独断的JAZZ批評 680.

CHARLIE HADEN & JOHN TAYLOR
クールで温度感の低い演奏だ
気分も聴くほどに落ち込んでしまいそうだ
"NIGHTFALL"
JOHN TAYLOR(p), CHARLIE HADEN(b)
2003年 スタジオ録音 (NAIM : NAIMCD077)

僕はデュオというフォーマットが好きだ。このデュオは、内省的なピアニスト・JOHN TAYLORとデュオの名手・CHARLIE HADENとの組み合わせだ。
CHARLIE HADENは多くの傑作デュオ・アルバムを残している。1996年録音のPAT METHENYとのデュオ"BEYOND THE MISSOURI SKY"(JAZZ批評 6.)や同じ年に録音されたKENNY BARRONとのデュオ"NIGHT AND  THE CITY"(JAZZ批評 16.)がある。最近では2007年に録音されたアルバムで2010年ののベスト・アルバムに選んだKEITH JARRETTとのデュオ"JASMINE"(JAZZ批評 627.)がある。いずれ劣らぬデュオの名盤と言えるだろう。
一方、JOHN TAYLORのアルバムは今までにトリオ盤、2枚(JAZZ批評 316. & 535.)を紹介している。いずれも内省的ではあるが、上質感をも漂わせていた。

@"CHAIRMAN MAO" HADENのオリジナル。CHAIRMAN MAOとは毛沢東の愛称らしい。何故か哀しみを含んだ曲だ。そこにHADENの主張するものがあるのだろう。TAYLORはピアノの弦を直接叩いたり引っ掻いたりしている。
A"NIGHTFALL" 
これもHEDENのオリジナル。意味は「たそがれ」とか「夕方」 ジャケットの写真が頷ける。日が落ちていく切なさが伝わってくる。
B"MY LOVE AND I" 
ここまでどれも似たような曲想。あくまでも内省的で静かな曲だ。
C"AU CONTRAIRE" 
このトラックも同様。多少、抽象的表現が入ってくるが、流石に飽きる。
D"WINDFALL" 
この曲はTAYLORの曲。正直に言って、何も面白くない。
E"TOUCH HER SOFT LIPS" 
F"SONG FOR THE WHALES" 
かつて紹介したVIT SVECの"KEPORKAK"(JAZZ批評 245.)でも「鯨」と名のついた曲で、ベースのアルコによる鳴き声をやっている。鯨の声を模して、だからどうした?と問いたいところだが、演奏としては至極詰まらない。
G"BITTERSWEET" 
先ず、テーマがいいね。アドリブっていうのはテーマの発展系だからテーマがよくなければアドリブも面白くないというのが僕の持論だ。
H"SILENCE" 
まさに「サイレンス」 抑揚のない静かさだ。これが8分続くが、こらえ性のない僕には少々きついトラックだ。

やはりという言うべきか、JOHN TAYLORとCHARLIE HADENの組み合わせは予測の範囲にあった。あくまでもクールで温度感の低い演奏だ。なおかつ、ほとんど躍動することがないので、約1時間を聴き続けるのは辛いものがある。気分も聴くほどに落ち込んでしまいそうだ。
CHARLIE HADENにとっては、KEITH JARRETTとの心温まる"JASMINE"と比べるとクールで捉えどころのない印象で、正直、雲泥の差だと言わざるを得ない。
JOHN TAYLORにとっても、トリオの"WHIRLPOOL"(JAZZ批評 535.)の方が上質感があってお勧めと言えそうだ。
残念ながら、僕の期待には大きく外れたアルバムであった。同じ聴くなら、KENNY BARRONの"NIGHT AND CITY"(JAZZ批評 16.)をお勧めしたい。お酒が美味くなること請け合いだ。   (2011.02.09)

試聴サイト :  http://www.youtube.com/watch?v=qEmn6hNd6Ys