身元調査と本人通知制度

「身元調査」は差別です。

 住民基本台帳法に基づいて戸籍や住民票などについて、職務上必要な場合において請求を行う権限が認められている職業は8種あります。具体的には、弁護士・司法書士・弁理士・税理士・社会保険労務士・行政書士・土地家屋調査士・海事代理士です。 この職務上請求書の請求理由を「裁判」「登記」のためと偽って職権を悪用して、依頼者の身元調査に加担して結婚差別が引き起こされました。<2022年度部落解放東日本研究集会報告より>
現在の部落差別と明治時代につくられた壬申戸籍の関係  現在の部落差別は明治政府による身分制度としての族籍によって生み出されました。明治時代につくられた壬申戸籍は四民平等の原則を表明しながら、江戸時代の身分制を継承し、戸籍の族称欄(法的には族籍)に皇族・華族、士族、卒族、平民と記載しました。被差別部落の人たちに対し、この族称欄の「平民」としたが戸籍の末尾に薄紙を挟み、肩書きや続柄に被差別身分の呼称を記しました。この族称欄(族籍)の廃止は、昭和の時代1947年でした。<2022年度部落解放東日本研究集会報告集より>

部落地名総鑑事件


部落差別は、封建的「家」制度=「家」意識や「家系」をたどる意識によって引き起こされる。その意識の具体的な行為が「身元調査」です。被差別部落の人たちに対し、共同体からの排除の意識は、結婚差別や企業の採用差別がありました。縁故採用が衰退し、採用試験に転換するなかで企業の就職時に使われた「部落地名総監」事件があります。1975年、全国の被差別部落の所在地を克明に記載した図書「人事極秘・部落地名総鑑」が発行され、同様の図書は8種類にも及び200社を超える企業や大学、病院がこの差別図書を購入していました。部落差別は、日本社会の古い慣習からうまれた「社会悪」と言えます。

住民票等の交付に伴う本人通知制度

住民票の写し、戸籍謄本・抄本などを本人の代理人や第三者に交付したとき、事前に登録した人に通知し、交付した事実を知らせる制度です。不正請求を抑制する効果を目的に作られた制度です。

本人通知制度申請用紙 県内自治体の参考例  川越市  書類は各自治体HPで

 

探偵業者に依頼し、他人の身元を調査する実態があります。最近では栃木県で行政書士が3000件以上の職務請求書を使用し、「不正」に戸籍取得をする事件が起きています。「探偵業法」には、次のような規定で、「差別的取り扱いとなることを知ったときは、調査をおこなってはならない」とされています。

*「探偵業の業務の適正化に関する法」

第7条「探偵業務は」依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、当該依頼者から、当該探偵業務に係る調査結果を犯罪行為、違法な差別的な取り扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面の交付を受けなければならない」第9条当該探偵業務に係る調査の結果が犯罪行為、違法な差別的取り扱いその他の違法な行為のために用いられると知ったときは当該探偵業務を行ってはならないこと。

2023年8月「県条例を具体化する意見交換会」で県警生活安全部保安課は県内業者の半数以上に対し、この条例の趣旨の徹底をはかるため「立ち入り検査」(実態把握)を行ったと報告されました。詳しくは機関誌で紹介しています。