独断的JAZZ批評 684.

BRAD MEHLDAU
BRAD MEHLDAUが現代最高のジャズ・ピアニストであることを証明したアルバム
例外的に星6つを献上したいと思ったほど
"LIVE IN MARCIAC"
BRAD MEHLDAU(p)
2006年8月 ライヴ録音 (NONESUCH 520275-2)

このアルバムの録音は2006年。今から5年も前になる。MEHLDAUにとってはこの年、とりわけ後半は素晴らしく充実した半年であったに違いない。フランスのMARCIACでジャズ・フェスティバルがあったのが8月。1ヵ月後の9月にはJAFF BALLARDを加えた新生トリオとして東京オペラ・シティのタケミツ・メモリアルでライヴ・コンサートを行っている。このコンサート(JAZZ批評 365.)に僕も立ち会ったが、5回のアンコールに応えた魂を震わすライヴであった。更に、その1ヵ月後の10月には"LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD"(JAZZ批評 479.)のライヴ録音を敢行している。
まさに脂の乗った時期であったことに間違いはないだろう。
このアルバムは2CD+1DVDという構成になっていて、しかも、僕がゲットした値段は2000円強だ。もう、これ以上のお買い得価格はないだろうと思わせる納得価格。CD2枚分の映像が1枚のDVDにほとんど網羅されている。目を瞑って流れ出る音楽を聴いていると、一体、どんな風に弾いているのだろうかと疑問を持つが、映像を見ると至極簡単に弾いている様に見えてしまうから不思議だ。
このアルバムに余計な解説は不要だろう。もうこれは聴いてもらうしか方法はない。

<CD ONE>
@"STORM" 
A"IT'S ALL RIGHT WITH ME" 
B"SECRET LOVE" 
C"UNREQUITED" 
躍動し、躍動し、更に躍動する。"THE ART OF SONGS VOL.3"(JAZZ批評 2.)収録曲。
D"RESIGNATION" 
イントロのこの躍動感が凄い!"ELEGIAC CYCLE"(JAZZ批評 278.)の収録曲。大好きな曲のひとつ。
E"TRAILER PARK GHOST" 
この曲も"ELEGIAC CYCLE"収録曲。躍動し続けるピアノが素晴らしい。
F"GOODBYE STORYTELLER (FOR FRED MAROW)" 
さらにこの曲も"ELEGIAC CYCLE"収録曲。いい曲だ。
G"EXIT MUSIC (FOR A FILM)" "THE ART OF SONGS VOL.3"収録曲。

<CD TWO>
@"THINGS BEHIND THE SUN" 
この曲は"SOLO PIANO LIVE IN TOKYO"(JAZZ批評 219.)でも演奏されている。
A"LITHIUM" 
B"LILAC WINE" 
C"MARTHA MY DEAR" 
"DAY IS DONE"(JAZZ批評 301.)でもソロで演奏されている。
D"MY FAVORITE THINGS" 
テーマが導き出されるまでのイントロが素晴らしい。そしてテーマ〜アドリブ〜至福の時へと誘ってくれる。
E"DAT DERE"
 憎いねえ!BOBBY TIMMONSの曲を入れたあたり。残念なことに、このトラックのみDVDには収録されていない。

ソロ・ピアノで1枚分のCDを聴くのは重いと持っている人、ましてや、2枚組みなんて超重過ぎると思っている人も多いと思うが、このアルバムは無我の境地で聴くことが出来るだろう。重いと思う方にはDVDをお勧めしたい。映像があればコンサートを見る感覚で楽しめるかもしれない。しかもこのDVDはほとんどの楽曲を網羅しているのでCD同様に十二分に楽しめるはずだ。
僕は今までに「墓場の中まで持って行きたいアルバム」として3枚のアルバムをピックアップしている。いずれもピアノ・ソロ・アルバムだ。
1.BRAD MEHLDAU "ELEGIAC CYCLE"(JAZZ批評 278.
2.BILL EVANS "ALONE"(JAZZ批評 298.
3.YARON HERMAN"VARIATIONS"(JAZZ批評 670.
以上3枚だが、このアルバムは1.のBRAD MEHLDAU "ELEGIAC CYCLE"に取って代わるでしょう。いわば、 "ELEGIAC CYCLE"を凌駕したアルバム。BRAD MEHLDAUが現代最高のジャズ・ピアニストであることを証明したアルバム。例外的に、星6つを献上したいと思ったほどのアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2011.03.04)

試聴サイト : http://www.nonesuch.com/albums/live-in-marciac



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