独断的JAZZ批評 683.

MARC BRENKEN
どこかから引っ張り出してきたような主張のない写真でいかにも手抜きだと思わせるアルバム・ジャケットだ
そういうことが象徴的に表れてしまっているアルバム
"IT COULD HAPPEN TO YOU"
MARC BRENKEN(p), ALEX MORSEY(b), MARCUS RIECK(ds)
2007年7月 スタジオ録音 (MARC BRENKEN MUSIC : LC 01522)


MARC BRENKENは初めて聴く。このピアニストもドイツのプレイヤーだ。1973年生まれというから今年38歳になる。ピアノは8歳から始めたらしい。
前々回掲載のKLAUS IGNATZEKの"SONGS WE DIG VOLUME TWO"(JAZZ批評 681.)の中でも書いたが、ドイツのジャズは真面目でオーソドックス。古くて新しい。個々のアイデンティティが確立されていて、あまり奇を衒ったりしない。そして躍動感に溢れているから相性が良い。
このトリオもそういう感じなのだろうか?タイトル曲の"IT COULD HAPPEN TO YOU"以外は全てBRENKENのオリジナル。

@"DURCH DEN REGEN FAHREN" テーマに続くピアノのソロが躍動している。その後にベースのアルコがソロを執る。このときに人の声らしき濁声が聞こえるがベースのMORSEYが唸っているのだろうか?どうも意識的に入れられた音声のように感じるが、本当に必要だったかは疑問符の付くところだ。
A"IT COULD HAPPEN TO YOU" 
一工夫アレンジしたテーマだけど奇を衒った感じはしない。が、更に凄みみたいのが加味されると良いと思う。。
B"J & M" 
この曲は一癖ある演奏を目指したようだ。グルーヴィな8ビートが基調。古いといえば古い感じは否めない。
C"END OF A DAY" 
バラード演奏だけど、BRENKENのピアノはカラッと爽やかな印象はある。だけど、そこまで。プラス・アルファがほしいところだ。
D"RAUS AUSM BETT" 
ここではドラムスのRIECKがフィーチャーされている。
E"LAUF DER ZEIT" 
美しくて可憐な印象の曲だけど、小さくまとまってしまった感じ。
F"SHANDA'S SPRING SONG" 
どこかで聞いたことのあるようなメロディ。スウェーデンのLARS JANSSONが好みそうなメロディだ。そういう意味で新鮮味がない。
G"ERBSE IM HOLZHAUFEN" 
この曲も、いかにもヨーロピアン・テイストの曲。軽やかに躍動していく。途中にスキャット紛いの歌が聞こえるが、これもベースのMORSEYが歌っているのだろうか?本当はアンサンブルで勝負してほしいところだが、こういう路線はちょっと悲しい。
H"RAINY DAY"
 タイトルのごとく、雨音のように聞こえるピアノの音色が澄んでいるが、演奏としては少々退屈だ。

全体に各トラックの演奏が短め。4分から6分程度だ。トータルの演奏時間も50分に余る。印象としては、全編を通して落ち着いた感じ。奇を衒うわけでもなし、かといって、傍若無人に暴れるわけでもない。至極真っ当で、刺激が少ない。どの演奏も起伏に富んでいるというほどでもない。だから、もうひとつ食い足りない印象が残ってしまう。
どこかから引っ張り出してきたような主張のない写真でいかにも手抜きだと思わせるアルバム・ジャケットだ。そういうことが象徴的に表れてしまっているアルバム。他のドイツのジャズ・アルバムにみられる、どこか尖がっていて刺激に満ちたものが希薄だ。   (2011.02.26)

試聴サイト :  http://www.marcbrenken.com/indexenglish.htm



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