TIM ALLHOFF
人生経験を積んで演奏に「色気」とか「艶っぽさ」が更に出てくると良いと思うな
"PRELUDE"
TIM ALLHOFF(p), ANDREAS KURZ(b), BASTIAN JUTTE(ds)
2008年11月 スタジオ録音 (DOUBLE MOON : DMCHR71081)


TIM ALLHOFFは1980年生まれのドイツ人だ。未だ、30歳という若さだ。
1970年生まれのBRAD MEHLDAUとは10歳違いだが、目指している方向は近いかもしれない。事実、ALLHOFFのプレイの中にはMEHLDAUの影響を受けているなあと思わせるフレージングが散見される。
ドイツのピアニストには甘さだけに流されないカチッとしたアイデンティティを主張するプレイヤーが多い。「天が二物どころか三物までも与えてしまったのではないか」と思わせる才媛・OLIVIA TRUMMER(JAZZ批評 498. & 517.)やSEBASTIAN STEFFAN(JAZZ批評 485.)もそうしたプレイヤーで、躍動感と昂揚感を兼ね備えている。ドイツ人ではないがドイツを拠点として活動しているプレイヤーも多い。"SKAGERRAK"(JAZZ批評 473.)が絶賛されたMARTIN TINGVALLや今やヨーロッパを代表するベーシストに成長したPETTER ELDH(JAZZ批評 609.)もそういう一人だ。

@"WINZIGWINZIGKLEIN" 
軽妙なリズムに乗って3者が歌い踊る。ピアノ・プレイのあちこちにBRAD MEHLDAUのアルバムから抜き出したようなフレーズがでてくるし、サウンドそのものもMEHLDAU TRIOに似ている。
A"LONG AGO AND FAR AWAY"
 スタンダード・ナンバーを軽快なアップ・テンポで。速いパッセージも難なく弾き倒す指使いは相当なものだ。
B"DON'T SPEAK" 
ベースがテーマを執る。曲の良さと8ビートの軽快なリズムでALLHOFFの個性を発揮したトラックとなったが、後半部はダレル。
C"IKKAKUJU" 
一角獣?
D"HEIMWEH" 
このあたりまで進んでくると似たような曲想、似たようなアドリブで少しずつ飽きてくる。少し観念的、無機質な匂いがしてくる。
E"SERENADE FOR A WEEPING WILLOW" 
セレナーデとは名ばかりで、後半部はかなり激しいタッチのプレイとなる。
F"OHNE TITEL" 
最初の8小節が"SOMEDAY MY PRICE WILL COME"にそっくりだが、9小節目以降はガラリと変わる。何か、梯子を外された気分。
G"WALTZ FOR KATE AUSTEN" 
H"SONG FOR MRS. JONETHAN BRISBY" 
I"DON'T EXPLAIN"
 この曲というと、僕はすぐにWYNTON KELLYの"PIANO"(JAZZ批評 11.)を思い浮かべてうしまう。最近ではKENNY BARRONの"MINOR BLUES"(JAZZ批評 576.)でボサノバ調の軽快なプレイがあった。ここではALLHOFFのリリカルなピアノ・ソロで始まるが、しっとりとした落ち着きがあって良いと思う。

何が足りないのだろう?
テクニックもあるし3人の力量も十分という気がするのに・・・。
A、B、I以外の7曲はALLHOFFの書いた曲だ。テーマもさることながらアドリブになると皆、似たような印象になる。少々、観念的で無機質な印象を持ったりする。だから、繰り返し聴いてみたいと思わせるパワーがない。総じて、上記3曲のスタンダード・ナンバーの演奏が良い。
未だ、30歳になったばかりだからしようがないのかもしれないが、人生経験を積んで演奏に「色気」とか「艶っぽさ」が更に出てくると良いと思うな。今後の成長を期待しよう。   (2010.03.30)

試聴サイト : http://www.myspace.com/timallhoff



独断的JAZZ批評 616.