独断的JAZZ批評 679.

MAKIO ISHIDA
石田幹雄、日本人には持ち合わせることの少ない「黒さ」を持ったピアニストだ
"TURKISH MAMBO"
石田 幹雄(p), MATTIAS SVENSSON(b), 本田 珠也(ds)
2007年10月 スタジオ録音 (FIVE STARS RECORDS : FSY-507)

石田幹雄のこのアルバムは発売当初、随分と話題になったと記憶しているが、その時は、縁がなくて買いそびれてしまった。正月に中古の買い取りに出したCD買取価格を原資として購入した。
ジャケットを見ながら改めてすごいメンバーだと思った。
本田珠也は前々掲のアルバムの杉本智和の盟友とも言えるだろう。二人ともケイ赤城トリオのレギュラーメンバーでもある。MATTIAS SVENSSONは昔、JAN LUNDGREN(JAZZ批評 242.565.)とトリオを組んでいたが、最近ではBILL MAYSと組んだ"STUFFY TURKEY"(JAZZ批評 637.)や自らのリーダー・アルバム"HEAD UP HIGH"(JAZZ批評 559.)を同じメンバーで出している。

@"TURKISH MAMBO (take 1)" 白人ピアニストLENNIE TRISTANOの書いた曲。クールだけど黒くてグルーヴィ。凶暴ともいえるSVENSSONのベース・ワークが象徴的。
A"SO LONG ERIC" 
SVENSSONのベース・ソロが長めに展開する。凄いといえば凄いのだが、僕はこういうソロはあまり好きではない。C. MINGUSの手による個性的な曲。こういう曲はピアニストに灰汁がないと難しいだろう。石田のピアノはピタリと嵌っている。
B"REQUIEM" 
これもL. TORISTANOの曲。TORISTANOは10歳にして視力を失ったという。それが原因か分からぬが、独特な音世界を持っているように感じる。ここではSVENSSONのベースが実に良い味を出している。
C"SALT PEANUTS" 
今度はGILLESPIE。明るくてユーモア溢れる曲を高速4ビートで。磐石なSVENSSONのウォーキングを背景に石田が踊っている。本田の長めのソロを経てテーマに戻る。
D"PARIGIAN THROUGH FAIR" 
ジャズの巨人のオリジナルが続いて、今度はBUD POWELL。これも高速4ビートを刻むが、安定したSVENSSONのウォーキングがあればこそ。
E"I DIDN'T KNOW WHAT TIME IT WAS" 
RICHARD RODGERSの曲をバラードで。ただ甘いだけでなくて石田の個性がキラリと光る。本田のドラミングが力強くうねっている。この演奏は面白い。
F"MILESTONES" 
MILES DAVISの曲。ベース・ソロの時の石田のバッキングがいいね。3者が一体となって昂揚感を増していく。
G"FOR CARL" 
僕の記憶の中では、この曲はPHINEAS NEWBORN JR.のピアノ・トリオが深く刻まれている。饒舌多弁のテクニシャン故、損していた面もあったのだが、この曲だけは深く記憶に残っている。往年のベーシスト、LEROY VINNEGARの手によるこの曲はとても良い曲で、一度聴くと記憶の中に刷り込まれてしまう。ここでは、石田の軽快なワルツ演奏を堪能いただきたい。
H"I GOT RHYTHMN" 
G. GERSHWINのお馴染みの曲。
I"WALTZ" 
このアルバム、唯一の石田のオリジナル。可憐な曲想のワルツから次第に高揚感を増してきて、最後は3者のバトルが弾けて終わる。
J"TURKISH MAMBO (take 2)" 
アルバム・タイトルに据えるだけに、@と同様一番のお勧めトラックとなっている。緊迫感に溢れ、ある種の凄みを醸し出す石田のピアノが凄い。
K"AMAZING GRACE (piano solo)"
 最後を締めるピアノ・ソロ。しとっりした演奏から小気味良く跳ねる演奏にシフトしていく。ドラムスで参加している本田珠也の今は亡き父親、本田竹広(JAZZ批評 389.)を彷彿とさせる演奏がいいね。

多分、リラックスしては聴けないだろう。ある程度の緊張感を持って臨むべし。正面から対峙してほしいアルバムだ。3者の個性がぶつかり合い、緊迫感と黒いグルーヴ感を生み出している。こういうジャズこそ大音量で聴きたいものだ。
石田幹雄、日本人には持ち合わせることの少ない「黒さ」を持ったピアニストだ。   (2011.02.04)

試聴サイト : http://www.fivestars-records.com/turkish%20mambo.htm