BRAD MEHLDAU
丁度、雨に咲く紫陽花のように優しい潤いを与えてくれる1枚
"ELEGIAC CYCLE"
BRAD MEHLDAU(p)
1999年2月 スタジオ録音 (WARNER BROS. 9362-47357-2) 

このアルバムの登場は2度目である。このHPを開設して間もない頃に一度取り上げている。JAZZ批評 2. ということは開設後2番目のレビューということ。だから、2001年の5月だと思う。もう、4年以上前のことだ。
この"ELEGIAC CYCLE"と"SONGS"は同時掲載した数少ないレビューのうちのひとつ。とりあえずHPを立ち上げて、後から、試行錯誤して直していけば良いと思っていたので、この時は2枚同時にレビューをアップしてしまった。このアルバムは既に「manaの厳選"PIANO TRIO & α"」の6番目にピックアップされているが、そろそろ100枚目を迎えるにあたり、過去の「厳選」も少しずつ聴き直しを始めているところだ。で、4年ぶりに手を加えてみようということになった。
今回はこのアルバムの中でも選りすぐりの3曲に絞ってレビューしたいと思っている。その3曲とは
ACFの3曲。このアルバムは全曲、MEHLDAUの作曲によるものだが、その中でもお気に入りの3曲に絞ってレビューしたいと思う。

@"BARD" 吟遊詩人のことらしい。
A"RESIGNATION" 「あきらめ」とか「断念」という意味らしい。アルペジオが大きなうねりとなって寄せては引き、そのうねりに乗って美しいメロディ・ラインが徐々に高揚感を増していく。一体、どうやって二本の手で弾いているのかという疑問はこの際、どうでも良い。流れ出る音楽にジックリと耳を傾けよう。
B"MEMORY'S TRICKS" 

C"ELEGY FOR WILLIAM BURROUGHS AND ALLEN GINSBERG" 哀しみにくれる友人に贈った曲だろうか?優しさが沁み透る。右手で織り成す珠玉のフレーズと左手の和音の組み合わせが何とも言えない。
D"LAMENT FOR LINUS" 
E"TRAILER PARK GHOST" 

F"GOODBYE STORYTELLER" 最も心に沁みるワルツ。この美しさは何なんだ!抑制された美しさと絶妙な「間」がこの曲の命。
G"RUCKBLICK" 
H"THE BARD RETURNS" @と連動している。

BRAD MEHLDAUは動と静、疎と密、美と醜、強と弱、世の中のあらゆる相反する事象を対照的に、しかも、巧みに表現できる稀有なピアニストであると思う。

こんなこと言うと、気の早い話で笑われるかもしれないけど、僕がこの世を去るときに掛けたいジャズがこのアルバム。葬式でもお別れ会でも何でもいいけど、そういう時に流れていたら良いなと思うのがこのアルバムだ。勿論、ほかにも色々あるけどMEHLDAUについて言えば、先ずはこのアルバムが思い浮かぶ。まっ、この辺は理屈でなくて、そうしたいという気持ちだけだから深い理由はない。このアルバムがそういう雰囲気には最適と思っているだけ。尤も、長生きしている間にもっと相応しいアルバムが出て来たら掛けたい曲が変わってくる可能性もあるけど・・・。とりあえず、今はこれをリザーブしておこう。
既掲載のレビューの中にもう1枚、MEHLDAUのソロ・ピアノ(JAZZ批評 219.)があるが、こちらはピアノから発する巨大なエネルギーで葬式の参列者を薙ぎ倒してしまうだろうから、その場には相応しくないと思う。

録音から6年経っても少しも色褪せない瑞々しさを持ったアルバムだ。丁度、雨に咲く紫陽花のように優しい潤いを与えてくれる1枚。「厳選」アルバムであることに変わりはない。   (2005.07.03)



.

独断的JAZZ批評 278.