内注射など整形外科領域などでは一般的な治療法です。

持続性のステロイドは使ってはいけないものではなく、適切に目的にあった使い方をすれば良薬です。やむを得ない状況に限り、花粉症に対して持続性ステロイドの筋注を行っている施設もいます。副作用も含めたステロイド注射の情報を事細かに説明して十分理解してから受けてください。ちゃんとしたインフォームドコンセントにのっとって施術されることが望ましいですね。

副作用のことをよく理解の上で、持続型ステロイドの注射を選択したら



もし副作用が出ても



「副作用が出た!何とかしてくれ!」などと

ふざけた
ことをいう人もいないでしょう。
あとは野となれ山となれ〜〜〜

実際に副作用が出た・・・患者さんがうちに受診されたことがあります。
治まることを一緒に祈って差し上げました。

結局、治療の選択権があるのと同様に結果責任も患者にあるわけです。
探せばやってくれる病院があると思います、御自分でお探しください。

結論・・・Dr.TOSHI の考え方

  1. ステロイドホルモンには使用すると、様々な副作用が起きる可能性があります。
    しかし、ステロイドを怖がる必要はありません。目的と使用量と使用期間を間違わず、副作用に気をつけていれば、ステロイドはすばらしい薬です。

  2. 花粉症に対して行われている「1発注射治療」は持続型ステロイドです。効果も長いが副作用が発現したら・・・対応は「副作用が消えるのを待つこと」です。

  3. 花粉症は飲み薬や点鼻・点眼薬で充分コントロール可能な疾患で、減感作療法やレーザー治療や予防行為(マスク・眼鏡など)も含めると、わざわざ危険系のある持続型ステロイド注射を打つ必要はない。

  4. もし、注射を受けたければ、ホルモンに関する危険性を認識・理解・納得して受けるようにして下さい。耳鼻咽喉科ではほとんど行っていません。

  5. もちろん、保険もきかない治療です。当然、自費で受けることになります。聞いた話では「法外な値段なところ」もある・・・らしい。

  6. Dr.TOSHI は花粉症に対する持続型ステロイド注射治療はやりません。