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こ れから 学会発表する若者のために
ポスターと口頭のプレゼン技術


酒井 聡樹著 共立出版
本体 2700円(税込み 2970 円)
B5 判 206 頁 3色刷 A4折込ポスター付き
(ISBN 978-4-320-00610-2)

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 2008 年 11 月 30 日 初版第 1 刷発行
2010 年 5 月 25 日 初版第 2 刷発行
2011 年 2 月 25 日 初版第 4 刷発行
2011 年 9 月 25 日 初版第 6 刷発行
2012 年 11 月 30 日 初版第 8 刷発行
2013 年 9 月 20 日 初版第 11 刷発行
2015 年 9 月 20 日 初版第 13 刷発行
2016 年 4 月 27 日 初版 14 刷発行
2018 年 7 月 15 日 第2版 1 刷発行
2023 年 5 月 10 日 第2版 2 刷発行

 累計 2,7423 部出来
初版 2,0363 部
第2版 7060 部

はじめに
 本書は、これから学会発表する若者のための本である。学会発表をしたことがない若者や、経験はあるものの、学会発表に未だ自信を持てない若者の ための入門書だ。理系文系は問わない。どんな分野にも通じるように書いた。
 あなたは今、若手教員・ポスドク・研究生・大学院生・卒業研究生として研究に勤しんでいるはずである。研究成果を出したら、それを学会で発表す ることになるだろう。その目的は、あなたの発表を聴衆に理解してもらうことである。そして、研究の価値を認めてもらうことである。しかし、わかり やすい発表の仕方を知らずに臨むと悲惨なことになる。せっかくの発表も、聴衆に理解してもらえずに終わってしまうであろう。だから必ず、わかりや すい発表の仕方を身につけないといけない。
 わかりやすい発表をするためには、4つのことを心がける必要がある。

1. 発表内容を練ること。
2. わかりやすいポスター・スライドを作ること。
3. 発表本番で、ポスター・スライドを明瞭な論理で説明すること。
4. 質問にわかりやすく答えること。

以下で、それぞれについて説明しよう。

1. 発表内容を練ること
発表内容を練ることがまずもって大切である。序論・研究方法・結果・考察・結論の各部分で何を伝えるべきなのか。これを知らずして、良い発表をす ることなどできないのだ。これは、プレゼン技術以前の --- しかし、研究の本質により深く関わる --- 問題である。伝える内容がしっかりしていてこそ、それを伝える技術(プレゼン技術)を活かすことができるのだ。

2. わかりやすいポスター・スライドを作ること
プレゼンを成功させるためのかなりの部分が、わかりやすいポスター・スライドを作ることにかかっている。説明なしに見ただけで理解できるポス ター・スライドを作れば、聴衆を失う可能性はかなり減るのだ。そのためにあなたは、わかりやすいポスター・スライドとはどういうものなのかを理解 し、それを具現する技術を身につける必要がある。

3. 発表本番で、ポスター・スライドを明瞭な論理で説明すること
むろん、発表本番での説明も大切である。あなたは、理解しようという姿勢を聴衆から引き出さなくてはいけない。それがうまくいくかどうかは、あな たの説明の仕方にかかっている。

4. 質問にわかりやすく答えること
質疑応答もうまくやらないといけない。質問者の意図を的確に理解し、それに簡潔に答えること。これができれば、聴衆もあなたも有意義な時間を過ご すことができる。

 本書には、これら4つをすべて書いた。つまり、これから学会発表する若者にとって必要なことをすべて書いた。
 本書は、学会への臨み方を書いた本でもある。学会とはどういうものなのか、そこに行って何をすべきなのかも書いているのだ。学会は、誰にとって も非常に有益な場である。そこでいかに濃密な時間を過ごすことができるか。それが、今後の研究の大きな糧となる。しかし、漫然と参加しても得るも のは少ない。学会では積極的に行動しないといけないのだ。そのための指針も、本書から読み取って欲しい。

本書の構成
 本書は3部構成である。
 第 1 部では、学会発表の前に知っておきたいことを説明する。学会とは何なのか、学会発表とはどういうものなのか、学会に行って何をするべきなのか。第 1 部は、学会への臨み方の説明である。
 第 2 部では、発表内容の練り方を説明する。ここでの説明は、論文の書き方にも通じるものである。
 第 3 部では、学会発表のためのプレゼン技術を説明する。わかりやすいポスター・スライドの作り方。発表本番での、ポスター・スライドの説明の仕方。質疑応答の 仕方。これらを徹底的に説明している。

本書が対象とする読者
 本書が対象とする読者は、「これから学会発表する若者」である。具体的には、次のような人たちを想定している。

・研究の世界に入ったばかりの大学院生・学部生。自分が学会発表する日を夢見ながら、これからの研究生活に打ち込んで欲しい。
・学会発表の経験が浅い大学院生・学部生。本書の内容が、学会発表をする上で役立つことを切に願っている。
・博士論文・修士論文・卒業論文の発表や、研究室セミナー等を行う学生。本書の内容は、これらの発表にもそのまま通じるものである。
・学生の発表指導をする立場になったばかりの若手教員。教える側の理論武装の1つとして本書を役立てて欲しい。
・高校での課題研究を指導する先生方。高校生へのプレゼン指導のために活用して欲しい。
・わかりやすく聴衆に伝えることが求められるプレゼンをする方々。研究の世界以外でも、わかりやすいプレゼンの必要性は高いであろう。本書は、こ うした方々にも役立つはずである。

目次
第1部 学会発表の前に知っておきたいこと
第1章 学会とは何か
1.1 組織としての学会
1.2 大会としての学会

第2章 学会に行く目的
2.1 自分の研究成果を聴いてもらう
2.2 最新の研究成果を知る
2.3 自分を売り込む
2.4 知人を作る
2.5 その分野に慣れる

第3章 学会発表とは何か
3.1 学会発表と論文発表の違い
3.2 ポスター発表と口頭発表の違い
 3.2.1 ポスター発表
 3.2.2 口頭発表
 3.2.3 どちらを選ぶべきか

第4章 学会発表するかどうかの判断
4.1 学会発表するかどうかの判断
 4.1.1 学会参加経験がある程度はある場合
 4.1.2 学会参加経験がほとんどない場合
4.2 同じ内容の発表

第5章 聴衆としての心がまえ
5.1 発表会場でのエチケット
5.2 質問をしよう
5.3 質疑応答の時間における質問の仕方
 5.3.1 質疑応答の時間は皆のもの
 5.3.2 全員に向けて言葉を発する
 5.3.3 時間を守る

第6章 学会が終わった後にすべきこと
6.1 自分の発表へのコメントをまとめる
6.2 プレゼンの反省点をまとめる
6.3 新しい着想を整理する
6.4 メールのやりとりをする
6.5 新しくできた知人をリストにまとめる

第2部 発表内容の練り方

第1章 ポスター・スライドの構成要素

第2章 取り組む問題と結論を決める
2.1 どうして,取り組む問題を決め直す必要があるのか?
2.2 得られた結果から結論を導き出す
2.3 結論に対応する問題を決める

第3章 序論で説明すべきこと
3.1 どうしてやるのかの説得が鍵
3.2 序論で書くべき5つの骨子
3.3 説得力に欠ける序論
 3.3.1 「何を前にして」がない
 3.3.2 取り組む問題を述べていない
 3.3.3 取り組む問題が飛躍している
 3.3.4 その問題に取り組む理由を述べていない
 3.3.5 わかっていないからやるのか?
 3.3.6 問題解決のための着眼を述べていない
 3.3.7 問題解決のために何をやるのかを述べていない
3.4 説得力のある序論にするコツ
 3.4.1 骨子の練り方
 3.4.2 その問題に取り組む理由を説得するために

第4章 演題の付け方
4.1 演題の役割
4.2 良い演題とは
4.3 演題に入れる情報
 4.3.1 取り組む問題
 4.3.2 問題解決のための着眼点
 4.3.3 研究対象
 4.3.4 結論は入れるべきではない
4.4 良い演題の例
4.5 悪い演題の例
 4.5.1 調べた対象を演題にしただけ
 4.5.2 取り組む問題ではなく,問題解決のためにやったことを書いている
 4.5.3 問題解決のための着眼点がない
 4.5.4 情報の並列
 4.5.5 情報を詰め込みすぎ
4.6 わかりやすくする工夫

第5章 研究方法の説明
5.1 研究方法を説明する目的
5.2 説明すべきこと

第6章 研究結果・考察・結論の示し方
6.1 得られた結果の提示
6.2 考察:得られた結果の統合的解釈
6.3 考察:先行研究の検討
6.4 結論:取り組んだ問題への答え
 6.4.1 問題への答えになっている結論を示す
 6.4.2 できるだけ簡潔に
 6.4.3 結論とまとめは違う
6.5 結論を受けて:その問題に取り組んだ理由への応え

第7章 講演要旨の書き方
7.1 講演要旨に書くべきこと
7.2 論文の要旨との違い

第3部 学会発表のプレゼン技術

第1章 何のために学会発表をするのか
1.1 伝えたいと思っているのはあなた
1.2 学会発表は,聴衆にわかってもらうために行う

第2章 わかりやすい発表をするために心がけること
2.1 わかりやすい発表とは
 2.1.1 聴衆が,情報整理をしやすい
 2.1.2 その主張を導く論理を理解できる
2.2 わかりやすい発表をするために心がけること
 2.2.1 わかりやすくしようという意識を持つ
 2.2.2 聴衆を想定する

第3章 すっきりとしていてわかりやすい話にするコツ
3.1 必要かつ不可欠な情報だけを示す
 3.1.1 主張することを絞る
 3.1.2 それらを主張するために必要な情報だけを示す
 3.1.3 聴衆の疑問に配慮する
 3.1.4 同じ説明を繰り返さない
3.2 聴衆の理解の流れに沿った順番で情報を与える
 3.2.1 研究方法の説明を終えてから,結果の説明をする
 3.2.2 結果の説明を終えてから結論を述べる
 3.2.3 論理的なつながりを意識する
 3.2.4 重要なことから示す
3.3 直感的な説明を心がける

第4章 ポスター・スライドに共通するプレゼン技術
4.1 何についての情報なのかを明示する
4.2 全体像を示してから細部を説明する
4.3 文章での説明を避け,絵的な説明にする
 4.3.1 絵的な説明にするためのコツ
4.4 情報保持の負担を減らす
 4.4.1 言葉を覚えさせない
 4.4.2 同じ言葉を使い続ける
4.5 情報を読み取りやすくする
 4.5.1 見出し・重要事項を強調文字にする
 4.5.2 見て欲しい部分を示す
 4.5.3 色を使って情報を対応づける
4.6 見やすくする
 4.6.1 大きな文字で
 4.6.2 ゴシック体で
 4.6.3 背景とのコントラストを明確に
4.7 色覚多様性に配慮する
4.8 説明なしでわかるようにする

第5章 図表の提示の仕方
5.1 見える大きさの図表にする
5.2 論文の図表をそのまま使わない
5.3 できるだけ,表ではなく図で示す
 5.3.1 数値の比較が目的の場合は必ず図にする
 5.3.2 表で示してよい情報
5.4 図のタイトルと軸の説明を区別し,両方とも書く
5.5 その説明を読めばわかる軸にする
5.6 記号のすぐそばに,その説明を書く
5.7 図表のすぐそばに,その解釈を書く

第6章 ポスターの作り方
6.1 ポスターを作る前に
 6.1.1 ポスターの大きさと視野の関係
 6.1.2 聴衆の基本的な姿勢
 6.1.3 わかりやすいポスターとは
6.2 すっきりとしていて,拾い読みをしやすいポスターにするコツ
 6.2.1 5〜10分で説明できる内容に絞る
 6.2.2 まとめ(結論を含め)を上部に書く
 6.2.3 主張を先に示し,それに続けてその根拠・理由を示す
 6.2.4 2段組を基本にする
 6.2.5 情報の領域を明確にする
 6.2.6 読む順番がわかるようにする
 6.2.7 番号等を使って情報間の対応をつける
 6.2.8 情報を省略しない
6.3 ポスターの各項目で書くべきこと
 6.3.1 演題
 6.3.2 発表者名等
 6.3.3 序論
 6.3.4 研究対象と方法
 6.3.5 結果
 6.3.6 考察
 6.3.7 まとめ
 6.3.8 付録
 6.3.9 要旨は不要

第7章 ポスター発表の仕方
7.1 説明練習をする
 7.1.1 他者の意見を仰ぐため
 7.1.2 説明の仕方を工夫するため
 7.1.3 ポスターの作り方の問題点を見つけるため
 7.1.4 淀みなく説明できるようになるため
 7.1.5 説明時間を確認するため
7.2 勝手に説明を始めない
7.3 10秒ほど見てくれたら声をかけてみる
7.4 全員に向かって言葉を発する
7.5 聴衆の反応を見ながら説明する
7.6 特定の聴衆と延々とやりとりをしない
7.7 指示棒を使って説明する
7.8 図表の読み取り方を説明してから,データの意味することを述べる
7.9 縮刷版を用意する

第8章 スライドの作り方
8.1 スライドの適正な枚数
8.2 わかりやすいスライドにするコツ
 8.2.1 どういう情報を伝えるのかを前もって知らせる
 8.2.2 1枚のスライドで1つのことだけを言う
 8.2.3 各スライドに必ず見出しをつけ,必要に応じて言いたいことも明記する
 8.2.4 大切なことはスライドの上部に書く
 8.2.5 中央配置を基本とする
 8.2.6 スライドの作り方に一貫性を持たせる
8.3 各スライドで書くべきこと
 8.3.1 演題・発表者名・所属
 8.3.2 序論
 8.3.3 研究対象と方法
 8.3.4 結果
 8.3.5 考察
 8.3.6 まとめ(結論・根拠)

第9章 口頭発表の仕方
9.1 発表練習をする
9.2 発表時間を守る
9.3 聴衆を見て話す
9.4 ステージの中央寄り前部に立って話す
9.5 原稿を読み上げない
9.6 会場の一番後ろまで届く声で話す
9.7 適度に間を取りながら話す
9.8 過度に抑揚をつけた話し方をしない
9.9 スライドにないことを話さない
9.10 ポインタ・指示棒をぴたっと指す
9.11 図表の読み取り方を説明してから,データの意味することを述べる
9.12 スライドの印刷資料を用意する
9.13 発表用の原稿について

第10章 質疑応答の仕方
10.1 質問を歓迎しよう
 10.1.1 興味を抱いてくれたということである
 10.1.2 今後の研究に活かすことができる
10.2 質問への対応の仕方
 10.2.1 あらかじめ,出そうな質問に対する答えを考えておく
 10.2.2 質問の意図を捉える
 10.2.3 自分を落ち着かせる
 10.2.4 まず的確に答え,次に,必要に応じて補足説明をする
 10.2.5 質問者を見ながら答える
 10.2.6 他の聴衆にも届く声で答える
 10.2.7 質問者の声が小さいときは,他の聴衆のために質問を復唱する
 10.2.8 聴衆の知識に配慮する
 10.2.9 沈黙しない