独断的JAZZ批評 535.

JOHN TAYLOR
内省的な印象は強いが、演奏に上質感がある
深くて重い、ぶれのない演奏だ
"WHIRLPOOL"
JOHN TAYLOR(p), PALLE DANIELSSON(b), MARTIN FRANCE(ds)
2005年10月 スタジオ録音 (CAM JAZZ : CAMJ 7802-2)

このアルバムは松山のジャズ友が2008年のベスト・アルバムの1枚として紹介してくれたアルバムだ。実は、僕自身も買うか迷った1枚だ。
かつて、JOHN TAYLORのアルバムとしては2004年録音の"ANGEL OF THE PRESENCE"(JAZZ批評 316.)を紹介している。このアルバムはとても評価の難しいアルバムで、5年後の自分自身の評価も予測が付かないということで買取に出さないで済む星4つを与えている。そんな背景があり、録音年月も1年しか離れていないということで少し躊躇していたが、ジャズ友の勧めがあったので購入してみた。
メンバーは前回と同じDANIELSSONとFRANCEがサポートしている。

@"CONSOLATION" 
トレイに載せて最初に思うのは「音がいいなあ!」 ピアノの音色もベースの音色も暖かみがあって芯のある音色だ。徐々に3者のテンションが増して来ると、また、ベースのソロに戻りテーマへと移行する。内なる炎とでも言ったらいいのだろうか?静かに熱い。
A"WHIRLPOOL" 
ドラムスのソロで幕を開け、そこに、抽象的なピアノが絡む。そして、テーマに入るが、このテーマがなかなか良い。
B"FOR ADA" 
今度はベースのソロで始まる。ピチカートのアタック感とアコースティックで暖かみのある音色が素晴らしい。リズムを刻むというよりはフリー・テンポ。しかし、3人のコミュニケーションが素晴らしい。粒立ちのくっきりしたピアノの音色も印象的。
C"NICOLETTE" 
KENNY WHEELERの曲。美しいテーマ。
D"THE WOODCOCKS" 
長いピアノのソロが続いた後にベースとドラムスが絡んでくると一転して賑やかなリズムを刻みだす。
E"I LOVE YOU PORGY" 
G. GERSHWINの書いた名曲をしっとりとしたバラードで。内省的な美しさであるが、これが実に瑞々しい。このしっとり感が堪らない。この上質感が堪らない。ピアノに続くDANIELSSONのベースが良く歌っている。
F"EVERYBODY'S SONG BUT MY OWN" KENNY WHEELERの書いた曲で、@、Cに続いてこれが3曲目。ミディアム・ファーストでアグレッシブな演奏を展開する。
G"IN THE BLEAK MIDWINTER" 
スローであるが、インタープレイが深い。特にTAYLORとDANIELSSONの会話には聴き所が満載だ。こういう演奏が最もこのグループの「らしさ」を表現しているのかもしれない。

ベースのPALLE DANIELSSONは1946年のスウェーデン、ストックホルムの生まれ。この人のベースを聴いていて、思い出したベーシストがいる。"TRIO '02"(JAZZ批評 126.)や鯨の尻尾で有名になった"KEPORKAK"(JAZZ批評 245.)のVIT SVECだ。SVECはチェコのプレイヤーだが、クラッシクの薫陶を受けて正確な音程を身上としているし、良く歌うので印象が強い。両者の共通点だ。
このアルバム、内省的な印象は強いが、演奏に上質感がある。深くて重い、ぶれのない演奏だ。そして、アコースティックな原音を見事に引き出した高音質にも二重丸を与えたい。
旨い酒でも飲みながら聴いたら、より一層旨くなること間違いないと思いつつ「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した

前述の"ANGEL OF THE PRESENCE"を改めて引っ張り出して聴いてみた。以前の評価不明の印象と大分ニュアンスが違ってきた。「ひょっとすると・・・」と思っていた評価がぐつぐつと煮えて形を現して来たような感じだ。ちょっと、抽象的色彩が強いが面白いかも。もう少し聴き込んでみようと思う。

蛇足になるが、CAM JAZZのCDケースとライナーノーツには上質感を漂わせる装丁が施されている。それと、下記のサイトでは全曲をフルに試聴することが出来るので参考まで。CAM JAZZ、なかなかやるねえ!   (2009.02.09)

試聴サイト : 
http://www.camoriginalsoundtracks.com/site/index.php?site=&path=cd&idcd=725&label=CAMJ&alpha=A



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